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記事2021年7月13日 2550号 (5面) 
教育の理念を振り返り、教育改革を推進
自由学園が創立100周年
「自労自治」の理念の下生徒が創る学校
共生共学の学校づくり2024年男女共学化

 約10万平方メートルの敷地に4千本の樹木が茂る、自然豊かな環境に恵まれた自由学園(高橋和也学園長、東京都東久留米市)。同学園は今年4月15日、創立100周年を迎えた。次の100周年を歩み始めるに当たり、創立の原点である教育理念を振り返り、新たに教育改革を進めている。高橋和也学園長に自由学園の教育理念、進めている教育改革などについて伺った。 


 同学園はキリスト教精神を基本に、「真の自由人をつくる」「思想しつつ生活しつつ祈りつつ」を建学の精神に掲げる。「真の自由人」には「真理はあなたたちを自由にする」(新約聖書の一節)に由来しており、「どのような時代になっても変わることのない『真理』を求め、与えられた『自由』を生かしてよく生きる『真の自由人』を育てたい」という願いが込められている。 


 高橋学園長は「本学園は生徒が創る学校です。学校を一つの社会と捉えて『自労自治』の理念の下、全校生徒が協力して、自分たちでできることは自分たちで学校の管理運営に取り組んでいます。自分たちの学校という意識は、次第に自分たちの社会という意識へと育っていきます。教師は生徒の主体性を重んじながらサポートしています」と基本的な考えを述べる。 


 1921年女子校として始まった同学園は、現在幼稚園、初等部、中等科(男子部・女子部)・高等科(男子部・女子部)、大学部までの一貫教育を行っている。基本的に1学年1クラスの少人数教育を行っている。 


 同学園には寮がある。男子寮(東天寮)・女子寮(清風寮)は教師の寮監は置かず、生徒の自治で管理運営されている。寮生活では人との関わりの中で人間関係を学び、自治生活の中で自分たちの住む社会をよくしていく力を身につけていくことに狙いがある。生徒たちから選ばれた寮長と、高等科3年生が室長になり自治生活の責任を担う。 


 また、中高では、昼食は生徒自らが生徒・教職員全員分を作り頂く。女子は毎日、男子は週に1回作っている。今年から中学1年は、男女合同で昼食作りに参加している。食事作りは家庭科の授業として行われ、リーダーは指導教諭と事前に相談し、組分け等の準備をする。時には生徒が育てた野菜等も使われる。毎日の食卓の用意や片付けも生徒たち自身が行っている。この食事の時間は創立以来続いている。 


 進めている教育改革の柱は、(1)キリスト教精神(聖書)を学び、創立者の考えを学ぶ時間をつくること、(2)「探求の時間」で生徒が問いを見つけ、自ら学ぶ時間をつくること、(3)よりよい社会をつくるために「共生学」を学ぶこと―― 


 「100年前の精神は継承しますが、出来上がっている形を守るのではなく、授業のあり方を見直すなど、さまざまな面で見直しを行っています。創立時の形を土台としつつ、学校全体で三つの目標に取り組み、新しい教育をつくっていきます」と高橋学園長は改革の方針を語る。 


 TLPの時間では、「思想しつつ(Thinking)、生活しつつ(Living)、祈りつつ(Praying)」をモットーにキリスト教精神を学ぶ。また、自ら学ぶ人間を育成するために「探求の時間」を昨年からカリキュラムに組み入れている。「共生学」は中等科では「人権」「平和」「環境」のテーマで行っている。教科横断的な学びを通じて、物事を総合的にとらえる力を養うことを大切にしている。 


 同学園には、創立以来の教育方針「生活即教育」という考えがある。生活の全てを学びの機会とし、本物に触れる教育を重視している。 


 「人間として生きていくために必要なことを学ぶことに、私学は覚悟をもち続けることだと思います。よりよい社会の形を生徒たちが実感できるような学校教育を行いたい」と高橋学園長。 


 共生共学の学校づくりの一環として、2024年には男女共学化に踏み切る。現在、その準備を進めている。「これまで同学園が取り組んできた教育の特色を生かし、男子女子が性別を超えて、男子と女子が尊敬し合い、協力してよりよい社会・共生社会をつくる人として成長する学校の実現を目指します」と高橋学園長は、目指す学校の姿を述べた。


高橋学園長


男子部(中等科・高等科)正面は体育館(東京都歴史的建造物)


女子部中等科「共生学」学んだことをグループに分かれて共有する

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