こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2022年10月13日号二ュース >> VIEW

記事2022年10月13日 2592号 (1面) 
第10回新しい資本主義実現会議を開催
総合経済対策の重点事項決定
人への投資策を1兆円に拡大

 岸田文雄総理は10月4日、総理官邸で「第10回新しい資本主義実現会議」を開催した。岸田総理が議長を務めている。


 この日は、今年6月7日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施に向けて、早期に実施する必要のある重点事項について審議し、決定した。これらは10月中に取りまとめる総合経済対策に反映される。


 総合経済対策の重点事項は、(1)人への投資と分配(労働移動円滑化、リスキリング、構造的な賃金引き上げ)、(2)スタートアップの起業加速およびオープンイノベーションの推進、(3)科学技術・イノベーションへの投資、(4)資産所得の倍増、(5)経済社会の多極集中化、(6)GXおよびDXへの投資、(7)社会的課題を解決する経済社会システムの構築、(8)経済安全保障・サプライチェーン強靱化・個別分野の取り組みの8項目からなっている。


 このうち(1)の人への投資では、個人のリスキリングに対する公的支援について、人への投資策を5年間で1兆円の施策パッケージに拡充する。


 具体的にはデジタル人材(現在100万人)の育成を強化し2026年度までに330万人に拡大する。年末までにデジタルスキル標準を策定し、見える化を図る。成長分野への学部再編を促進するため、私立大学等についても、新設学部の準備・整備費や、開設後5年程度の運営経費を補助する。若者への研究開発支援に関して、初期の失敗を許容し、より長期に成果を求める方向に改善・強化する。米国大学の日本への誘致などを含む、アントレプレナーシップ教育の強化の検討、大学発のスタートアップ創出を後押しするべく、研究大学において、「1大学につき数十社起業し、1社は新規上場を目指そう」といった運動を展開する。大学発の研究成果の事業化を支援するプログラムを強化する。小中高校生を対象にした、起業家を講師に招いての起業家教育の支援プログラムを新設する。大学ファンドの支援対象以外の地域の中核大学や特定の研究分野に強みを持つ大学について、経営戦略に基づいた研究力の向上を実現するため、研究活動の国際展開や技術の社会実装を支援するための専門人材の配置やオープンイノベーション施設の整備等を支援する。


 また、(7)社会的課題を解決する経済社会システムの構築では、新しい資本主義実現会議の下に、民間で公的役割を担う新たな法人形態検討会を設置し、新たな法制の要否について検討を進め、来年6月までに結論を得る。財団、社団等の既存の法人形態の改革も、民間にとって利便性向上の観点から合わせて検討する。


 民間で公的役割を担う新たな法人形態に関しては、米国で2010年から7年間に7704社設立されたベネフィットコーポレーションを念頭に置いており、社会的目的をビジネス方式に統合する新しい法人形態。


 株主のみならず、公共の利益の遂行を考慮するよう求められ(マルチステークホルダー的運営)、社会面・環境面のインパクトを重視する投資家だけでなく、利益追求型の投資家も投資を行っている。わが国でも社会的課題と経済的成長の両方を追求する起業家が増えているが、非営利組織においては、事業実施主体としての限界があり、資金調達の柔軟性が低いことから、大規模な課題解決は難しいとの指摘もある。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞