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記事2021年8月3日 2552号 (1面) 
私大連盟がポストコロナ時代の大学のあり方提言
デジタル活用した新しい学びへ
大学設置基準の見直しなど求める

 一般社団法人日本私立大学連盟(田中愛治会長=早稲田大学総長)は8月2日、東京・市ヶ谷の私学会館で記者懇談会を開き、「ポストコロナ時代の大学のあり方〜デジタルを活用した新しい学びの実現〜」と題する提言を発表した。


 コロナ禍が広がるにつれ、大学のあり方や授業のあり方の見直しが各地の大学で進められたが、ポストコロナ時代の大学はいかなる方向に改革を進めていくべきか、そのための大学設置基準、質保証の基準はどう変わる必要があるのかを中心に、コロナ禍の中で学んだ経験等を整理、取りまとめた提言書。


 今回のコロナ禍が収束しても、新たなパンデミックや災害は今後も繰り返し発生が予測されること、デジタル環境を活用して個々の学修者に合わせた学びの多様化や深化の方法を開発する可能性が出てきていること、リカレント教育への道や、海外の大学との研究・教育の連携を一層進めることが想定できるようになったことから、こうした状況を機に新しい学びの方法を模索しようというもの。その中でポストコロナ時代を見据えた大学の改革の方向性については、(1)「オンラインに適した学び」と「オンラインには適さない学び」の区別や適切な組み合わせに対して共通認識を持つこと。(2)留学前指導の一環としてオンラインでの日本語学修プログラムを提供することで、より高度な日本留学が実現可能となること、(3)産官学連携の下オンラインを活用したリカレント教育を積極的に推進すること、(4)地方大学と海外の大学の連携を進め、オンラインによる単位互換制度等を整備し、海外を含む他地域から学生の獲得を目指すこと、学生のクロスアポイントのような制度を模索して地方大学と首都圏の大学の新たな連携を提示することもできること。(5)高校生の大学授業の先取り(入学後は単位として認定)制度の導入を検討すること。(6)オンキャンパスでの課外活動の活性化のための方策の検討、海外学生団体との交流等が容易になるなどオンラインを活用すれば課外活動の展開が広がることの6点を示している。こうしたデジタルを活用した新しい学びの実現のためには旧来の施設設備の概念とは異なる教育資源が必要だと指摘。例えば土地や建物のランニングコストとICT経費との入れ替えが必要としている。


 大学設置基準に関しては、卒業要件に関わるオンライン授業による修得単位数(60単位)の上限を撤廃すること、現行の単位制で定められている学修時間や単位数はガイドラインとして在籍年数は削除すること、オンライン授業を高度に活用することで空間と時間から相当な部分で解放されることから大学施設に関する基本的な考えを示す第34条(校地)以外の基準は全面的に削除すること、定員管理に関しては学部単位ではなく大学単位とし、単年度ではなく複数年度平均で行い、定員の単年度充足率を経常費補助の算定の基礎とはしないこと(大学運営を萎縮させる要因)、収容定員に対する専任教員数の規定は学部の種類や大学の実態に即して見直すこと、教職中間職とも呼ぶべき専門的職員、実務家教員などの登場で教員と事務職の定義が曖昧となっているため、教員と職員の定義、役割について規定すべきだとしている。


 こうした大学設置基準の緩和でも質の低下を招かない方策として、教育の質、経営状況、定員充足率、情報公表を含むガバナンス等の観点について厳格な点検をし、承認を得られた大学に対して緩和策を適用すること、新規参入に関して完成年度までは現行基準を適用し、完成年度以降、緩和の対象とすることを提言。また質向上のあり方に関しては、大学はオンライン教育を含めたポストコロナの大学教育の学修成果の可視化の指標や測定方法について検討を開始すること、授業料に関して人件費依存率等を含めた情報を積極的に発信し、社会の理解と支持を拡大する方策を検討することを提言。


 その授業料については従量制に基づく1科目当たり授業料の本格的検討も視野に入れる必要があるとしている。


記者懇談会の冒頭、あいさつする私大連盟の田中愛治会長(早稲田大学総長)

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