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記事2021年6月3日 2546号 (2面) 
中教審教員養成部会・更新制小委開く
教員免許状更新制廃止か
一方で教員の学び管理強化には懸念も

 中央教育審議会初等中等教育分科会の教員養成部会(第123回)と「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会教員免許更新制小委員会(第2回)の合同会議が5月24日、WEB会議方式で開かれた。この日の議題は、(1)教員養成フラッグシップ大学構想の今後の進め方案、(2)文部科学省が提案した「令和の日本型学校教育」を担う教師の学び(新たな姿の構想)、(3)新型コロナウイルス感染症による教員免許更新制への影響調査結果が報告され、質疑、意見交換が行われた。


 このうち(1)の教員養成フラッグシップ大学の役割については、わが国の教員養成を新たな次元へと変革するけん引役、わが国の教員養成ネットワークの中核、学校教育の課題解決への寄与、政策提言の機能が求められ、ごく少数の拠点となる大学に限定して選定を行うべきだなどの報告が既に出ているが、教員養成フラッグシップ大学のイメージについて、委員からは、「大きく期待していたが、小さくまとまりすぎている。さまざまな教育課題に果敢に挑戦する存在であってほしい」「今までと違うものを作るのだという強いリーダーシップを期待している」「もう少しとがった内容を柔軟に取り入れられるようにしてほしい」などの意見が出されたが、この日出された意見の取り扱い等については教員養成部会の加治佐部会長(兼・同小委員会主査)に一任して、今後、教員養成フラッグシップ大学の公募・選定、大学からの申請(今年7月から11月まで)、その後、評価・選定(令和4年2月まで)、特例の実施準備等(令和4年2月から4月)を経て、令和4年度から教員養成フラッグシップ大学の取り組みが開始するなど事業を進めていくことが了承された。


 (2)の教員免許更新制の見直しに関しては、前回の議論を踏まえて事務局(文科省)が作成した新たな姿の構想が報告されたが、その中ではそもそも「新たな学びの姿」を実現する上で、免許状に有効期限を設けて更新するという仕組みが必要と言えるのか、などの意見を紹介。その上で独立行政法人教職員支援機構が公開している校内研修シリーズなどオンライン講座の活用を促していくことの重要性等を挙げて、研修の体系的・計画的実施の促進、オンラインによる受講環境の充実が教員関係者から評価されていることを指摘している。各大学のコンテンツもサイトに載せてMOOCsのようなイメージを描いているようで、旗振り役には教職員支援機構を挙げているが、全国の教育委員会も参画を想定していると説明した。


 こうした提案に委員からは、「フラッグシップ大学も含めて学びの規格化・精緻化・厳格化が場合によっては過剰に進むのではないか。もう少し多様な経験を含めて考えてほしい。そうでないと教員は元気を出して学ぶことができないし、学生も教職が魅力的な職業に見えない」「教師の学びの個別最適化はAIが最適化するのか。国から最適化されるのか。教師一人一人の個性化の過程が大事。オンライン化はオンデマンドのイメージを非常に強くするものとなっている」「教員免許更新講習は免許の失効があるので元々後ろ向きなもの。教師自身のキャリアアップに結び付くことが大事」などの意見が聞かれた。加治佐部会長は、「あまりに教員の学びの管理が行き過ぎると、教職の魅力に関わってくる。やはり自ら学びをつくり、学びを創造することが基本になるべきだ」などと語った。


 (3)の新型コロナウイルス感染症を理由とした免許更新講習への影響については47都道府県教育委員会等を対象にした調査の結果が報告された。それによるとコロナを理由に免許状更新講習の修了確認期限の延期・教員免許状の有効期限の延長申請者は更新時期を迎える者の約4・5%にとどまるなど、大きな影響は見られなかった。

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