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記事2021年2月13日 2535号 (3面) 
第4回教育データの利活用に関する有識者会議
同会議の論点整理案を文科省が提示
今年度中に中間まとめ取りまとめへ

 文部科学省の「教育データの利活用に関する有識者会議」(座長=堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授)は1月27日、WEB会議方式で第4回会議を開催した。


 この日は、(1)教育データの利活用に向けた最近の主な動向が事務局(文科省)等から報告され、意見交換した。続いて、(2)同会議の論点整理について同省が検討資料を提示、委員間で審議が行われた。その中で教育データの対象とするのは、初等中等教育段階の学校教育における教育・学習に関するデータで、主体は(1)児童生徒(学習者)に関するデータ(学習履歴・スタディ・ログ、生活・健康面)、(2)教師の指導等、(3)学校・自治体で、定量的データに加え、定性的データ(子供の成果物や協働学習の状況、教師の見取り等)も対象とする。


 原則としてはデータ利活用の目的は学校教育・公教育の質向上であり、システムやデータは手段(PedagogyFirst,TechnologySecond)。そしてできる限り最新の知見に基づき、国際的にも国内でも汎用性の高い技術を活用すること、多忙な学校現場においてできるだけ簡便に、効果が実感できる利活用が図られること、プライバシーの保護等を万全とし、安全・安心に利活用が図られる仕組みやルールとすること、スモールスタート・逐次改善を図ることを挙げている。


 また、活用の視点としては、現場実践目的(1次利用)と、政策・研究目的(2次利用)とでは1次利用の充実を急務とし、優先的に議論していくことが必要ではないかなどとし、その他ではビッグデータ利活用の在り方、標準化の在り方等の検討の必要性を挙げている。


  こうした提案に委員からは、「データのオーナーは学習者。フィンテックでメガバンクのデータが2次利用できるようになり民間企業でのデータ活用が活況となったように、教育データを民間の塾などにも持ち出せるといい。学校による学習データの利活用は入学の段階で学習者から許諾を得ればいいこと」、「データのオーナーというように考えない方がいい。誰がどう使うかを議論した方がいい。データの種類によって長期間保存を禁止するものもある。やってみないと分からない。スモールスタートが重要だ」などの意見が聞かれた。堀田座長は、「データの利活用は広範な分野に関わる話で、簡単にこうすべきだとは言えない。関係者が教育データの利活用は有益だと感じられるよう、文科省は考えるべきだ。自治体、民間の教育産業の協力も不可欠。そのため見通しをしっかり公表することが大事。令和2年度内に中間まとめを公表する。さらにメールで意見を寄せてほしい」と語った。次回に中間まとめを固める予定。


 一方、会議前半の(1)教育データの利活用に向けた最近の主な動向に関しては、文科省が昨年12月23日に決定したデジタル化推進プラン、GIGAスクール構想による1人1台端末の活用をはじめとした学校教育の充実、学校コードの必要性、GIGAスクールにおけるマイナンバーカードの活用の検討(学習者のIDとマイナンバーカードとのひも付け等、転校時等の教育データの持ち運び等の方策を2022年度までに検討し、2023年度以降、希望する家庭・学校における活用を実現できるように取り組む予定)。来年度の文科省によるデジタル教科書の実証事業等も報告された。


 このほか政府の教育再生実行会議の下に設けられているデジタル化タスクフォースの課題の整理案が報告され、今年3月末を目途とした検討を急ぐべき課題(個人情報の取り扱い、教育データの標準化等)と、中・長期的な課題(学習履歴〈スタディ・ログ〉等の利活用、教育ビッグデータの効果的な分析・利活用の推進等)等が示されているほか、社会全体のデジタル化でネックとなる自治体ごとの個人情報保護条例に関して、個人情報保護とデータ流通の両立に必要な全国的な共通ルールの法制化等の方向性が示されている。教育データの利活用に関する有識者会議の次回は3月19日。

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