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記事2021年6月23日 2548号 (2面) 
第11期初の質保証システム部会開く
吉岡知哉部会長を前期に続いて選任
設置基準の見直し等議論へ

 中央教育審議会大学分科会質保証システム部会の第8回会議が6月15日、WEB会議方式で開催されユーチューブを通じてライブ配信された。第11期としては初めての開催となるため部会長の選任が行われ、吉岡知哉・日本学生支援機構理事長が再任された。


 吉岡部会長はあいさつの中で「パンデミックが起こり大学の役割も大きく考え直さなくてはならなくなった。デジタル化など現在進行中の形を注視しながら質保証のシステムを具体的に考えていきたい」と述べた。また伯井美徳・高等教育局長は「世界中がニューノーマルにおける大学教育の在り方を模索している。わが国も新たな高等教育の仕組みを構築し、質保証システムを時代に即したものに見直す必要がある。具体的な改善方策の検討をお願いしたい」などと述べた。


 最初に事務局から関連する三つの会議の提言内容が紹介された。


 教育再生実行会議の提言のうち、質保証システム部会に関係が深いとして紹介されたのは、高等教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を迅速かつ強力に推進することとして、面接授業と遠隔・オンライン授業を効果的に組み合わせたハイブリッド型教育の実施、国は遠隔・オンライン教育の単位修得の柔軟化の検討と併せて、通学制と通信制の区分を含めた大学設置基準の在り方や設置認可制度、認証評価制度の見直しなど、質保証システムの見直しに向けた検討を速やかに行うことなどが提言されていた。


 また、規制改革推進会議の答申では、デジタル時代を踏まえ、見直すものの具体例として挙げたのは、大学設置基準等で、通信制と通学制の設置基準、校地・校舎面積の物理的空間の規制、大学設置基準における施設の設置義務等、卒業要件、定員管理、学部単位の定員の柔軟化、専任教員数、実務家教員の定義等の明示化、単位互換制度の在り方などが挙げられた。


 産学協議会の提言では、ハイブリッド型教育実施に係る環境整備・質保証の強化・カリキュラムの再構築、国内外の大学との連携・強化、定員管理の見直し等が挙げられた。


  こうした提言を受け、質保証システム部会で検討する具体的な見直しの視点と方向性としたのは、(1)客観性の確保として、設置基準の見直し、(2)透明性の向上では、設置審査の透明性の向上、情報公表の徹底・一覧化、(3)先導性・先進性では、教育研究組織を容易に編成しやすくするための設置基準の見直しや設置審査体制の柔軟化、(4)厳格性の担保では、情報公表・評価結果に基づく対応の厳格化。


 最初の検討事項として定員管理が取り上げられ、事務局から提示された論点は、定員管理の意義・目的をどのように考えるか、また入学定員から収容定員へ、学部単位から大学単位へ、単年度単位から複数年度単位へ見直すことについてどのように考えるか、その際専門分野別の教員数確保や学生の学修環境確保の観点についてどのように考えるか等。


 吉岡部会長は「定員管理が今の建て付けでは新しいニーズに対応できない。学部単位の定員から大学単位の定員にするのもよい。定員を一定数超えると助成が受けられない。定員の在り方を考えてほしいという要望も出ている」などと述べた。委員からは、「ハイブリッド型教育を考え抜本的に考え直すべきだ」「定員が大学単位になった場合、教員の移動は簡単ではない」「定員管理を厳格にしないと教育の質が担保できない」「物理的な学生の場合とオンライン学生の場合の単位の認定を議論すべきだ」「双方向性を担保した学びを考えると一人の教員が教えられる範囲は決まってくる」。このほか私学の委員からは「定員を1名でも超えると経常費補助金が削減されたり、新学部設置が認められないなど、いろいろなことが関わっている。入学定員と経常費補助金のリンクをやめてほしい」との意見が上がった。


 今後、年度内に審議をまとめ、令和4年度中を目途に必要な制度改正を行うとしている。


6月15日に行われた中教審大学分科会質保証システム部会の委員等

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