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記事2021年7月13日 2550号 (1面) 
中教審の第3回教員免許更新制小委開く
更新制に厳しい調査結果
研修受講履歴を管理の方向か

 「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の教員免許更新制小委員会(主査=加治佐哲也・兵庫教育大学長)は7月5日、WEB会議方式で第3回会議を開催した。この日は、(1)文部科学省が今年4月から5月にかけて実施した「免許更新制高度化のための調査研究事業(現職教員アンケート)」の調査結果と、(2)同省が同時期に全国の教育委員会を対象に実施した「研修受講履歴管理状況調査」の結果が報告されたほか、(3)今後の現職研修の充実方策についての協議、また、(4)教員研修の履歴管理に関して京都府総合教育センターと大分県教育センターから取り組み状況等について聴取した。このほか第2回会議で秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授)から情報提供のあった、慶應義塾大学の佐久間亜紀教授(研究室)による「教員免許更新制が、今後の臨時的任用教員および非常勤講師の任用状況にどのような影響を及ぼすか、ひいては今後の教職員未配置(教員不足)にどのような影響を及ぼすか」の調査研究データも報告された。 


 このうち(1)のアンケート調査は、同省が民間企業に委嘱する形で、全国の現職教師を対象にインターネットによる抽出調査(事前に登録されたモニター会員)で今年4月28日から5月11日にかけ実施したもので、回収数は2108人。教員の男女比は男性が6割、女性が4割。勤務先は幼・小・中・高校・特別支援学校だが、全体の約9割は小・中・高校教員。私立学校の教員も16・6%含まれている。調査結果によると、教員免許更新講習を受講するに当たって重視する点は、高い順に「受講会場」「受講時期」「受講内容」で、講習の選択には受講しやすい時期や場所を選択する傾向が強かった。また受講内容の満足度は受講直後に「満足」「やや満足」が57・9%を占めたが、受講内容が現在の現場で「役立っている」「やや役立っている」との回答は合計でも33・4%と低く、更新講習開設大学が受講者に実施している満足度調査とは異なる結果となった。 


 また、慶應義塾大学の佐久間教授(研究室)が行った調査研究「教員免許更新制が今後の教員不足に及ぼす影響について」は事務局(文科省)が報告したが、調査対象としたある県内では60歳以上の世代が非常勤講師の6割以上を担い、臨時的任用教員についても1割以上を担っており、主たる担い手として重要な役割を果たしていること、しかし教員免許更新制が現状のまま続く場合、今後、毎年更新対象となる退職者の教員免許が多く失効していき、非常勤講師の需要に対する主要な供給源が失われる可能性が高いと指摘。その結果、公立小・中学校での教員不足が深刻化していく可能性が高いこと、他の都道府県・政令指定都市も同様の傾向にある可能性が高いことを示した。 


 この後、同省の教員研修履歴の管理等に関する調査結果、同省が提案する今後の現職研修の充実方策が提案され、京都府と大分県の教育センターによる教職員研修システム等が報告された。 


 この日、事務局が示した「今後の現職研修の充実方策について」は教員免許更新制に依存しない、新たな教師の学びの姿の論点例を提案するもので、教師の研修受講履歴を記録・管理していく重要性や、独立行政法人教職員支援機構が公開している「校内研修シリーズ」などのオンライン講座は国公私立教員、地域の別を問わず、いつでもどこでもアクセスできることから、その拡充を進め、学校等の活用を促進していく重要性、法定研修以外の研修機会をどう考えるか、教師の主体的・自律的な研修を実現する上で学校管理職等のマネジメントはどうあるべきか、教師の主体的・自律的な研修を促進する一方で、任命権者や学校管理職等の期待する水準の研修を受けていると到底認められない場合の対応、教育公務員特例法第22条の2の規定に基づく指針やこれを補うガイドライン等にできる限り具体的に示す是非等を論点例としている。教員免許更新制については廃止の可能性が高まっており、同小委の加治佐主査は会議の最後に、現職研修の具体的方向性の整理・提示と、小委員会として教員免許更新制について存続か廃止か結論を出すための準備を事務局に依頼した。大臣からは早期の結論が要請されている。

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