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記事2021年10月3日 2557号 (1面) 
学校法人ガバナンス改革会議
第5回 私学団体から意見聴取
改革会議“私学の不祥事頻発ぜい弱なガバナンスのせい”

 学校法人のガバナンスの強化を目指し文部科学大臣の直属の機関として7月に初会合を開いた「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本公認会計士協会相談役)は9月9日、第5回会議をオンラインで開催した。会議の傍聴はできず、会議の模様は同22日にYouTubeで公開された。この日は前半が私学関係団体からの意見聴取で、1団体5分、その後意見交換が行われたが、私学団体からの意見表明は重要事項に絞られ、学校法人の活力を生かすガバナンス改革への要望等は委員にはあまり受け入れられなかったようだ。


 私学団体代表からのヒアリングに先立ち増田座長は、直近の日本大学への強制捜査等を挙げて、「学校法人の不祥事が相次いでいる。ガバナンス体制がぜい弱で制度設計に問題がある。学校法人を守るためにガバナンスの強化が必要で、今後の発展を願っての改革だ」などと力説した。新聞等に取り上げられる不祥事は教育界に限った話ではない。ガバナンス体制が整っていると思われる大企業でもこれまで数多くの不祥事が報道されている。


 例えば学校法人の不祥事の発生頻度が経済界と比べて群を抜いて高いのならば制度面の問題も考慮すべきだろう。しかしそうしたエビデンスは座長からは示されなかった。


 意見発表では、初めに一般社団法人日本私立大学連盟の村田治副会長が意見発表した。その中では社会福祉法人等との同一化ではなく、学校法人のガバナンスの何が問題で、問題を解決するために取り組むべき課題は何かを明確化し、学校法人関係者との共通認識の深化によって実質的なガバナンス改革を推進していくことが重要で、最高監督・議決機関とする評議員会に学内者を入れないとことは大学改革のスピードの低下につながる問題点等を指摘した。


 続いて日本私立大学協会の水戸英則常務理事が意見発表し、学校法人と一般社団・財団法人等とは組織形態、使命・目的、歴史的経緯等が異なるほか、設立時のハードルの違い(学校法人は非常に高い、一般社団法人等は比較的低い)もあり、学校法人制度の管理運営を一般社団・財団等の他制度と同じ法律の枠内で議論することには問題が多く、ここに最大の無理があり、学校法人の社会への貢献度に悪影響を及ぼす危惧があると指摘。その上で評議員会・評議員の職務等に関して同協会の提案等を説明した。


 その後、日本私立短期大学協会の麻生隆副会長と川並弘純常任理事が意見を述べ、文科省に対して一般企業や公益法人、社会福祉法人等の実態調査を行い、現行制度がガバナンス機能の向上に寄与したか統計的に検証した上で実態に即した法整備を要請。また学校の規模はさまざまで、全ての学校法人、準学校法人への適用を考えるべきだなどと指摘した。


 日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長)は都合がつかず、ヒアリングを欠席したが、事前に提出した意見書では、規模や活動エリアが大きく異なる大学法人と中高法人を一律的に取り扱うことは現実的ではないことを指摘。また学校法人のガバナンス改革に当たって一律的に「あるべき論」のみを追求するのではなく、学校法人それぞれの現実に鑑み、あるべき姿と実情との折り合いをどのように付けるかという観点からの検討を要請した。


  日本私立小学校連合会の重永睦夫会長は、評議員会を理事会の諮問機関からチェック(監視)機関へと改め、理事会と(対立構造)に移すことに反対を表明。また各役員・各評議員の親族・特殊関係者については評議員への就任を禁止すべきだとの整理については、親族・特殊関係者は建学の理念を熟知する存在だとして、役員の独占に対しては、現行制度で十分対応できることなどを説明した。


 全日本私立幼稚園連合会は四ツ釜雅彦副会長が意見を述べたが、幼稚園の規模や特性が大学を設置する学校法人とは異なっていることに十分留意するよう要請。具体的な検討が進められるに当たっては幼稚園に詳しい関係者も巻き込んで丁寧に議論するとともに、幅広い規模の設置者が共通に理解し取り組めるものとなるようにすることが必要だ、などとした。


 全国専修学校各種学校総連合会は福田益和会長が、準学校法人に関しては私学助成がない中で新たな財政負担を伴うガバナンスの強化を行うことは逆に準学校法人の経営を揺るがしかねないなどと指摘した。


 こうした意見表明に改革会議の委員からは、「大学大学院の教育研究レベルが劣化し続けている。我が国の教育の質が低いのはガバナンスのせい」との意見が出されたが、具体的なエビデンスは示されなかった。また「やるべきことをきちんとやっていない理事長が解任されないことが大きい。プレシャーをかけることが大事だ」「評議員会に与える権限はかなり限定した権限だ」「幼稚園団体では4億円を超える使途不明金の不祥事が起きている。将来について真摯に考えるべきだ」などの意見が聞かれた。


 一方、私大関係者からは、「(教育研究の問題が)ガバナンスで解決するとは思わない。評議員会に権限を与えることで教育の質が上がるとは思えない。高等教育の在り方の根本的議論が必要だ」などの意見が出された。


 ヒアリング終了後は、前回の第4回での議論の整理が一覧表の形で示された。議論が前に戻らないように現行(私学法)、委員の提案、意見、合意事項を評議員会の役割、権限、義務・責任、適格基準、選任方式、解任、任期、人数に関してまとめたもの。また第5回で議論する理事会・理事について主な論点を整理した表も示された。


 委員からは改革案と教育現場とのギャップが大きいので、私学関係者とコミュニケーションをとって、現場が改革に前向きになるよう努めてほしい、といった意見も出された。


 理事会・理事の論点に関しては時間の関係で十分議論できなかったが、「校長が理事になる制度は止めるべきだ」といった意見が出された。


 次回の第6回は9月22日開催だが、10月3日現在、会議の模様はまだYouTubeで公開されていない。この回では全国知事会から私立学校の所轄庁として意見を聴取することにしている。


第5回学校法人ガバナンス改革会議

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