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記事2021年11月23日 2562号 (1面) 
評議員会が最高監督・議決機関 報告骨子案を公表、来月取りまとめへ
学校法人ガバナンス改革会議
評議員会に強い権限
知事所轄法人でも大半の改革案適用の方針

 文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本会計士協会相談役)は11月19日、第10回会議をオンライン等で開催し、報告書骨子案について審議した。12月3日開催の第11回会議で報告書を取りまとめる予定。第10回会議の模様は同会議がスタートしてユーチューブで初めてライブ配信された。この日示された報告書骨子案は、増田座長、八田進二・松本美奈両座長代理、久保利英明委員、座長の法律アドバイザー(弁護士)が作成したもの。


 前書きに当たる「1.ガバナンス改革設置の経緯、趣旨」に関してはわずか18行。冒頭に学校法人に関する不祥事案が続発していることを挙げて、社会福祉法人等と同等のガバナンス機能を発揮との記載が2カ所あるなど、社会福祉法人等と同等のガバナンス機能の実現に強くこだわったこと窺わせる内容となっている。しかし同会議が改革の柱に据えた評議員会を最高監督議決機関としたことの理由や、私立学校の最大の責務というべき研究や教育と今回のガバナンス改革がどうかかわっているかなどについては全く記載がなく、改革案の肝である「2.新法人制度の改革案(新たな学校法人の機関設計)」に関しては簡単な箇条書き程度で、どうしてそうした改革案を採用したのかといった同改革会議の考えを汲むことはできない。


 通常、こうした会議体の報告書案は事務局(文科省)がそれまでの委員の意見等を反映して作成しているが、今回は、同改革会議が利害関係者は排除するという強い意向から文科省の関与も最低限のものとなり、報告書案を見ても理解しにくいものとなり、また教育現場の実情をほとんど顧みない内容となっている。


 具体的改革案では、評議員会を最高監督・議決機関とし、理事、監事、会計監査人の選・解任、中期計画、予算・決算、借入金、重要な資産の処分、役員の報酬等の基準、寄附行為の変更(寄附行為は「定款」に名称変更する)、合併や解散、重要な保証等、その他学校法人の経営に関する重要な事項は、評議員会の議決を要する、としている。


 また理事会・理事による評議員選任・解任は認めないとし、評議員の任期は理事の倍以上、評議員の最低員数は3人以上としている。理事長は評議員会が解職できる(基礎資格の理事の解任)としており、そのほか報告書骨子案では監事の権限等を記載している。


 このほか情報開示に関しては、事業報告書の統一様式、計算書類の作成基準、開示基準、開示場所等の事項は、別途設置する委員会または同改革会議の分科会において検討すべきである(検討組織は、日本公認会計士協会等の公的な機関を中心に、当事者でないメンバーで組成し、私大関係者などの当事者からはヒアリングにとどめるべきである)としている。


 報告書案の最後には、私学関係者の関心が高い「規模に応じた取扱い」が記載されており、大学・短期大学・高専を設置している学校法人については、例えば学生数200人程度の短大、学生数数万人の大学も同列に扱い、新法人制度の改革案をすべて適用すると定めている。


 高校以下の知事所轄法人も大半の改革案を原則適用するとし、会計監査人の設置、情報開示については一定規模以上の学校法人に適用するが、その後の状況で適用範囲の拡大も検討するとしている。こうしたことから公認会計士の委嘱等で経費増を懸念する声が私学関係者から早くも上がっている。


 こうした報告書骨子案について、この日、委員からは、「教学のことに触れていない。学校関係者に不安を与え、批判を受ける可能性がある」「評議員をなぜ中核に据えたのか、基本的な考え方を前書きのところにまとめた方がいい」「教学のことについて簡単に書ければいいが、大議論になると報告書がなくなってしまう」「文科省がもう少し関与(監督)するべきだと思う。文科省に与える権限を文科省が考えてほしい」「不祥事があるからこれ(改革)をやるでは違和感がある。不祥事のないところは感情的になる」「不祥事がない法人も発見できていないだけで潜在的に(不祥事の)可能性がある」といった意見が聞かれた。


 また私学関係者から私学での不祥事が果たしで他の分野と比べて多いのかといった意見が出されたが、委員からは「不祥事の数は多いのか少ないのかは主観の問題だ」といった意見も聞かれた。


 同会議は報告書をまとめた後、ガバナンスコードについて検討する予定だが、「私的団体(私大団体)が作ったガバナンスコードではなく、文科省作成がいい」といった意見が多く聞かれた。


第10回改革会議

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