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記事2021年2月23日 2536号 (1面) 
大学入試のあり方検討会議開く
第21回 ウィズコロナ・ポストコロナ時代の入試のあり方議論
初の共通テスト実施概要の報告も

文部科学省の大学入試のあり方に関する検討会議(三島良直座長=国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)は2月17日、第21回会議をWEB会議方式で開催した。議題は、「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の入試のあり方」。会議に出席の萩生田文科大臣は、コロナ禍等で2次試験を中止して大学入学共通テストの結果と高校調査書で合否を判断する大学があることを取り上げ、臨機応変な対応に感謝しつつも、もう少し工夫の余地がなかったのか、との思いを明らかにした。


この日の会議では初めに独立行政法人大学入試センターの山本廣基理事長が2月14日までに試験が終了した初の「大学入学共通テスト」(令和3年度大学入学共通テスト)の実施概要を報告した。


その中では高校でのコロナ禍による学業の遅れに配慮して本試験を2回実施したこと、2回目の本試験は、例年の追試験の2会場での実施を大きく上回る47都道府県・64会場で行ったこと、新型コロナウイルス感染症対策を徹底したことなどを説明。コロナ禍の中での準備・実施という異例な事態にも拘わらず、受験者、大学・高校関係者の協力で大きなトラブルもなく無事に実施できたことなどを報告した。また大学入学共通テストにおけるCBT(Computer―based Testing)活用に関する検討状況を報告。文科省の審議会等の提言等を受けて共通テストにCBTを導入すること、CBTを活用して「情報T」を出題することが課題となっており、IRT(項目反応理論)等に基づく複数回実施についても提言されていることを指摘。共通テストにCBTを活用すると動画や音声など多様な方法での出題や回答が可能で、より正確で迅速な採点を実現でき、さらにIRTと組み合わせると試験日時の複数回設定が可能になるなど個人的・社会的リスクにも対応しやすいなどのメリットがあることを挙げたが、半面、全国的に均質で質の高い受験環境(パソコン、ネットワーク等)の確保、トラブルが生じた場合の対応体制の構築、「年に一度、同一の新作問題を用い、同一時刻に一斉で行われる」などの日本の試験文化の変更が社会に受け入れられるのかなどの課題があると説明した。同センターでは今年3月に大規模入学者選抜におけるCBT活用の可能性について報告書をまとめる予定。


この後、事務局(文科省)が既に公表済みの大学入学者選抜における英語4技能評価及び記述式問題の実態調査結果の中から学科系統分類別に一般入試・AO入試・推薦入試別入学者数を見るとばらつきが大きいこと、わが国でいかに英語教育が必要かを示した資料「総合的な英語力の育成・評価が求められる背景について」を提示。続いて同検討会議の川嶋太津夫委員(副座長)がウィズコロナ・ポストコロナ時代の大学入試等に関してこれまでの議論や実態調査等を踏まえて整理した論点「整理しておくべき事項(メモ)」を提示した。メモは、(1)令和6年度実施の入学者選抜に向けて、(2)入学時期・修業年限の多様化に対応した入学者選抜のあり方、(3)大学入学者選抜におけるデジタル化の推進、(4)総合型・学校推薦型選抜のあり方、(5)大学入学者選抜の実施・検討体制で構成されており、(3)のデジタル化の推進では、CBTの研究開発の加速、共通テスト出願の電子化、オンライン面接等の推進を挙げ、(5)の実施・検討体制では国による選抜区分ごとの入試実態調査の定期的実施・公表・分析、大学入試についての高校・大学等関係者間の協議体の設置(各年度の入試日程・方法等、共通テストの実施時期、高校会場の拡充の可否)を取り上げている。


こうした各種説明に、委員からは、「今年の受験生は振り回されてかわいそうだった。さらにコロナ禍のため2次試験をなくし、共通テストの結果と高校の調査書だけで判定することになった大学がいくつもある。これでいいのか」「秋入学の議論があるが、導入した場合大学入試は大混乱を起こしかねない」「各大学の入試のオンライン化の実施状況を調査してほしい。課題等の知見を共有したい」「今年の受験生は大変苦労した。大学は学生確保が予測できなくなっている。大学入試が複雑になったのは大学の定員の縛りが厳しいからだ。それを緩やかにすべきだ」「医学部、薬学部、獣医学部ではCBTは身近なもの。オンライン面接ができたキャンパスもあるが、回線が細くて難しかったキャンパスもあった。今ベンダーと協議している」などの意見が出された。次回の第22回会議は3月4日に開催予定。 


萩生田文科相 「電子出願避けて通れない」


 会議の最後に萩生田大臣が感想等を述べたが、その中で、「今年は特別なコロナ下での受験だったが、来年は元の日常に戻れるのか。ワクチン接種は始まったばかり。今年の良さはレガシーとして残したい。とにかく47都道府県で試験会場を開ける環境づくりが必要だ。個別試験を止めて共通テストと高校の調査書で判定する大学があるが、個別試験で逆転を目指す子供にとってはチャンスが奪われたことになる。個別試験を止めたのは考え抜いた上での判断なのか。例えば受験生に小論文を出させて、それに対して質問するということも考えられる。(先ほど意見のあった)私学では入試で定数を埋めることを優先することで歪んだ形が生まれている。この点も省としてしっかり考えたい。CBTについては考えない訳にはいかない。ただそれが正しい評価に繋がるかを大学入試センターには考えて頂きたい。スモールステップで考えていきたい。電子出願は避けて通れない。しっかり頑張っていきたい。小学校での35人学級、1人1台端末の実現で今までとは違う概念の教育が始まる。教員養成の仕組みそのものをしっかり見直していく必要がある。理科、算数、英語で専科教員を増やしていきたい。英語のALTにも限界があるので、英語の教員を目指す人を外務省と協力してアジア圏で日本語を教える先生として派遣、一年間海外を経験できるようにしたい。

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