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記事2020年12月23日 2531号 (2面) 
第7回デジタル教科書の今後の在り方等検討会議
授業時数の1/2制限撤廃
段階的普及の議論始まる

 文部科学省の「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」(座長=堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授)の第7回会議が令和2年12月22日、WEB会議方式で開かれた。この日の議題は、(1)学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準(文科省告示)の見直し、(2)学習者用デジタル教科書の普及促進と円滑な導入の在り方。


 このうち(1)に関しては、GIGAスクール構想による1人1台端末整備やデジタル教科書の発行の進展(令和3年度には小学校用、中学校用が共に約95%に達する見込み)、実証研究校での児童生徒の高評価などデジタル教科書を取り巻く状況の変化を受けて、児童生徒の健康面の留意事項についての周知・徹底、ICTの活用に係る教員の指導力の向上施策を前提に、デジタル教科書の使用制限を撤廃することは適当との見直し案が同省から示され、委員からは「特に異論はない」、「趣旨に賛同」等の意見が数多く出された後、使用基準の撤廃が了承された。


 一方、(2)の議題は、デジタル教科書の普及を段階的にどう進めるのか、どこを優先していくのか、を話し合った。話し合いの材料として同省が基本的な認識と、段階的に導入する際の在り方例を提示した。現在、令和6年度からデジタル教科書の本格導入が予定されているが、一覧性に優れるなどの特性を持つ紙の教科書とデジタル教科書の両方を無償で措置することが望まれるとしながらも、財政的制約があるとして、仮に段階的にデジタル教科書を導入する場合の在り方を令和3〜5年度に実証を積み、段階的導入方法のエビデンスを得る方針。


 文科省は三つの導入例を提示した。(1)発達段階や教科特性の観点に応じてデジタル教科書を導入する(例えば、小学校高学年を、あるいは特定の教科等を優先する等)。(2)設置者が当該年度に使用する教科書は紙かデジタルかを選択する(高校段階では学校ごとの選択制等)。(3)仮にデジタル教科書を主たる教材とした場合にも必要に応じ紙の教科書を使用できるようにする(学校に備え付けた教科書を貸与する等)。


 こうした導入例に関して委員からは、「デジタル教科書は小学校高学年からの導入がよい」、「低学年からは不適当とは必ずしも言えない」、「自治体による選択制の場合、転出、転入で混乱が予想される」、「教科、学年別の塊で選択があってもいい」、「外国語(音声が出る)のデジタル教科書は有効。算数も活用しやすそうだ」、「令和6年度までに全ての人(教員、児童生徒)がデジタル教科書を経験することが大事」といった意見が聞かれた。堀田座長は「令和6年度の本格導入に向け経験値を上げることが大事」としながらも自治体ごとの個人情報保護条例との関わり、ネットワークの速度の問題など、まださまざま課題があると語った。次回会議は1月27日。


 なお令和3年度の同省予算案に盛り込まれている「学習者用デジタル教科書普及促進事業」の予算額は、概算要求段階の52億円から22億円に減額された。同事業の中で約9割を占める「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業(新規)」は、概算要求段階では原則、国公私立の小学校5、6年生、中学校全学年、義務教育学校、中等教育学校(前期課程)および特別支援学校(小・中学部)の相当する学年の7割程度を対象としていたが、それが3年度予算案では5割程度に縮小、対象の教科も概算要求段階の2教科分から1教科分に絞られた。このデジタル教科書(付属教材を含む)を学校や家庭で活用する実証事業は令和3年度早々から始まる見通し。


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