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記事2020年8月3日 2518号 (1面) 
中教審第118回教育課程部会を開催
個別最適化された学びで意見発表
検討する上での論点など提示

 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(部会長=天笠茂・千葉大学特任教授)の第118回会議が7月27日、文部科学省でウエブ方式と対面方式の併用で開催され、会議の模様がインターネットでライブ配信された。この回の議題は、「個別最適化された学び」と「教育課程部会等におけるこれまでの検討の状況」―の2点。


 最初に、奈須正裕委員(上智大学教授)が「個別最適化された学びについて」と題して意見発表した。その中で、1950年代以降の個別化された学びの流れについて言及し、「日本においては、1971年の中教審答申で、『国民の教育として不可欠なものを共通に修得させる』と『豊かな個性を伸ばす』という二つの目標に対して、指導の個別化と学修の個性化というモデルを考案し、挑戦的な実践が生み出された」と説明。その一例として愛知県知多郡にある東浦町立緒川小学校の取り組み、再学習「はげみ学習」(週1回、無学年、段階別学習)、複数の学習の手引によって子供自身が学習計画を立て複数教科を同時進行で学習する「単元内自由進度学習」、「オープン・タイム」(探究学習、週1回)を紹介。また、これらの効果として、大学・短期大学への進学率が上昇、学習等に対して有意に高い水準で肯定的反応が示されたと報告したが、2000年代以降、学力低下への懸念等から衰退。しかし海外では指導の個別化、学習の個性化が推奨され、近年はAIを用いた個別学習システムの開発・普及が動向としてあると語った。 


 今後、個別最適化された学びについて検討する上で重要なことについては、(1)個別化された学びで何を目指すかという目標論・学力論、(2)個別化によって生じる個人間の進度の差をどう考えるか、(3)個別化した学びが暗黙裡に想定している学習論への自覚、(4)最適化の判断を誰がどのように行うか、(5)個別化された学びのための教材をどのように現場に提供していくか―の5点だと述べた。


  続いて、中川哲・文科省初等中等教育局視学委員が「教育におけるコンピュータの活用に関する考察」と題して発表した。その中では「現在のコンピュータと教育の関係は、学習者と教員の学習活動を支援するものであり、高度な判断は人(学習者や教員)が行うものだ。従って、学習者がAIドリルを用いた場合、校務支援システムと連動した教員のモニタリングシステムや意思決定支援システムが必要だ」などと語った。中川氏の発表に委員からは、「個別最適化で重要なのは教員研修や学校支援システムではないか」「子ども一人一人が自ら最適化をすることが重要だ」「学びのための支援はどうか」「学校における教科以外の学びについてはどうするのか」「一人一人尊重するのは大事だが、学習のみに限定することには注意が必要だ」「日本の教育は教科書と教育課程の縛りが強い。教育課程を個別最適化しないといけない」「至急、パソコンとオンライン環境を整備することが必要だ」「個別最適化の意味を明確にしておくべきだ」「高次のカリキュラムマネジメントが必要だろう」などの意見が出た。また中川氏は、現在のところ、AI化を進めるにはデジタル教科書の使い方に関するデータを含めて教育に関するデータが圧倒的に不足しているとも語った。


  続いてこれまでの同部会での論点整理と、「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の論点整理が紹介され、その中で、高校普通科改革として、一斉的画一的な学びではなく生徒の能力や興味・関心等を踏まえた学びを提供するという観点から、各学校の特色・魅力化の取り組みに応じて、SDGsの実現など現代的な諸課題への対応を図るために学際科学的な学びに重点的に取り組む学科や、地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科などを設置者の判断で設置することなどが提案されている、とした。これに対して教育課程部会委員からは、「特定分野に重点を置いた教育になるだろう。その場合、大学や就職を目標としないとなると、大学や企業が何を評価するかを見直して公表しないと、根本的には変わらない」「普通科の普通という呼称はやめた方がいい」「ICTと対面授業といった二元論はよくない」「新型コロナウイルス感染症でICTによる学習を受けられる子と受けられない子で大きな格差が起きている」「義務教育と高校の接続の在り方について議論を深める必要がある」などの意見が出された。




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