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記事2021年6月23日 2548号 (2面) 
第5回新時代の学校施設検討部会開く
中間報告素案について審議
PC室や印刷室等の扱いで複数の意見

 文部科学省の学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議の「新しい時代の学校施設検討部会」(部会長=長澤悟・東洋大学名誉教授)は6月22日、WEB会議方式で第5回部会を開いた。


 この日は、事務局(文科省)から新しい時代の学校施設の在り方に関するこれまでの主な意見や、第4回部会で発表された伊藤俊介・東京電機大学システムデザイン工学部教授の「教室・学習空間の計画について」と、株式会社ファインコラボレート研究所の望月伸一代表取締役の「人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設等の在り方」の概要が改めて報告された。その後、「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」と題する中間報告(素案)が事務局から報告され、委員が新しい時代の学びの姿、新しい時代の学びの実現に向けて解決すべき学校施設の課題、新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方、新しい時代の学びを実現する学校施設の整備方策等について意見交換した。


 この日示された中間報告素案は、前回部会で示された中間報告骨子案を肉付けし、新規項目を追加したもので、ICT活用により実現される学びの姿、9年間を見通した義務教育の在り方、ポストコロナ時代における学校施設の役割や学びのスタイルの変容への対応の記述等が追加されている。こうした中間報告素案に委員からは、「ICT関連の記述でハイブリッド化というキーワードやクラウドとの言葉が使われていないが必要ないか」「学びのスタイルの変容への対応の箇所で児童生徒への端末整備が進んだ中で机や大型提示装置をなくすことくらいのことを考えているのか」「1人1台端末の活用で広がる学びの例に関して学習面ばかりでなく、もう少し子供たちのつながりのことにも触れるべきだ」等の意見が聞かれた。


 また、全体の構成に関して、「取り上げるべき中身は収められているがインパクトが足りない。全体として何を提起するのかもう少し知恵を絞らなければならない。幹と枝を整える作業が必要だ。短期的なもの、中長期的なものなど時間軸をもう少し整理すべきだ」といった意見も聞かれた。


 さらに「空調に関して体育館への導入が遅れているが、複雑な背景があることに触れてほしい」との意見も出された。


 第3章の新しい時代の学びを実現する学校施設の姿(ビジョン)に関しては、新たにキーコンセフトをSchoolsfortheFuture(仮)とし、未来志向で実空間の価値を捉え直し、学校施設全体を学びの場として創造することを掲げ、目指すべき姿については個別最適な学びと協働的な学びに対応し柔軟で創造的な学習空間を実現すること、健やかな学習・生活空間を実現すること、ともに想像する共創空間を実現、加えて安全・安心な教育環境の実現、脱炭素社会の実現に貢献する、持続可能な教育環境を実現することの五つの方向性を示している。


 こうした事務局からの提案に委員からは、「映像編集ができる高スペックのパソコンが必要となっており、印刷も教員が自分の机で印刷できるようになり、印刷室は今や資材置き場になっている。PC室も印刷室も考え方が変わっていくのではないか」との意見があり、文科省は「視聴覚教室の扱いも含めて検討中」と答えた。PC室については「今後設けない方針の設置者も見られるが、それに対し考え方を示していくことも必要」「スペックの高いパソコンは重要。教員のパソコンのスペックも上げてほしい」「PC室や特別教室は教科的ではなく何をするところか、との視点で環境整備が必要」「素案の、新しい生活様式を踏まえ健やかな学習・生活空間を実現するとの項目のところで、快適性への配慮が取り上げられているが、生徒自身が施設をきれいに保っていきたいと思う施設づくり、場づくりが重要」との意見も聞かれた。


 このほか脱炭素社会の実現に貢献する持続可能な学校施設を実現するとの項目も前回と比べ記述が充実された。脱炭素問題に関して第3回部会で学校施設のカーボンニュートラル対応について発表した伊香賀俊治・慶應義塾大学理工学部教授はこれまで同部会の協力者だったが、正式に委員となる予定。また委員から、オープンな空間については、使わない、使おうとしない傾向があるが、年来の課題で、このままでは状況は変わらない。学校施設のマネジメントがないあるいは乏しかったことがそうした現象を生んでいるのではないか」との問題提起や、PFIなど民間の手法を取り入れての施設整備では一定期間後に民間が公共に所有権を戻す際、施設の修復を巡って問題が発生している状況を報告する意見、こうした手法の活用は教育委員会だけでは難しいことなどが指摘された。さらに「新しい時代の学びの姿を見てもらうためモデルルームを設けるのがいい」との提案も聞かれた。


 次回、第6回部会は7月7日に開催の予定。

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