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全私学新聞

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記事2020年8月13日 2519号 (1面) 
私学振興協議会を開催
全私学連合 課題説明、更なる支援要請
国会議員 休業中の学校側の対応等で質問

 長谷山彰・全私学連合代表(日本私立大学団体連合会長、慶應義塾長)と河村建夫・衆議院議員(元文部科学大臣)が共同代表を務める「私学振興協議会」が8月7日、都内のホテルで開かれ、新型コロナウイルス感染症が依然猛威を振るう中で、私学側から私学振興における諸課題に関する説明とその対応策等についての要望が行われ、20人近い出席議員との間で意見交換等が行われた。同協議会は、全私学連合を構成する幼稚園から大学までの私学5団体の代表と、与党・自由民主党の現職の文部科学部会長、文部科学(文部)大臣経験者、文部科学(文教)部会長経験者が今後の私学振興の在り方等を協議することを目的に設置された組織。


 初めに私学側を代表して長谷山共同代表があいさつし、出席の議員の日頃の指導や支援に感謝した上で、「特に新型コロナウイルス感染症に関して、私立学校に多様で大きな影響があった中で、私学への支援をいろいろな形で政策として実行していただいたことに感謝申し上げる。今年は例年より1カ月遅れて9月末に令和3年度の概算要求があるが、これに向けて具体的要望、課題を申し上げ、アドバイスを頂戴したい」と語った。  


 続いて河村共同代表があいさつし、「コロナ禍の中で教育現場への影響は計り知れない。子供の学びの遅れをどう取り返すか、皆さん大変な思いをしている。これから新しい教育をどうつくっていくか、私学の皆さんと行う大きな仕事だと感じている」と語り、また高階恵美子・文部科学部会長は、「就学環境を安全にしていく取り組みとともに、子供たちの学習方法、小規模教育に対する教授方法の改革、システム開発もしていかなくてはいけない。当然経費も必要で、職員のストレス解消、心の健康も非常に大事で、引き続き私たちも心を寄せて頑張っていきたい」と述べた。  


 この後、長谷山・全私学連合代表が幼稚園から大学までに共通する当面の五つの課題を説明した。五つの課題とは、(1)新型コロナウイルス感染症に係る対応国の柔軟な支援を、(2)私立各学校(幼稚園〜大学)の基盤経費である私学助成のさらなる拡充、(3)私立学校施設の耐震事業促進に対する支援のさらなる拡充、(4)私立学校に対する寄附税制等の一層の改善、(5)教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充および適用期限の延長で、(3)に関しては感染症対策の面でも支援の拡充を要請している。


 この後、長谷山氏が日本私立大学団体連合会長として、大学関係の要望を説明、秋以降、さらに深刻化すると思われる経済の悪化を見据えて国私の区別なく学生の学びを中断させないための継続的な支援を要請。また世界の大学でオンライン化が加速、世界のプラットフォームに日本が乗り遅れることがないよう、高度なICT教育に取り組む私立大学への手厚い財政支援と、私立大学に対しても3密対策のための施設整備、空調・換気設備に対する支援、コロナ対応で収支が厳しい状況にある大学病院への政府の全面的支援を要請した。


  関連して、佐藤東洋士私大団体連副会長(桜美林大学理事長・総長)が、大学での授業の質につながる高速通信網整備の必要性を訴え、また教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の恒久化を要請した。


  日本私立短期大学協会の川並弘純・常任理事(聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長)は関口修会長に代わって2点の要望を行った。2点の要望とは、短大の約95%は私立短大で、自県内入学率が67・6%、短大卒業者の自県内就職率は71・8%と地域に根差した高等教育機関となっており、地域を支える存在であることから私学助成等の公的支援の充実が不可欠なことを強調。また内閣府の地方創生関係交付金が使いにくく地方自治体が手を挙げず短大にとって活用しにくいことを説明、改善を要請した。さらに万一、学校内でコロナの感染者が出た場合、学校全体の消毒費用が大変多額になることを指摘して、コロナ対策への幅広い支援を要請。そのほか専門職大学、専門職短期大学が完成年度を迎え、補助金を交付する際は、当初の構想通り、私学助成とは別枠での実施を要望した。


  日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高等学校理事長・校長)はコロナ対策では補正予算で非常に使い勝手がいい補助金の創設に感謝。GIGAスクール構想の一方で、私立高校のICT関連予算が減額され、私立高校のICT機器整備需要を賄えないことから、GIGAスクール構想の予算の一部転用を財務省には認めてほしいなどと要望した。またエアコンの補修については、配管の交換等が必要な場合、3億円から5億円もの経費が必要になるとして、熱中症対策、学校が避難所となることも考慮して財政的支援を要請した。 


 日本私立小学校連合会の重永睦夫会長(東京都市大学付属小学校長)は私立小学校の経常費助成費等に対する補助の拡充強化、保護者負担教育費の公私間格差の是正、ICT関係に対する補助の拡充強化の3点を要望した。このうち経常費助成費等の補助に関しては3密回避のため1クラスの児童数を減少することができるよう補助金の拡充を要望。保護者負担に関してはコロナで家計が急変した家庭への緊急支援、私立小学校生徒への経済的支援の拡充、恒久化を、ICT関係では公立と同様、10分の10の補助を要請した。 


 全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長(鞠生幼稚園理事長・園長)は、今なおある財政支援の公私幼保間格差の是正、幼児教育類似施設が認可を受けた園と同じ「まな板」で議論されていることへの疑問を呈し、改善を要請した。


 こうした私学側の説明や要望に対して、国会議員からはさまざま意見が出された。伊吹文明・衆議院議員は4月から6月にかけて対面の授業が行われずオンライン等の授業となったことなどの状況を取り上げ、子供たちの学びの習熟度がどうなっているのか、教員の負担はどうなっているのかについて質問。 

 これに対して長谷山代表は、大学の状況について、「学生はオンライン授業で授業の密度が高まったと回答するなど、オンライン授業の利点もあるが、人間関係をつくり上げていくためにはキャンパスライフが重要だ」とし、対面とオンラインのハイブリッドの重要性を指摘。また雇用の維持に努めており、教員の負担軽減には人的手当て、最終的には資金が必要だと訴えた。 

 また吉田中高連会長は、学校によって状況は異なるが、パソコンを生徒一人一人が持っていたかで、休業中の教員の勤務状況が大きく変わったこと、ハイブリッドな教育にいかにうまく持っていくかで、学校教育はここ1、2年で大きく変わっていくとの考えを示した。 

 このほか丹羽秀樹・衆議院議員からは、子供たちや教職員に関して、コロナウイルス感染症のワクチンの優先接種の要望を出してほしいとの要請があったほか、渡海紀三朗・衆議院議員からは「世の中が動きだしたときに、大学はロックアウトをやめて大学を開けてほしい」との発言があり、亀岡偉民・衆議院議員からも「学校を閉鎖しないでほしい」との要望があった。 

 馳浩・衆議院議員は、「自民党の教育再生実行本部としても団体要望を拝聴したい。先ほどのGIGAスクールの問題に関しては高校まで拡充しないと意味がない(編集部注:GIGAスクール構想ではパソコン等の整備は小学校、中学校が対象、高校はネットワーク環境の整備のみ)」と語った。

  このほか遠藤利明・衆議院議員、塩谷立・衆議院議員、中曽根弘文・参議院議員、柴山昌彦・衆議院議員が発言した。このうち私学振興協議会国会議員の事務局長を務める塩谷議員は、伊吹議員の発言に絡んで、子供たちの学びの保障の全体的な状況を秋くらいにはまとめて検討する必要性を指摘した。 

 8月7日の私学振興協議会には、そのほか大島理森・衆議院議員、下村博文・衆議院議員、松野博一・衆議院議員、水落敏栄・参議院議員、冨岡勉・衆議院議員、木原稔・衆議院議員、赤池誠章・参議院議員が出席した。

ソーシャル・ディスタンスを取って開かれた私学振興協議会(8月7日)

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