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記事2021年4月23日 2542号 (1面) 
新しい時代の学校施設検討部会開催
教室の大きさや在り方
モニターの数、机等も検討

 文部科学省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」の下に設けられた「新しい時代の学校施設検討部会」(部会長=長澤悟・東洋大学名誉教授)は4月20日、WEB会議方式で第2回会議を開催した。この日は、2月15日開催の第1回会議に続き、「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方」について委員による発表や意見交換等が行われた。議論はまだ序盤。今後、委員による視察等も行い、今年夏までに同部会の審議を経て親会議の協力者会議で「中間報告」をまとめ、令和4年3月末までに新しい時代の学校施設の在り方と推進方策に関する「最終報告」をまとめる予定にしている。


 第2回会議では、子供の主体的な学びを引き出すための、あるいは個別最適な学びと協働的な学びを実現するための教室の在り方や教室等に置かれるモニターの大きさ、その数、黒板(教師による板書)の是非などに関する意見が出された一方で、自治体の首長や市教育庁関係者の委員は、財政的な制約からいかに既存の施設の改修で対応するかが重要との意見も聞かれた。


 会議冒頭には文科省から同部会の「主な検討事項及び論点」、「主な検討事項と論点に関する資料」が説明された。


 それによると、主な検討事項・論点は、ポストコロナ時代における学校施設の意義、空間に集まり学ぶことの価値、少人数による指導体制への対応を含む個別最適な学びと協働的な学びを実現する施設環境の整備(例えば教室サイズ、教室用家具等、学校図書館等の環境整備など既存の学校資源の活用促進、教職員のためのICT環境の整備や作業空間の充実等)、多様な学習活動に対応する施設環境の整備(オープンスペース、個別学習スペース、校舎、体育館等)、新しい生活様式を踏まえ、健やかに学習・生活できる環境の整備(空調設備とトイレ改修等)、人口動態等を踏まえた効率的・効果的な施設環境の整備、克服すべき課題等だとしている。


 また関連する資料では、公立小・中学校の普通教室の基準面積は74u(昭和48年以降)だが、平均面積は64uにとどまっており、約7割の教室が65u未満で、75u以上の教室は全体の3%にすぎないこと、ただし国が一律に定めているわけではないため、各自治体の判断でこうした状況となっていることが説明された。


 このほかGIGAスクール構想で児童生徒1人1台のタブレット等の環境整備がされたが、旧JIS規格の机と一回り大きい新JIS規格の机の使用状況はおおむね半々の状況だが、ICT活用時に旧JIS規格の机について約8割の学校は支障を感じており、新JIS規格の机の方がより多くの教材等を同時に活用していることを明らかにした。学校施設の在り方については基本的に公立学校を念頭に置いたものだが、私立学校でも校舎の改築等に参考になるもので、この日示された文科省の関連資料の中には私立高校の教室プラン例も紹介されている。


 この後、委員からの発表が行われ毛利靖委員は自身が校長を務める、つくば市立みどりの学園義務教育学校でのICT機器や良好な通信ネットワーク環境の中で21世紀スキルを育成する教育を展開している様子を多くの写真等で紹介。また奥田泰彦委員(備前市教育長)等は、同市の進めるフューチャールームの実践、ICT機器、ソフトの整備状況等を、さらに倉斗綾子委員(千葉工業大学創造工学部デザイン科学科准教授)はフレキシブルな広いオープンスペースが教室に連続したオープンプランの学校例等を紹介、改修モデル教室のコンセプトとしては、窓面以外の全ての壁面を板書面として使える方向性のない教室、レイアウト変更しやすい家具・教室、音環境の改善等を挙げた。こうした発表に他の委員からは、「これからはグループワークの際のテーブルの方が大型ディスプレー、黒板より重視されていく気がする」「黒板での板書は常に残したいことを書いている。複数のディスプレーがあれば代用できるが……」「グループワークの机には横に引っ掛けがない。掃除のとき重い机をどう動かすのか」「先生よりユーチューバーの授業の方が分かりやすいと言われる。しかし子供一人一人の学びに着目すると結果として各人の目標を設定して、能力を伸ばしていくことに行き着く」「子供が作った作品が日常的にデジタルサイネージのように公表されることが大事」「既存施設の活用が最も大切。学校施設の長寿命化(80年使用)の目標を掲げている」といった意見が聞かれた。

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