こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2020年2月13日号二ュース >> VIEW

記事2020年2月13日 2501号 (1面) 
中教審教育課程部会を開催
年間授業時数や標準的授業時間など検討
個別最適化の教育等実現踏まえて

  中央教育審議会の初等中等教育分科会教育課程部会(部会長=天笠茂・千葉大学特任教授)は2月5日、文部科学省内で第115回会合を開いた。この日の主な議題は、「先端技術の活用等を踏まえた標準授業時数の在り方や補充的な学習・発展的な学習の在り方について」。初等中等教育分科会は昨年12月にまとめた「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」の中で、「先端技術の活用等を踏まえた年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方や、個別に最適で効果的な学びや支援を進めることによって学年を超えた学びを行うことについてどう考えるか、評価を含めた留意事項について、早急に検討する必要がある」と指摘していた。


 この日の教育課程部会では文科省以外の会議体等が標準授業時数や発展的な学習・補充的な学習についてどのような提言を公表しているかについても事務局(文科省)から報告された。


 政府の教育再生実行会議は昨年5月の第11次提言で、多様な実態に応じた教育課程編成を可能とする観点から、標準的な授業時間の在り方を見直すことを求めており、また自由民主党の教育再生実行本部は昨年5月の第12次提言で子供たちが学びを一層深める時間を生み出すことができるよう年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方の検討の必要性を指摘。


 経済産業省の「未来の教室」とEdTech研究会は、昨年6月の第2次提言の中で学びの自立化・個別最適化の実現に向けては、標準授業時数のような学びを集団的かつ時間的に管理する考え方との関係の整理が必要で、「履修主義」ではなく、理解度・到達度を客観的に測定する「到達度主義」に基づく評価、授業編成を認めることなどを指摘。経済同友会は昨年4月、各教科等の授業時数や各学年における総授業時数の標準の撤廃を求める提言を公表している。


 こうした情勢の中で、 天笠茂委員は、「標準授業時数の在り方について」、市川伸一委員(東京大学名誉教授・帝京大学中学・高校校長補佐)は「補充的な学習・発展的な学習の在り方〜実施における視点と配慮〜」と題して、鹿児島県総合教育センター情報教育研修課の木田博氏は「資質・能力の育成につながるICTを活用した効果的・効率的教育活動」について意見を発表した。この中で天笠委員は年間授業時数に係る規定及び解釈の変遷、小学校における1単位時間の授業時間の歴史的経緯等を解説。市川委員は補充的な学習における視点と配慮として放課後の個別指導、少人数の補習、ICTの利用、学習の自己調整への着目の重要性を指摘。学習サイクル(予習―授業―復習)の確立、学力や発達段階に応じた学習感・学習方略の促進、その中でも理解を重視した学習方略の例として原因・理由をつかむこと、人に説明することで自分の理解度を確認すること、間違いから教訓を引き出し、次に生かすことを紹介。発展的な学習に関しては教育課程上での学年を超えた学びと内容を深く豊かにする学習の二つのタイプがあることを説明。後者の例としてThinkQuestなどの取り組みを説明した。木田氏は授業支援システムを利用した意見・考えの共有・整理、学習者用デジタルドリルの活用、遠隔合同学習の取り組みを報告した。


 こうした意見発表を受け同部会委員からは、「生徒の学力差はICTによって埋めることができる。パソコンを家に持ち帰れたら良い効果が上がる。ICTを基本にここを減らせるここを増やせるといったように考えた方がいい」、「作文の作成もパソコンですべきだ」「自宅学習を加えて反転学習のサイクルを作るべきだ」「少子化時代を迎えて鹿児島県の複式学級の事例は大事」といった意見が聞かれた。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞