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記事2021年10月3日 2557号 (1面) 
通信制高校の在り方で調査研究協力者会議発足
高校として適切な水準の担保へ
所轄庁の設置許可の在り方等検討

 文部科学省に「『令和の日本型学校教育』の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議」が発足し、第1回会議が9月28日、オンラインで開かれた。


 通信制高校、特に広域通信制高校を巡っては、しばしば一部の学校の不適切な運営が表面化、同省の調査でも問題点の洗い出しやガイドラインの策定等が行われてきた。今年3月には、文科省の中央教育審議会答申(令和3年1月)や「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」の審議まとめ(令和3年2月)を受け、教育課程の編成・実施の適正化やサテライト施設の教育水準の確保および主体的な学校運営改善の徹底に向けた省令等改正が行われた。


 しかし審議まとめで引き続き議論が必要とされた全日制・定時制・通信制課程のそれぞれの意義や役割の捉え直し、また今年6月、政府の教育再生実行会議の第12次提言でも対面指導の重要性や通信教育の質保証の観点等を踏まえた全日制・定時制・通信制の区分の在り方の検討を求められたため、調査研究協力者会議を設置して検討を行うもの。開催期間は令和5年3月末日まで。


 座長は荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長、座長代理は日永龍彦・山梨大学大学教育センター教授で、共に通信制高校問題の検討に長年関わっている。委員は座長等を加え12人、その中には、通信制高校教育に携わり、現場を知る東海大学付属望星高校長、NHK学園高校長、神奈川県立横浜修悠館高校長、太平洋学園高校長、島根県立宍道高校長等が参加している。


 また検討課題としたのは、(1)全ての生徒が「自学自習」できることを前提とするのではなく、通信制高校の現在の実態を踏まえた通信制高校の新たな学習形態。その際、子供たちの知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」を通信制高校においても確実に実現し、高等学校として適切な水準を担保すること、(2)所轄庁の圏域を超えて設置される広域通信制高校およびサテライト施設にふさわしい所轄庁の在り方、所轄庁の設置認可基準の在り方や所轄庁間の連携の在り方、国と地方との適切な役割分担、通信制高校設置後に組織運営や教育研究活動等の状況を定期的に事後確認するような仕組み、第三者による評価を促進する方策。


 通信制高校のうち特に広域通信制高校は、制度的な問題もあり行政のチェック等が及びにくく、そうした脆弱な行政で認可を受け、東京や大阪などの大都市で生徒を募集するなどするケースがあり、平成2年から20年間に私立の生徒数は2倍以上に増加、一方、ほとんどが狭域(募集範囲がごく限られる)公立の通信制高校の生徒数は半減している。同じ通信制といっても狭域は広域に比べひとり親家庭の生徒が約1・4倍。特別な支援を必要とする生徒が約4倍、心療内科等に通院歴のある生徒は約2・3倍と、より厳しい環境に置かれている生徒が学んでおり、極めて複雑多様な実態となっている。


 また通信制高校ながら、半数以上の生徒は何らかの通学型コースを利用(公立は4分の1程度、学校法人は7割程度、株式会社立は半数強)し、学校法人・株式会社立の学校における提携通学コースの場合、約7割の生徒は週5日の登校コースを利用している。


  こうした文科省の説明や提案に、委員からは、「全日制よりも通信制の方が個別最適な学びができるのではないか」、またギフテッドの生徒のへの対応に期待する意見も聞かれたが、荒瀬座長は「共通して絶対に譲れない面がまだ十分に行きわたっていない。現状に立脚した議論をしたい」などと語り、生徒の一人一人がしっかりと学んで力をつけて卒業し、幸せを掴めるようになることの大切さを語った。


 このほかの通信制高校長の委員からは、組織的なサポートを求める声が複数上がり、生徒の状況等を見極め、通信制課程(週1回通学)から登校ができるようになり、同じ高校内の定時制課程に移るなど柔軟に単位認定している事例等が報告された。同協力者会議の次回会議は10月26日の開催。


通信制高校の在り方調査研究協力者会議の初会合

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