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記事2021年8月13日 2553号 (1面) 
中教審大学分科会質保証システム部会開催
オンライン教育の質保証など審議
ポストコロナ時代の大学私大連盟の提言の説明も

 中央教育審議会大学分科会の質保証システム部会(部会長=吉岡知哉・日本学生支援機構理事長)の第10回会議が8月4日、WEB会議方式で開催され同時配信された=写真=。この日は主に「オンライン授業における通学制と通信制について」と、「大学設置基準の設置認可・専任教員」などが議論された。 


 初めに委員からの事前提出意見が述べられた。飯吉透委員(京都大学高等教育研究開発推進センター長)は、「コロナ禍で緊急避難的に実施されているオンライン授業等は検証がない中で結論づけるのは拙速であり、慎重に議論すべきだ。授業の質保証の仕組みについては、従来のものをアップグレードし、多面的に検討されるべきで、国や評価認証機関はガイドラインを示し、大学等の先導を行うことが望ましい。今後、公的機関としてのメディア教育開発センターの設置が必要だ」などと述べた。 


 大森昭生委員(共愛学園前橋国際大学長)は、オンライン教育等の質保証の効果検証を進めるとともに、遠隔授業の上限が60単位であることの支障を明らかにした上で見直しを求めた。その上で「通学制の遠隔授業を柔軟化するなら双方向性を担保すること。通信制についてはリカレント教育でのメリットは高まっている。大学設置基準について、地域の大学は社会のニーズに臨機応変に対応するために学部学科設置にかかる専任教員の緩和が必要だが、一方で兼務教員のみというのはどうか」などと述べた。 


 曄道佳明委員(上智大学長)は、私立大学連盟の提言「ポストコロナ時代の大学の在り方〜デジタルを活用した新しい学びの実現〜」の概要を紹介。この提言の特徴について、教育の自由度を上げること、そのために規制緩和と同時に大学教育の質の向上が図られる必要があるとした。また提言の中でオンライン教育については、日本の大学の国際化やリカレント教育、大学間連携等での活用・発展が期待される。学びのキャリア形成に対する多様化として、遠隔授業の上限60単位や校舎面積等の外形的基準への再考を主張している、ただし大学新設の場合は現行の基準を適用し、完成年度以降の様子をみて緩和対象とする、一方、既存大学等には質保証の担保の点検後に規制緩和の対象とするなど工夫をすること、新たな教育の在り方を議論していかないと高等教育の国際競争で取り残されていくなど提案している、とした。 


 長谷川和子委員(日本経済団体連合会常務理事)は、オンライン教育の質保証については、「ハイブリッド型の教育プログラムの教育効果を高める方策を検討すべきだ。中長期的には対面を前提とした授業・単位の在り方の見直し、国内外大学間の連携の推進・強化、大学設置基準・設置認可制度は新しい学部をスピード感をもって柔軟に設置できるよう、現在の硬直的な運用を見直すべきだ」などとした。 


 米澤彰純委員(東北大学教授)は、オンライン教育について、「新しいことをやるべきだという動きから、通学制の中で通信制に近い形のものを考えるしかない。教員については、現行基準を維持するかむしろ向上させ、フルタイム換算での教員配置にするほか、カリキュラム・学位プログラムレベルでの責任主体に切り替える。オンライン教育なら施設がいらないという発想は適切ではなく、むしろ施設の充実が必要だ。また権限を設置審や認証評価に与えていくべきだ」などと述べた。続いて委員による意見交換が行われ、オンライン教育については、「通学制はキャンパスがあり学生が集うことによっても成り立っている。通学制では双方向性が保証されるべきだ」などのほか、オンライン教育・全寮制のミネルバ大学が話題に上った。定員管理については、「大学単位での定員は事実上管理できなくなるのではないか」「大学の持つ意味をもう一度考えざるを得ない」などの意見が聞かれ、設置認可については、「日本は認証評価機関に権限がない。設置認可は必要だ」「内部質保証があれば新しい学位授与ができるようにしてはどうか」などの意見が出された



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