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記事2020年11月23日 2528号 (1面) 
私学振興協議会開かれる
私学団体代表 予算や税制、制度面など 元文科相ら20人の議員に要請
教科書のデジタル化で「著作権問題」浮上 対面授業の実施要請も

 長谷山彰・全私学連合代表(日本私立大学団体連合会会長、慶應義塾長)と河村建夫・衆議院議員(元文部科学大臣)が共同代表を務める「私学振興協議会」が11月20日、都内のホテルで開かれ、私学側から私学振興における課題の説明や支援策の要請等が行われ、出席した約20人の国会議員との間で意見交換等が行われた。私学振興協議会は全私学連合を構成する大学から幼稚園までの私学5団体の代表と、与党・自由民主党の現職の文部科学部会長、文部科学(文部)大臣経験者、文部科学(文教)部会長経験者が今後の私学振興の在り方等を協議することを目的に設置された組織。


 冒頭、河村共同代表があいさつに立ち、「コロナ禍の中で学生支援の問題、学園の運営問題等々いろいろご苦労をされていると思うが、令和3年度私学振興に向けた予算編成の時期を迎えているので、その情勢、対応の在り方等、当面の課題、税制改革もこれからなので、皆さんからの要望を受け止めてしっかり対応をしたい。意見交換しながら私学振興を前に進めていきたい」と語った。


 続いて長谷山共同代表があいさつし、私学振興協議会が7年目を迎えたこと、その間、私学の振興、発展のためにいろいろご指導、ご助言を頂いていることに改めて感謝を伝えた後、私学団体共通の課題である令和3年度私立学校関係税制改正要望として、令和2年度末をもって非課税措置の適用期限を迎える、(1)教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の恒久化、(2)日本私立学校振興・共済事業団を通じて行う借入金に係る印紙税の非課税措置の延長および対象範囲の拡大を要請した。特に、(1)に関しては、コロナ禍の中で中間所得層が急変し、アルバイト学生も困難に直面、祖父母等一家を挙げて学生を支えるためには今回の非課税措置の恒久化が必要で、中間所得層の支援にもなることを説明、理解を要請した。


 私学側が提出した参考資料では、各種調査結果で厳しい家計状況等を紹介し、「将来まで予見性を持って子供の教育費および教育の質を確保する方策が必要」としている。


 その後、私大・短期大学関連の予算要望として、学生に対する継続的経済支援、ICT教育への環境整備と質の高いオンライン授業への支援、対面授業を推進する大学の感染防止策に対する支援などの重要性を指摘して、私学助成関係概算要求の満額実現を要請した。  


続いて私立小・中学校・高校を代表して日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高等学校理事長・校長)が、私学を取り巻く情勢や課題を説明、要望を行ったが、その中では新型コロナウイルス感染症が広がる中で突然、ICTを活用してのオンライン授業の必要性が浮かび上がり、各学校が必死に努力してハイブリッドの教育を行った経緯などを説明した上で、感染症対策にも関わるエアコンの更新に関して、フロンガスが使えなくなり総入れ替えとなると中高でも、4、5億円必要なこと、校舎等の耐震化に関しては、経営面から耐震化ができない学校に関しては補助率の引き上げの検討を要請。著作権の使用料問題に直面していること、大学入学共通テストで英語4技能試験の実施が危うい情勢にあることなど私立学校を取り巻く課題を説明、議員に理解と支援を要請した。また広域通信制高校に関して、通信制にもかかわらず全日制課程と見紛うような形で、大学進学に特化した指導が行われ、弾力的な運用が可能な設置基準もあって、教育の質の保証が揺るぎかねないばかりか、公教育制度がなし崩し的に瓦解しかねない情勢を危惧している、と語り、明確な設置基準の策定、教育課程の全面的な見直し、国がより主体的・実務的立場にたっての問題解決を要請した。


 全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長(鞠生幼稚園理事長・園長)は、94%の幼稚園は長年預かり保育を実施、子育て支援に取り組み、その結果、3歳以上の子供の待機児童はほとんどいないことなどを説明し、幼稚園での子育て支援、預かり保育への人材面の支援を要請。また一日も早い幼児教育振興法の成立を要請した。


 私学団体からはこのほか日本私立大学団体連合会副会長の小原芳明・玉川大学理事長・学長(日本私立大学協会会長代行)、日本私立短期大学協会常任理事の川並弘純・聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長、日本私立小学校連合会会長の重永睦夫・東京都市大学付属小学校校長等が出席した。


この後、赤池誠章・文部科学部会長(参議院議員)があいさつし、「税制改正では教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の問題が最大の争点となっている。財務金融部会とも協力して非課税措置の延長、恒久化を獲得していきたい。最終的には12月上旬には税制改正論議がまとまる見通し。予算に関しては、菅総理から自民党の下村博文政調会長に三つの経済対策の議論の指示があった。一つは感染症対策、二つ目はポストコロナに向けての経済好循環のためのデジタル化、イノベーションの推進、三つ目が防災、減災、国土強靱化。各部会に分かれて議論しているが、国公私間の格差是正、高校についても生徒1人1台の情報端末整備を緊急的・統一的・計画的に達成することを盛り込みたい」などと語った。


 この後、同協議会事務局長の塩谷立・衆議院議員(元文部科学大臣)を司会進行役に、出席議員からの意見発表や私学団体代表との意見交換が行われた。初めに馳浩・衆議院議員(元文部科学大臣)は、「デジタル教科書等の公衆送信について今年は著作権料が無償だが、来年は有償となる。小・中・高校の負担も大変なものとなり、文科省にも負担軽減を求めたい」と語った。この問題に関連して中高連の吉田会長は先日、文化庁の審議会に出て学校が知的財産をどこまで使っているか調査し、著作権者にどうやって還元するかを決めてから制度をスタートしてほしいと要請したと報告。


 これに対して馳議員は、本日、義家弘介・衆議院議員の下で教科書問題プロジェクトチームがスタートすること、コロナによって新たな局面に入ったとの認識で、検定・採択・供給の在り方、デジタル化対応など教科書問題について総ざらいする方針等を説明した。


 続いて亀岡偉民・衆議院議員(元文部科学部会長)は、「オンラインの環境整備とともに、少しでも対面授業を大学教育の中に入れていってほしい、困窮家庭への学費支援も事項要求しているので、対面授業を前面に出してハイブリッドで授業を行ってほしい」と要請した。


  義家・衆議院議員(元文部科学部会長)は、幼児教育の振興と出生数の減少に伴い質を基準にした教育への大転換を提唱した。


 丹羽秀樹・衆議院議員(元文部科学部会長)はコロナ禍で学校ではさまざまなイベントが中止・延期になったことに触れて、「特に幼児教育に関してはいろいろ工夫をして実施してほしい。(予算に関しては)公私間格差をなくすために一生懸命頑張りたい」と語った。


 冨岡勉・衆議院議員(元文部科学部会長)は、「隠れたクラスターがあるだろうと言われているのが学校で、PCR検査を実施すれば陽性の結果がでる子供がいることを知ってほしい」と語り、ヘパフィルター、オゾン、新紫外線など新しくウイルスを駆除する方法が出てきていることを指摘した上で、「予算の手当てがないと感染の第3波の対応にならない」と語り、予算措置の重要性を強調した。


 柴山昌彦・衆議院議員(前文部科学大臣)は従来の教育再生実行本部に代わって、下村政調会長の下に教育再生調査会が新設され、自身が会長に就任したこと、「(今日、指摘のあった)通信制高校の質の保証をどうするかはこれから議論を積んでいきたいが、教育再生実行会議の有識者はオンライン授業の拡大、規制緩和をすべきだとの論調が多いと思っているが、低年齢の学校段階では別の配慮も必要だと思うので、オブザーバーとしてその辺のバランスを訴えていきたい」と語った。


 遠藤利明・衆議院議員(元文部科学部会長)は、世界最大のイベント、東京オリンピックを是非とも成功させたいとして、私学関係者に引き続いての支援を要請。耐震化、エアコンなど施設設備整備、幼児教育の振興、英語4技能の推進等の考えを明らかにした。


 中曽根弘文・参議院議員(元文部大臣)は、「広域通信制高校の問題については、既存の制度から少しはみ出るような形が規制改革の中で出てくることは、生徒も混乱する、制度の明確化も必要だ。勉強させていただいて、生徒の立場も考えてやっていきたい」と語った。


  木原稔・衆議院議員(元文部科学部会長)は、「学校の著作権料の負担については、今後議論していきたい」と語った。


 伊吹文明・衆議院議員(元文部科学大臣)は、「コロナが収束した後、社会は人間が構成し、生徒は教師の人格に触れて成長していく。元に戻さなくてはいけないものは何かをしっかり考えてほしい」と語った。


 このほか私学振興協議会には大島理森・衆議院議員(元文部大臣)らが出席した。


 11月20日の私学振興協議会、社会的距離を取っての開催となった

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