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記事2021年3月23日 2539号 (2面) 
教育データの利活用に関する有識者会議
論点整理(中間まとめ)案了承
GIGAスクールの端末整備状況報告

 文部科学省の「教育データの利活用に関する有識者会議」(座長=堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授)は3月19日、WEB会議方式で第5回会議を開き、「論点整理(中間まとめ)案」について審議した。その結果、委員から出された意見に沿って一部文言を修正した上で、「論点整理(中間まとめ)」として近く公表することを決めた。修文については、堀田座長と事務局(文科省)に一任した。この日の会議は令和2年度最後の会議。同会議の委員の任期は令和3年度末まで。


 同会議は、一人一人の多様なニーズや特性等に対応して、全ての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向けた教育データの効果的な利活用を促進する方策を検討するため、令和2年6月に設置。これまでに5回会議を開催し、教育データの標準化、学習履歴(スタディ・ログ)の利活用、教育ビッグデータの効果的な分析・利活用等について議論を続けてきた。


 今回の中間まとめ案は、委員間で一致を見た方向性に加えて、議論の中で個別の委員から出された意見が盛り込まれているのが特徴。教育データの意義・目的(将来像の具体的イメージ)・原則、議論の枠組みからなる総論部分と、学校現場における利活用、ビッグデータの利活用、教育データの標準化、まとめから構成されている。学校現場における利活用が教育データの1次利用、ビッグデータの利活用が2次利用となる。


 その中で教育データの利活用の原則については、(1)教育・学習は、技術に優先する、(2)最新・汎用的な技術の活用、(3)持続可能性の確保(働き方改革への寄与)、(4)教育データの安全・安心の確保、(5)スモールスタート・逐次改善の5点を提示している。ただし委員から表現が分かりにくいとの意見もあったことから表現ぶりが変わる可能性もある。またデータの利活用の中心となる受益者は学習者(保護者を含む)としている。


 さらに教育データの定義で、主体は(1)児童生徒(学習者)に関するデータ(学習面:学習履歴/スタディ・ログ、生活・健康面:ライフ・ログ)、(2)教師の指導等に関するデータ(アシスト・ログ)、(3)学校・学校設置者(地方自治体等)に関するデータ(運営・行政データ)とし、対象についてはテストの点数等の定量的データだけでなく、成果物や協働学習の状況、教師の見取り等の定性的データ(数値として表せない質的なデータ)も加えるとしている。 


 公教育データについては、学校での学びに加えて家庭において児童生徒が行う宿題や課題等も含むとしている。一方で学習者個人が学校外や卒業後に活用するデータは、個人による選択の上で任意で活用するもので、両者の利活用方法や仕組みが大きく異なるため、区分して検討する必要があると指摘。学校外のさまざまな主体とのデータの受け渡し等については政府全体で検討を深める必要がある、としている。


 この日の会議では委員の梅屋真一郎・株式会社野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長が簡単な発表を行い、中国ではAIとビッグデータを活用したEdTechが急速に普及しており、学校の宿題をスマホで撮影すると、宿題を解答、返信してくれるアプリが類似の練習問題まで提供してくれ(無料)、さらに有料だが講師による解説を希望することもできるサービスが地方都市を中心に広がり、利用者数は1億7千万人に上り、既に2千億円以上の出資を受け入れていると説明。また、ある日突然、日本でもこうしたサービスが誕生し、教育データが公教育の外側で構築される可能性もある状況等を説明した。 


 また、文科省からGIGAスクール構想の端末の整備状況等も報告されたが、委員からは端末の児童生徒の家庭への持ち帰りに関して「自治体の姿勢がバラバラだと感じている」、「保護者に端末の持ち帰りに関するルールや同意書が届いており、端末の活用に対するテンションが下がっている。何のための端末持ち帰りかが伝わっていない」などの意見が出された。 


 文科省は「端末持ち帰りのルール作りを要請している。準備が整っていないのに無理に持ち帰らせることは好ましくない」と語った。


 教育データの活用に関しては政府の教育再生実行会議も検討を進めており、今年9月に発足するデジタル庁との関わりも生じる。また公教育のビッグデータは教育政策等の改善に活用される以外でEdTechなど学校外の主体とどう関わるのか、排除するのか、連携するのか。教育データの受益者の中心である「学習者」(保護者を含む)のデータの保護と併せ、大きな課題といえる。


第5回教育データ利活用有識者会議

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