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記事2021年5月3日 2543号 (1面) 
教員免許更新制小委が初会合
教員確保に障壁等との指摘
早急に抜本的に見直しへ

 中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会に新設された「教員免許更新制小委員会」(主査=加治佐哲也・兵庫教育大学長)は4月30日、WEB会議方式で第1回会議を開き=写真=、教員免許更新制の早急かつ抜本的な見直し議論を開始した。教員免許更新制を巡っては、既に前期の第10期中教審が総括的な検証を実施、教師の資質能力の確保、教師や管理職等の負担、教師の確保等の観点で極めて厳しい評価をしており、今年3月12日の萩生田文部科学大臣から第11期中教審への諮問では、現場の教師の意見などを把握しつつ今後できるだけ早急に当該検証を終え、必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について先行して結論を示すよう要請。その問題の集中審議の場として、同小委員会が設置された。


 第1回小委員会では、文科省からまず、(1)前期中教審の教員養成部会を中心に行った教員免許更新制や研修を巡る包括的な検証結果の概要(前期教員養成部会からの申し送り事項)が説明され、続いて、(2)昨年12月に国内の全ての更新講習開設者494大学等を対象に行った取り組みと負担感等の調査結果(eメール調査、回収率89・7%)と、教員免許を所持(休眠・失効状態を含む)する民間企業等勤務経験者2046人および民間企業等勤務経験のある現場教師375人を対象にした更新制に対する意識調査(WEBアンケート)結果、さらに、(3)今後検討すべき事項(現場の教師のニーズに応じた資質能力の向上と負担の軽減の両立を図るとともに、臨時的任用教員等の確保を妨げない制度に改善することが可能かという観点で検討を行う)が説明され、委員による意見交換が行われた。


このうち(1)の前期中教審での検証結果では、制度の複雑さから更新手続きのミス(いわゆる「うっかり失効」)で教員の身分に加え公務員としての身分までも喪失することを疑問視。また教員の勤務時間が増加している中で更新講習に費やす30時間の相対的負担が高まり、居住地から離れた大学等での長期休業期間中の受講に関しても負担感が指摘されている。


また、教員一人一人への講習受講の推奨等が管理職や教育委員会事務局の多忙化を招き、免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった例が多数存在、退職教員の活用も困難になっており、更新講習開設者の大学等も講習を担う教員の確保や採算性の点で課題を抱えている、としている。


そのため、前期中教審は、コロナ禍の中で教員免許更新制が子供たちの学びの保障に注力する教員や迅速な人的体制の確保に及ぼす影響の分析、令和3年度に速やかに現職教師を対象にした一定規模の調査を行いヒアリングで得た事実認識が現場の教師の認識と一致していることを裏付ける必要性を指摘していた。


(2)の更新講習開設者調査では、大学等が更新講習を実施することについては、地域の教師全体の質的向上への貢献、大学のPRという点で講習開設者の約7割がメリットを感じているものの、更新講習の開設については「負担」(12・4%)、「どちらかといえば負担」(56・9%)を感じている大学等も7割近くに上った。開設の際の課題については、「開催日の日程調整」(71・1%)、「教師の確保」(59・4%)、「講師の他の業務等への影響」(54・6%)が多く指摘されており、人員不足に関しては事務作業等を担当する人員の不足や講習当日の運営人員の確保の難しさを指摘する大学等も全体の4割強あった。


 コロナ禍で講習の開設さらに難しくなっており、「これまで通り更新講習を続けていくのは難しい面がある」と答えた大学等は42%に達した。


教員免許状を所持する民間企業等勤務者等に関する調査結果では、「過去、教師への転職活動をしたが、教師にならなかった」「現在、転職に向けて活動や検討をしている」「いずれ教師に転職したいと思っている」と回答した人の過半数以上が「教師になる具体的な予定がない場合に受講できない」ことが課題としており、教員免許更新制が教師への転職の一定の障壁になっていることが明らかになった。


こうした状況の中で、同小委員会では、教師の資質能力の確保に関しては領域(必修・選択必修・選択)の在り方の見直し等を、研修と講習の相互活用の徹底に関しては講習の講師となることができる者の範囲の拡大、免除対象者の拡大に関しては勤務実績等に基づく免除要件の緩和、教師や管理職等の負担軽減に関しては地理的・時間的制約を超えて良質な講習内容が受講可能となるオンライン化の促進、30時間を2年間で受講する仕組みの見直し(例えば受講期間を5年間に延長する等の柔軟化)、講習の仕組みの見直しに関しては現職教員の受講を妨げない範囲において、学校勤務未経験者等に対する受講機会の拡大を検討課題にしているが、受講機会の拡大を行ったとしても免許を更新するペーパーティーチャーが数多く出てくるかどうかについては慎重に考える必要があるのではないか、との懸念も指摘している。


こうした文科省の説明に委員からは、「民間企業の力も借りてオンラインで講習を集約して皆がアクセスできる環境づくりを」「ポイント制にすべきで、マイページが必要になる。受けた研修が一覧表で見られ振り返られる」「更新時期が分かりやすい制度にしてほしい」「小学校では教員確保難が深刻で、臨時的任用教員がなかなか見つからない。校長がクラス担任を持っている。教員免許更新制については廃止を含め検討してほしい」「教員免許センターのようなものがあり、学校にいない者にもアナウンスがあるといい」などといった意見が聞かれた。その中でも研修や講習をポイント制にして積み上げていく制度や講習のオンデマンド、オンライン化を求める意見が複数の委員から聞かれた。







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