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記事2022年10月3日 2591号 (1面) 
第2回高等教育の修学支援新制度在り方検討会議
機関要件の厳格化を審議
文科省が改革案例示、まだ意見を出し合う段階

 文部科学省の高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議(座長=福原紀彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)の第2回会議が9月26日、同省内で開かれた。議題は「学生を保護する視点からの機関要件の厳格化について」と「学生の学びの充実に向けた機関要件の活用について」。 


 機関要件とは、高等教育の修学支援新制度により授業料・入学金の免除・減額と給付型奨学金の支給を受ける学生(住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯)が進学できる大学等に求められる要件。大学等を卒業した後に社会で自立して活躍できるための教育要件と、学生が安心して学修を続けられる経営要件が課されている。


 しかし機関要件を満たしていても廃校となる大学等も出ており、政府の教育未来創造会議が経営改善に向けた指導の強化と著しく経営困難な学校法人への撤退を含む早期の経営判断を促す指導の徹底策として、機関要件の厳格化の検討、検討結果を踏まえた制度改正等を提言したことから、同検討会議が具体策を審議しているもの。


 第2回会議では事務局(文科省)が国公私立の大学4団体、公私立の短期大学2団体、国公私立の高等専門学校3団体、全国専修学校各種学校総連合会の計10団体に事前に意見を聴取した結果が報告され、「定員充足率が収容定員の8割以上」を単独で必須の要件とすることについて、8団体が「地方から高等教育を受ける機会が失われかねない」、「将来の人材育成を目指したチャレンジが難しくなる」などの意見を示し、肯定的意見の団体は1団体だった。


 また定員充足率以外でどのような厳格化(要件)が考えられるか、の質問に5団体が「機関要件によって学生本人の責によらず、学びたい学校で学びたいことを学ぶことが制限されている」などの意見を述べ、3団体から「認証評価結果が『適』であることを要件にしてはどうか」などの提案が出された。


 学生の学びの充実に向けた機関要件の活用に関しては、「入試科目の見直し、入学後の文理横断型の教育、複線的・多面的な学び、全学的なデータサイエンス教育等の機関要件化についてはどう考えるか」、「学生の学びの充実につながる機関要件の活用に関し、どのような要件、どのような活用方法が考えられるか」との質問に、8団体が否定的見解、1団体が肯定的見解を述べ、3団体から「取り組みを実施している場合にインセンティブを与えるのが良い」などの提案があった。


 また、全国知事会の文教・スポーツ常任委員会を構成する21道府県を対象とした大学等団体と同様の意向調査結果が報告され、機関要件の厳格化で生徒等の進路選択の幅を狭めるようなことがないよう配慮を求める意見が多く聞かれた。


 その後、同省から機関要件の厳格化に関して、「現行の経営要件を改正し、『直近3年度全ての収容定員充足率が8割未満』を独立した要件とする」、「『収容定員充足率5割以上』を機関要件に追加」、「卒業生の進路のうち進学・就職の割合が5割を下回る場合、教育の実施体制に係る要件を追加」など5種類の改革案が利点、留意点とともに提示された。


 また機関要件の審査での反映に関しては、事務局から「『入試科目の見直し、入学後の文理横断型の教育、複線的・多面的な学び、全学的なデータサイエンス教育』のいずれかについて取り組んでいることを機関要件に追加」など3種類の改革案が示された。


 こうした議論の足掛かりのとなる改革提案に委員からは、「定員充足率の単位や就職の範囲は」といった質問から、地域の人材を育成する観点からの要件の見直しが必要といった意見、大学と専門学校は同様に扱えないといった意見も出された。


 また修学支援新制度の機関要件の厳格化が、デジタル・グリーン等の成長分野への再編・統合・拡充を促進する仕組みの構築の具体策の一つに位置付けられていることについて、委員から「成長分野とは何か。芸術分野は成長分野に入らないのか。文系の大学はどうなるのか」といった質問も出され、福原座長は、「基礎研究、基礎科学、芸術がおろそかになってはいけない」と答えた。第2回では機関要件の厳格化等について意見を出し合った段階で、第4回会議での関係者からの意見聴取前には議論の整理がたたき台として提示される見通し。


 次回の第3回会議(10月18日)では多子世帯や理工系・農学系の学部で学ぶ学生等への支援について関係団体の意見も参考に検討することにしている。

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