こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2021年11月13日号二ュース >> VIEW

記事2021年11月13日 2561号 (1面) 
特定分野に特異な才能のある児童生徒支援会議
ウェブアンケート結果報告
実情と課題の一端明らかに

 「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」(座長=岩永雅也・放送大学学長)の第4回会議が11月1日にオンライン形式で開催された。会議ではまず、特定分野に特異な才能のある児童生徒、その保護者、教師、支援団体の職員などを対象に、8月から9月にかけてウェブ上で行ったアンケートの結果が文部科学省から報告された。


 アンケートは、(1)具体的な特異な才能の内容、(2)学校で経験した特異な才能を有することに伴う困難、(3)学校内外で受けた効果的な才能への支援、(4)国・学校・教育委員会に期待する支援、を自由記述で尋ねた。


 松村暢隆委員(関西大学名誉教授)はアンケートを分析し、その結果を報告した。808人から回答があり、IQ130以上、数学年上の学習など突出した才能を記載した人は約半数を占めた。2E(二重に特別な教育ニーズがある)の小学生・幼児は3割近く見られた。困難については、学習面では授業が簡単すぎて退屈、反復学習が苦手でストレスから吃音(きつおん)などがあり、対人関係では仲間と話が合わない、いじめなどが挙がった。


 学校での対応は、教師による才能特性の無理解、問題児扱いなど、否定的な点が多く挙げられたが、約1割が個別の配慮・宿題など才能への支援があった、と回答している。また3割近くに不登校に関する言及があり、対応が必要になってくると思われる。ギフテッド保護者団体からも多く回答が寄せられ、支援に関心が高まっていると推察できる、とした。


 続いて特異な才能を持つ子供たちへの支援の二つの実践報告があった。


 福本理恵委員(株式会社SPACE代表取締役)は、2014年から始まった不登校の子供の異才発掘プロジェクト「ROCKET」について話した。プロジェクトで選ばれたスカラー候補生の関心領域は芸術、サイエンス、数学、歴史、ロボットなど多岐にわたり、芸術系が4分の1以上を占めた。


 子供たちの認知特性や学び方の指向性によって学ぶスタイルも異なるため、提供するプログラムは、子供たちの特性で分類した複数の枠組みの中で用意し、日本の61市町村、海外14カ国で約370のプログラムを合宿形式で実施した。


 福本委員は「発達特性や興味の偏りの強い子供たちへの対応には予算の確保、研究施設や博物館などの専門機関との連携、教育、心理、医療・福祉の専門家との日常的な連携が必要」とした。


 中島さち子委員(株式会社steAm代表取締役)は、STEAMにより創造の喜びを得られるプログラムについて発表した。経済産業省の行う「未来の教室実証事業」の中で、大分県の高校で初心者にsteAmが行ったプログラミング講座では、生徒が没頭し、個性ある作品を仕上げたこと、個性の発揮が喜びになり、さらに自分と違う視点があることで新しい気づきがあった、と報告。


 中島委員はギフテッドの子供たちについて「コミュニケーションがとれないなど、変わった人と見られ、生きづらさがある。しかし特異な存在でなく、誰もが違いがあり、その違いをポジティブに評価できるような議論を今回の会議でできればいい」と話した。発表後に学び方の多様性に社会的な歯止めは必要か、保護者へのケア、学校以外での学びの場の提供などについて意見が交わされた。最後に岩永座長から「学校を悪者にしないで意識改革を進めていくことが大切。特異な才能のある子供への対応を教員養成の段階で学ぶことは必要となるだろう。特殊な議論ではなく、日本の学校教育全般での議論としたい」と締めくくった。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞