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記事2021年2月13日 2535号 (1面) 
教員免許更新制、見直しへ
中教審教員養成部会、次期へ申し送り
教育関係団体 負担感など厳しい評価
教員の資質能力確保との折り合い模索へ

中央教育審議会初等中等教育分科会の教員養成部会(部会長=加治佐哲也・兵庫教育大学長)は、2月8日、WEB会議方式で、第10期最終の第121回部会を開いた。この中では次期教員養成部会への申し送り事項として、「教員免許更新制や研修をめぐる包括的な検証について」と題する、A4版15ページの文書が事務局(文部科学省)から示された。同文書は教育関係団体等から意見聴取した内容をまとめたもの。その中で教員免許更新制については、「効果は限定的」、「自らのニーズに合った講習よりもとにかく受講しやすい講座を選んでいる」、「受講時間の捻出や申し込み手続き、費用、居住地から離れた大学等での受講による負担感」、「退職教師を臨時的に任用教員として活用する困難さ」、「講習開設者側でも講習を担う教員の確保や採算の確保等に課題を感じている」等厳しい評価を与えている。


同文書では、そうした厳しい評価を紹介しながら、今年3月にも始まる第11期教員養成部会に向けて、第10期で行った包括的な検証と整理に加え、令和3年度に明らかになる教員免許状の有効期限延長の状況、臨時免許状の授与の状況などの各種データに基づきながら、新型コロナウイルス感染症の影響下で子供たちの学びの保障に注力する教師や迅速な人的体制の確保に及ぼす影響の分析を行う必要性を指摘。第10期教員養成部会の検証で明らかになった課題については現場の教員の認識と一致しているのか、一定規模の調査を令和3年度速やかに行うこと、また文科省が実施中の講習を開設している大学の調査、教員免許状を所持しつつも民間企業に勤務する者等の調査結果を踏まえ、教員免許更新制や研修をめぐる包括的な検証を早急に完了する必要があるとしている。


 その検証が完了した後は、教員養成部会で教員免許更新制や研修の在り方について速やかに見直しを行う必要性を強調。


 第10期のヒアリングでは、教育委員会関係者や校長会関係者から共通して、▽30時間を2年間で受講する仕組みの見直し(例えば5年間とするなどの柔軟性の向上)、▽個々の教師の勤務実績や研修受講歴等を踏まえた講習の免除対象者の拡大、▽免許状失効者に対する臨時免許状授与に関する運用の柔軟化、▽講習のオンライン化の促進などの改善策が提案されていたことも挙げて、教師の資質能力の確保、教師や管理職等の負担の軽減、教師の確保を妨げないことのいずれもが成立する「解」を見出さなくてはいけない、としている。


  この日、こうした文科省による検証結果報告に委員からは、「緊張感ある研修には賛成。ただし10年ごとの免許更新ではなく、一度だけの更新でもいい」、「今までの研修履歴のデータベース化についても議論を願いたい」、「大学にとって(更新講習の提供が)サービスではなくメリットがあるように整理されるといい。特に事務サイドには。構造の改革を」、「教員の人材不足、大量退職。(教員免許更新制は)マンパワー活用の妨げになる。この点を考えてほしい」などの意見が出された。


 第121回教員養成部会では、このほか、(1)令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況、(2)国立の教員養成大学および国私立の教職大学院の令和2年3月卒業者及び修了者の就職状況、(3)『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プランなどが事務局から報告された。このうち(1)に関しては、公立小学校では採用者数が大幅に増えていることもあって採用倍率が2・7倍の過去最低となったこと、教員採用試験に再チャレンジする者が減少し、民間企業を選択する者が増加していること(以上、いずれもコロナ禍以前の状況)が報告され、(2)に関しては、国立の教員養成大学・学部卒で教員に就職する者の割合が前年度と比べ微減し、64・4%となったこと、国私立の教職大学院修了者の教員就職率は前年度より4・1ポイント上昇し95・4%の過去最高となったことなどが紹介された。


 また(3)に関しては、委員から「1人1台端末が導入される教育環境の変化を踏まえ、教師のICT活用指導力を一層向上させる、とあるが、タブレットが活用できるのは数年の短い期間。教師がどうやってデジタル化を進める力を付けるのかは喫緊の課題だ。また教師でないとできないことを急ぎ検討していくべきだ」といった意見が聞かれた。そのほか「教員の大切さや魅力が若い人に伝わる方策を考えたい」、「教員養成課程で習っていないことに、現在、教員は立ち向かっている。教職の魅力が認知されるよう頑張りたい」、「多様な人とチームとして動くことを養成段階で学んでほしい」との意見も出された。


 こうした意見は、第10期の教員免許更新制等に関する検証結果とともに、第11期教員養成部会に申し送りされる予定。  このほか、第121回教員養成部会ではこうした報告・審議に先立ち、教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定に関する審査が非公開で行われ、審査結果が文科省に答申された。

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