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記事2020年12月3日 2529号 (2面) 
大学入試のあり方に関する検討会議開催
全高長、国大協から聴取
大学入試センター 記述式出題の難しさ指摘

 文部科学省の大学入試のあり方検討会議(座長=三島良直・東京工業大学名誉教授・前学長)は11月27日、第18回会議をWEB会議方式で開催した。議題は、(1)大学入学者選抜における英語4技能評価および記述式問題の実態調査の結果(選抜区分別調査関係〈記述式〉・多様性確保の取り組み関係)について、(2)団体代表委員(全国高等学校長協会、国立大学協会)からの意見発表、(3)大学入試センターからの説明、(4)自由討議。このうち実態調査結果の報告は今回で3回目。その中では個別学力検査における記述式問題等の出題状況(別掲図参照)、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受け入れへの配慮、英語4技能評価のあり方や記述式出題のあり方等に関する自由記述欄に記載された内容等が紹介された。この調査は全国公私立大学を対象に今年7月から9月にかけて調査したもので、回収率は90・7%。多様な背景を持った学生の受け入れへの配慮では国公私立大学別にさまざまな取り組みが紹介されている。


 (2)の意見発表では全国高等学校長協会の萩原聡会長(東京都立西高校長)が、改めて大学入学共通テストにおける英語民間検定試験の活用に関しては、生徒が希望する時期や場所で英語民間検定試験を受けられる見通しが依然として立っていないなど6点の不安の払拭が条件だと指摘。また記述式問題を大学入学共通テストに導入することは難しく、各大学での個別試験での実施が望ましいとの考えを示した。


 一方、国立大学協会の岡正朗・入試委員会委員長(山口大学学長)は、同委員会の見解として、今後の方向性では自然災害やコロナ禍などから共通試験の複数回実施等の議論の必要性や、国立大学では2021年度までに総合型選抜・学校推薦型選抜の割合目標を入学定員の30%としていること、2024年度の大学入学共通テストから導入が見込まれている『情報T』に関しては、教員配置など生徒の学習環境の考慮が必要なことなどを指摘。そのほか高校段階で生徒一人一人の達成度を測るテストを高校関係者が主体となって実施することの重要性にも言及した。


 また、独立行政法人大学入試センターの山本廣基理事長が同センターの業務、記述式問題の導入に向けた課題、英語4技能評価の実施に向けた課題等を報告した。その中では、記述式問題の導入に関する課題について、短期間(約20日)で約55万人の答案を採点(少なくとも2人以上による採点・チェック)する必要があり、質の高い採点者を多数(8千人から1万人程度)確保する必要があり、試験の実施期日が1月中旬の2日間の場合、大学教員が採点業務に従事することは困難で、民間事業者を活用することになる、と指摘。また英語4技能評価の実施では、スピーキング(対面式)受験者1人当たり5分としても試験にのべ4万5833時間かかり、十分な数の面接官、試験室の確保が必要となること、スピーキング(録音式)の場合、機器開発から行う必要があることなどを説明。


 この後、委員による自由討議となり、大学入試センターによる英語4技能試験の実施の可能性についての質問に、山本理事長は実施体制の課題があり、実施には相当な時間と資金が必要のため、令和7年の大学入学共通テストでの実施は困難と回答。また別の委員からは高校の達成度テスト導入に対する意見の集約を高校側でもしてほしい、との発言があった。次回会議は12月11日。


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