こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2021年8月3日号二ュース >> VIEW

記事2021年8月3日 2552号 (1面) 
機関設計の在り方など抜本改革、来年法改正へ
学校法人ガバナンス改革会議始動
“社会福祉法人等と同等のガバナンス実現”
規模に応じた取り扱い検討

 文部科学省はこのほど「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本公認会計士協会相談役)を設置し、7月19日に第1回会議を同省会議室(WEB会議併用)で開催した。会議の模様は後日、YouTubeで公開される。同会議は「手厚い」税制上の優遇措置を受ける公益法人としての学校法人にふさわしいガバナンスの抜本的改革に向けて、(1)新法人制度の改革案、(2)規模等に応じた取り扱いを柱とする改革案の全体像を年内に取りまとめて文部科学大臣に報告する。その後の条文化作業は内閣府における公益認定法人制度の見直しに係る法改正の成案を踏まえて進め、令和4年の通常国会に関係法改正案を提出することにしている。


 学校法人のガバナンス改革に関しては、今年3月19日に同省の「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」(座長=能見善久・東京大学名誉教授)が1年余の期間(11回)をかけて大学を設置する法人の基本的な方向性等をまとめ同省に提言していたが、今年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(いわゆる「骨太の方針」)では、「手厚い税制優遇を受ける公益法人としての学校法人にふさわしい抜本改革」、具体的には社会福祉法人や公益法人と同等のガバナンス機能を発揮できる制度改正が求められていた。


 検討事項(1)新法人制度の改革案では、機関設計の在り方(評議員会のチェック・監督機能、評議員の規律、理事会のモニタリング機能、監事のけん制機能・独立性、会計監査人・内部統制システム)、その他社会福祉法人や公益法人と同等のガバナンス機能を発揮するための見直し(理事・監事・評議員の任期・資格要件、評議員会議決事項の理事会への委任の無効、理事に委任できない理事会決定事項、監事の報告義務の拡大など)を検討する。


 検討事項(2)規模等に応じた取り扱いに関しては、会計監査人、内部統制システム等の義務付けや代替措置の在り方(事業規模〈負債、収益、基本金、学生生徒数、従業員数など〉、事業区域〈学校、サテライト施設、事務所など〉、公費〈私学助成、修学支援新制度、子ども・子育て支援新制度など〉、税制優遇)、簡素化する事項の整理(理事・評議員の定数、計算書類の種類など)、財務書類の一般閲覧・公表(都道府県所轄法人)、個人立幼稚園に対する規律を検討する。


 これら(1)と(2)の結論を年内に得た後、(3)ガバナンス・コードの抜本改革を行う。ガバナンス・コードとは学校法人の運営上の基本を示したもの。抜本改革では、コンプライ・オア・エクスプレイン方式への移行、コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応、事業報告書を通じたガバナンス情報の開示、団体の取り組み・法人の好事例のフォローアップを検討する。コンプライ・オア・エクスプレイン方式とは、ガバナンス・コードを順守するか、しないのであればその理由の説明を求めるもの。


 学校法人ガバナンス会議の委員は12人、委員には学校法人の元理事長の安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会顧問、学術情報分析センター長もいるが、大半は野村修也・中央大学法科大学院教授など大学の教授や弁護士、公認会計士など外部有識者。同会議は今年12月の取りまとめに向けて、今後月に1回ないし2回会議を持ち意見交換を進める予定で、その中では私立学校関係者からの意見聴取も行うことにしている。国立大学法人のガバナンスの見直しについては今年、法改正が行われている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞