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記事2021年10月13日 2558号 (1面) 
学校法人ガバナンス改革会議
第6回 東京都私学部から意見聴取
改革への懸念伝えるも委員反論

 学校法人ガバナンス改革会議(座長=増田宏一・日本会計士協会相談役)は9月22日、WEB会議方式で第6回会議を開催した。リアルタイムでの会議の傍聴は認めず、審議の模様は10月12日にYouTubeで公開された。 


 第6回では、初めに同会議の二人の座長代理、八田進二・大原大学院大学教授と松本美奈・ジャーナリスト・一般社団法人Qラボ代表理事が作成した、「第6回論点」が説明され、意見交換が行われた後、全国知事会経由で同会議からガバナンス改革についての意見表明を依頼された東京都生活文化局私学部の伊予浩暁・私学行政課長が私立学校の所轄庁としての意見を発表した。


 東京都からの意見発表や問いかけに対しては複数の委員が次々と反論。弁護士の委員からは「監事、理事会に評議員会を加えた三権分立の方が抑止効果は高く、世界の民主国家は人類の英知である三権分立を使っており、型として常識。一つ一つにエビデンスを求めるには無理がある」などの意見も聞かれた。


 同会議は社会福祉法人等と同等のガバナンスを学校法人にも適用することを目指しているが、その社会福祉法人のガバナンスの制度がどの程度機能しているかは改革会議では承知していないようで、増田座長も社会福祉法人の不祥事の発生状況については「わからない」と回答した。


 会議の前半に行われた前回の第5回会議での私学団体のヒアリングやその後の委員による審議を反映した「第6回論点」についての意見交換では、八田委員が私学団体からの意見聴取に関して、「現状維持を求める意見だった」と総括。また第5回会議の前日に日本大学への強制捜査が行われたことがマスコミで報道されたにもかかわらず、その問題についてどの私学団体も言及しなかったことについて「(私学関係者は)社会の認識とズレがある」と断じた。


 その後の委員による意見交換に関しては「第6回論点」では、「一番の問題は、ファミリー企業の世襲である。世襲させるための手続きを寄附行為に組み込んでいる。これを多様性といっているが、そうではない。建学の精神や創始者の意思が孫まで継承されるというロジックを崩すための論理を丁寧に検討するべきだ」といった意見や、またある学校法人の理事長から「ガバナンス改革は応援する。代わりに一定の規制緩和をお願いしたい」との意見をもらったとの委員の意見等を掲載している。ガバナンス改革会議はガバナンスの改革と引き換えに規制緩和を求める意見をどう考えてこうした意見を論点に加えたのかの狙いは不明。その後、松本委員が理事会・理事の論点整理を報告した。松本委員の報告を受けての意見交換では委員から「もう少し前倒しして改革会議がこうしようとしているとのメッセージを(私学関係者に)出した方がいい」「監事の常勤化を義務付けることには慎重さが必要。監事の教育訓練の機会が必要」「監事がきちんとすべきことを例示すべきだ」などの意見が出された。


 その後、文部科学省から学校法人のガバナンスに関する都道府県私立学校主管部局に対するアンケート結果や都道府県知事所轄法人に対するアンケート結果が報告された。前者の調査結果では、今年3月に公表された改革会議の前身の学校法人のガバナンスに関する有識者会議の取りまとめで挙げられた役員の選解任の在り方や評議員のあり方についてはその他の項目と比べて比較的多くの懸念が都道府県から示された。また後者の調査では財務書類についてはより細かく開示するようになってきていることなどの私立学校の実情が報告された。この調査の対象は目下知事所轄法人の3割弱だが、引き続き回答を受け付け中で、今後、調査対象の学校法人は増える見通しだ。


 会議の最終盤に東京都からの意見表明があり、東京都からは事業の目的や設立のハードル等が全く異なる社会福祉法人等のガバナンスの仕組みを学校法人に同様に適用することは、私学の自主性、独自性に重大な影響を及ぼす懸念があることや、更なる改正を行うのであれば、令和元年度改正の効果を十分に検証した上で、内容を検討するべきだなど、4項目(別掲参照)について意見を述べた。また、東京都の伊予課長は、社会福祉法人では近年どの程度の不祥事が生じているのか、学校法人と比較して検討しているのかなど、エビデンスの提示が必要だとしたが、前述のように委員は一斉に反論。東京都からの評議員の人材確保の難しさを指摘した意見に対しても八田委員は、「われわれは一桁の評議員数を考えている。なり手は十分にいる」との回答。これに対して東京都の伊予課長は、「人数を減少するから確保はできる、というのは机上の空論。理事との兼職禁止、学校職員の就任制限等で、基本的に外部の人を評議員するのは難しい」と反論した。


 また、社会福祉法人等と同等のガバナンスに改革してかえって(私学校法人の運営等が)悪くなることはないのか、との疑問を投げ掛けたが、委員側から明確に「ない」との回答はなかった。


第6回学校法人ガバナンス改革会議

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