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記事2022年10月3日 2591号 (1面) 
第1回デジタル人材育成推進協議会開催
文科省・経産省
デジタル推進人材不足踏まえて
大学、高専の人材育成機能強化

 文部科学省と経済産業省は9月29日、文科省内で第1回デジタル人材育成推進協議会を開催した。この協議会は、わが国の国際競争力の強化にはデジタル人材の育成が不可欠だとして、(1)産学官連携による大学・高等専門学校のデジタル人材育成機能の強化、(2)地域ごとのデジタル人材ニーズの把握・検討・産業育成の促進を検討するもの。


 政府が今年6月に閣議決定した「骨太の方針」では2026年度末までにデジタル推進人材を230万人育成する取り組みを進めるとしており、文科省は支援策を講じた上で、大学、高等専門学校においてデジタル推進人材の拡充と質的向上を図り、2024年度までに毎年17万人(応用基礎レベル)を育成する方針だ。


 また同省の令和5年度概算要求に「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設」事業(予算要求額100億円、支援内容は学部等の組織再編に要する初期投資や当面の運営経費等)を新規事業として盛り込んだことなどを説明した。


 経産省は、DXを推進する上で備えるべき専門的デジタル知識・能力の水準をスキルセットとして可視化、情報処理技術者試験、デジタル人材育成プラットフォーム、セキュリティー人材の育成といった実践的な人材育成プログラムを大学や高専においても活用して実践的なデジタル人材の育成を促していく方針。


 また、九州・沖縄地区や東北地区、中国地区での半導体人材の育成・確保、関西エリアでの蓄電池人材育成など地域ごとの産官学連携体制づくりなども進めていく方針だ。


 例えばJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)半導体部会では、今後、10年間で4万人(同部会役員会8社の合計)の半導体人材が必要と表明している。


 同協議会には全国知事会(愛知県知事)、公益社団法人経済同友会、一般社団法人新経済連盟、独立行政法人情報処理推進機構、国公私立の大学3団体、独立行政法人国立高等専門学校機構から11人の委員が、政府関係者として文科省高等教育局長と経産省商務情報政策局長が参加している。私大関係では、日本私立大学団体連合会の田中愛治会長(早稲田大学総長)が委員を務めている。


 初会合では永岡桂子文科相、西村康稔経産相がそろって冒頭あいさつするなど、同協議会への期待の大きさをうかがわせる初会合となった。


 こうした両省からの説明に委員からは、「(学生を指導する)先生の育成も大事」、「高校の段階から(進学先で)文系理系に分けて全く違う教育を受けている」、「ITパスポートなどで非IT人材にITリテラシーを付けようという動きが広がっている。高校までやってきたITリテラシーを大学でどう加えるか。これから大学に入ってくる人にITリテラシーがあればずいぶん違う」、「社内にデジタル人材が必要だが、中小企業では確保は難しい。都市部に人材が流れてしまう」、「東京23区内には規制があり理工系の定員を増やせない」などの意見が聞かれた。


 このほか、国立大学協会副会長の西尾章治郎・大阪大学総長は、「情報分野の中核的人材の育成が十分なされていないことに非常に強い危機感を持っている。国立大学の場合、学部、学科名に情報を含むものを抽出すると、入学者は5410人。しかし情報分野の中核をなす情報人材としての教育を受ける入学者は全体の半分にも満たないと推計(2千人規模)」と報告、国公私立大学全体ではその割合は21%だと語った。また公立大学協会からは滋賀県立大学の地域ひと・モノ・未来情報研究センターや、横浜市立大学の文理融合・実課題解決型データサイエンティスト育成、秋田県立大学の秋田版スマート農業による地域の活性化と人材育成などの取り組みが紹介された。さらに滋賀県彦根市のジュニアITスクールの取り組みなども紹介された。


 最後に文科省の池田貴城・高等教育局長と、経産省の野原諭・商務情報政策局長があいさつし、そのうち池田局長は、デジタル人材の育成に関しては、教員の数や質、デジタル人材を巡って都市部と地域との関係などを考える必要性を指摘した。次回の日程は未定だが、年内に開かれる予定。


第1回デジタル人材育成推進協議会

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