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記事2021年12月3日 2563号 (1面) 
学校法人ガバナンス改革会議
第11回会議で報告書まとめる
報告書通りの法制化、強く文科省に迫る
改革会議 国民からの意見募集を拒絶

 文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本公認会計士協会相談役)の第11回会議が12月3日、対面とオンラインの併用で開かれ、「報告書案」が審議され、一部文言の修正等を行った上で「報告書」とすることを決めた。


 しかしその後、事務局(文科省)のパブリックコメント(国民からの意見募集)を行いたいとの提案に、増田座長は、「最初にそんな話はなかった。ヒアリングを十分にやっているのだから必要ない」と強く拒絶。


 また委員の一人は文科省の私学部長等に対して、国民から意見を聞かず、行政は報告書通りに法制化し、政治に投げるべきだと強く迫り、事務方が返事に窮するような緊迫した状況となり、文科省の検討会議や審議会では見られない異様な光景となった。


 増田座長はパブコメを拒絶する理由にヒアリングを十分に行っていることを挙げたが、私学団体の代表の意見発表時間は1団体わずか5分、増田座長は当初、利害関係者から意見を聞くべきでないとの考えだった。


 同会議の委員は当初から文科省(事務局)に信頼を寄せていなかったのか、審議内容の整理や報告書骨子案等の作成を座長、副座長(2人)等で取り仕切っていた。報告書作成に不慣れで、教育の現状等に詳しいわけではないためか、報告書案はわずか11ページ。その中で中核となる新法人制度の改革案(新たな学校法人の機関設計)の基本的理念については十分な説明(記述)はなく、「ここ数年日本の大学の国際的評価のさらなる低下が続き、優秀な教授陣や学生の海外流出、海外からの教員、研究者、留学生の減少、教育の大半が日本語のみで提供される中、教育・研究の劣化が懸念され、大学進学希望者の大幅な減少等により学校法人を取り巻く経営環境が大変厳しく、学校法人の経営は大胆、機動的に実行されることが求められ、そのためにはガバナンス改革が必要だ」との論旨だ。


 学校法人の経営が大胆かつ機動的に実行されることが必要としているが、日本私立大学連盟は、学内関係者を一切排除した評議員会が最高議決監督機関となると迅速な判断は難しくなることなどを同改革会議のヒアリング等で訴えたが、そうした疑問の検討は行われず、報告書案では教育・研究の劣化と現行のガバナンス体制がどう関係しているかの記述もない。


 報告書案の主要な部分となっているのが、(1)評議員・評議員会の権限等、招集、選任・解任、適格基準、任期、員数、義務、責任、(2)理事・理事会の選任・解任、適格基準、任期・員数、権限、義務等、理事会、理事長、(3)監事の選任、解任、適格基準、任期、権限、義務等、(4)会計監査人、(5)内部統制システム、(6)事業活動実態に関する情報開示、(7)定款等その他の事項、(8)規模等に応じた取り扱い。


 このうち評議員会の議決を要する事項は、理事・監事、会計監査人の選任・解任、中期計画、事業計画、予算・決算、多額の借財、重要な資産の処分、役員に対する報酬額(定款で額を定めている場合を除く)、寄附行為(定款)変更、合併や解散、重要な保証等としている。評議員の任期は理事の倍以上、最低員数は3人以上であり、評議員は善管注意義務、法人および第三者に対して損害賠償責任を負うなどとしている。


 また理事長については理事会が選定・解職すること、理事長は、3か月に1回以上、事故の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない、としている。


 規模等に応じた取り扱いについては、報告書骨子案の段階(前号で既報)から大きな変更はなく、大学、短大、高専を設置する学校法人は学生数にかかわらず改革案の全事項が適用され、都道府県知事所轄学校法人についても大半の事項は適用の方針で、会計監査人の設置など一部の事項については規模を考慮した取り扱いとする方針。


 各機関に関する定めの内容の相当部分は一般社団法人および一般財団法人に関する法律における規律内容に倣ったもの、としている。改革会議では、ガバナンスに多様性はない、共通の型があるのみとの発言がしばしば聞かれたが、最初の段階から「ゴール」が決まっていたのであれば、第1回会議で増田座長が次回にたたき台を示すといったことも理解できる。

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