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記事2022年1月13日 2566号 (1面) 
学校法人制度改革特別委開催
過去の議論の蓄積参考に
丁寧な合意形成目指す

 学校法人のガバナンス改革を巡っては、文部科学省に昨年夏に設置された「学校法人ガバナンス改革会議」(増田宏一座長=日本公認会計士協会相談役)が昨年12月3日に私立学校の実情把握を十分に行うことなく、評議員・評議員会を中心とする制度への転換を求めた報告書をまとめたが、私学関係者や与党・自由民主党の文教関係議員からは私立学校の教育・研究への強い不安や懸念が示された。これを受けて、同省では昨年12月21日に「私立学校ガバナンス改革に関する対応方針」を公表、検討の方向性として四つの論点と、関係者の合意形成を丁寧に図る場を設けること、検討の結果、成案を得られ次第、速やかに法案の提出をめざすこと、関係者との意思疎通と実態把握を十分に行った上で必要な改革方策については躊躇することなく提示するとの進め方を公表。その対応方針に沿って大学設置・学校法人審議会学校法人分科会に設けられた「学校法人制度改革特別委員会」の初会合が1月12日、WEB会議方式で開かれた。


 委員は学校法人分科会から佐野慶子・公認会計士、西岡佳津子・株式会社日立製作所取締役会室長、福原紀彦・中央大学法科大学院教授・前学長(弁護士)の3人、有識者から梅本寛人・弁護士、尾崎安央・早稲田大学法学学術院教授、米澤彰純・東北大学国際戦略室副室長・教授の3人、私立学校団体からは田中愛治・日本私立大学連盟会長(早稲田大学総長)、小原芳明・日本私立大学協会会長(玉川大学理事長・学長)、川並弘純・日本私立短期大学協会常任理事(聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長)、嵯峨実允・日本私立中学高等学校連合会常任理事(学校法人藤華学院理事長)、重永睦夫・日本私立小学校連合会会長(前東京都市大学付属小学校校長)、尾上正史・全日本私立幼稚園連合会副会長(学校法人福岡幼児学園紅葉幼稚園理事長・園長)、福田益和・全国専修学校各種学校総連合会会長(学校法人福田学園理事長)の7人が参加。主査は福原紀彦氏が務めることになった。


 会議冒頭には文科省の義本博司事務次官があいさつし、ゼロベースではなく、これまでの議論の蓄積を参考にしながら、対応方針で示した四つの論点、(1)監事の選解任、会計監査人の設置、内部統制システムの整備、(2)理事の解任、理事長の解職、(3)評議員会・評議員、特に理事・評議員の兼職、評議員会の構成、評議員の選解任、(4)子法人の扱い、過料、刑事罰(特別背任罪、贈収賄罪等)についても私立学校法内で位置付けについてバランスの取れた議論を要請。また福原主査も対応方針の中で示した四つの論点について今後、各回に一つずつ取り上げて議論を進めていくこと、議論に際しては私学団体ごとに意見の集約を図り、会議に臨んでほしいと私学団体代表委員に要請した。


 その後、各委員が学校法人のガバナンスの在り方等について意見を発表。このうち田中・私大連会長は私立学校のガバナンスの見直しは喫緊の課題であるが、評議員会に全ての権限を集中すると、評議員会の開催頻度が低いことや評議員には学外に本業があることなどから次世代の人材育成にとって必要な迅速な意思決定が難しくなるとして、理事会・理事と評議員会が相互にモニターし合い、監事の権限強化を進めていくべきだとした。小原・私大協会長は新しい制度が実際運用可能なのか、私立学校の教育・研究に資する体制づくりにつながるのかの検証の必要性を指摘。川並・日短協常任理事は、学校の規模に応じたガバナンスの在り方の検討の必要性や、学校法人と企業、公益法人が全くイコールとして議論を進めていくことの検討の必要性を指摘。嵯峨・中高連常任理事は、不祥事等に対して所轄庁が現行制度にある権限を活用しきれていないこと、大企業でもいろいろなガバナンス上の問題が生じていることなどを挙げ制度に問題があるわけではないこと、権限を集中させた評議員会に悪意のある人物が入ってきた場合、学校法人は大混乱を来すなどを強調した。重永・日私小連会長は、私立小学校は常に新しい現代的プログラムを考えないと児童が来ない。ここに誠実な学校運営を行う基盤があると指摘。尾上・全日私幼連副会長は私立幼稚園に関しては3分の1強が園児数100人未満と小規模で、実情に応じた制度改革の重要性を求めた。


 福田・全専各連会長は、規模の小さな学校が多いこと、学校教育法第1条の学校と異なり、私学振興助成法に基づく補助金がないことなどの実情を説明、理解を求めた。


 また有識者からは、学校法人制度の基になった財団法人制度については役員の選任や監督の面で大きな問題があること、丁寧な議論を、第三者性を持って見守りたいなどの意見が出された。学校法人分科会の委員からは私立学校法の精神である私立学校の自主性の尊重と公共性の担保の調和を図れる点の検討が必要で、法改正の前に私立学校法の趣旨をよく理解して適正な運用がされているのかの検証も必要で、役割と責任を明確にし、整理してうまく合意形成を図りたい、という意見や、理事会と評議員会を対等な関係にして役割分担を行い職務を機能させる方策の検討が現実的、といった意見も聞かれた。次回は2月9日の開催。



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