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記事2021年9月13日 2555号 (1面) 
学校法人ガバナンス改革会議
第3回 冨山和彦氏から聴取
論点整理で評議員のあり方議論 第4回

 文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本会計士協会相談役)は8月20日に第3回会議を、同23日に第4回会議を相次いでWEB会議方式で開催した。リアルタイムの会議の傍聴は認めず、後日YouTube上で公開する方式を取っており、両会議の模様は9月2日に公開された。第3回会議では増田座長が国立大学法人や海外の私立大学のガバナンス事情に詳しい冨山和彦・IGPIグループ会長を招き、ヒアリング、意見交換を行った。第4回では第2回会議での意見交換を反映した論点整理の改訂版を2人の座長代理が説明、意見交換したが、焦点となったのは評議員会の役割や権限、義務・責任、評議員の適格基準、選任方式、解任、任期、人数だった。


 第3回会議で冨山氏は、「すべての組織に共通のガバナンスの要諦」と題し意見等を述べた。


 その中で組織統治の基本原則に関しては、統治権に正統性の源泉があること(権力的契機、共感的・権威的契機)、権力を作ることと、権力を抑制すること、作為の暴走と不作為の暴走のいずれにも対応できること、統治力(ガバナンス力)=形式(組織制度とそれを規定する規範:ハードパワー)×実質(制度を担う人材と運用実態、さらには実績から生まれる被統治側からの信頼感:ソフトパワー)などと指摘した。ただし大学組織には複数の拮抗するステークホルダー(教員、学生、職員、卒業生、寄付者、納税者等)が存在しているため、ガバナンスボードとガバナンスストラクチャーの設計が難しいとも語った。また私学助成については私学が公益的なことをしている対価であり、私大の多様性に合わせて多様な軸での評価が必要で一律の規制ではなく役割分担が重要、国と契約を結び一定期間に成果が出なければ契約打ち切りでいいとした。


 会議の委員からも、日本では私立大学といえども補助金を受け準国立大学だという発言もあり、国立大学と私立大学間には公的支援額の大きな格差があり、私大の経常的経費に占める補助金の割合が約10%といった背景に言及する意見は聞かれず、また別の委員からは学校法人の合併手続きはまだ不十分なので出口戦略を論点整理に書き込んでほしいとの意見も出された。


  


 第4回会議では、論点整理についての議論を行った。そのうち焦点となった評議員会に関して、役割としては学校法人の最高監督機関、学校法人の運営に関する重要事項の承認(この日、委員からは承認ではなく、発議、議決ができるなどの組織であるべきだとの意見あり)を行うこと、権限については理事の選任・解任(理事の監視・監督)、監事の選任・解任、会計監査人の選任・解任、法人運営の重要事項の承認、評議員報酬(定款または議決事項)を列挙した。


 義務・責任としては善管注意義務、損害賠償責任があること、そのほか評議員の選任方式、任期(理事と同等以上)、人数に関しては絞り込む必要性などが指摘された。


 委員の評議員会への期待は大きいが、万能機関ではなく、権限を限定列挙する方向(教学の自治との関係で経営に関する事項に絞っていくべきだとの意見あり)がいいといった意見が聞かれた。


 大きな権限を持つ評議員の人選についてはノミネート委員会を設けて候補者を集め、評議員会の指名委員会にかけるなど、評議員会の監視・監督に関しては相互監視、決めたことの情報開示を求める意見、プロセスの透明性確保のため、評議員会の公開を考えてはどうか、との意見も出された。


 適任の評議員の確保については委員から確保の難しさを指摘する意見もあったが、論点整理ではネガティブリスト方式(以下の者は評議員になれない)、ポジティブ要件(学校関係者に偏らない多様なステークホルダーの反映)が提示されているが、ネガティブリスト方式では当該学校法人又は関連法人の理事、監事、使用人は評議員になれないなどとしている。


 同会議は現在、基本的な機関設計を議論しているため、幼稚園のみの幼稚園法人など規模に応じた議論はせず、原則を定め、その原則を規模の小さな法人に適用するか否かは、今後、議論を行っていく予定。この問題について増田座長は、「今は学校法人のガバナンスの基本を話している。小規模法人への適用の話は今後の話」と語り、別の委員からは「幼稚園法人でも大きな問題が発生している例もある。基本は(規模にかかわらず)同じ問題だ」という意見も聞かれた。同会議は9月9日に第5回会議を開き、私学団体からヒアリングを行っている。


第3回会議


第4回会議

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