こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2020年11月13日号二ュース >> VIEW

記事2020年11月13日 2527号 (2面) 
通信制高校の質の確保・向上調査研究協力者会議
議論は質の確保・向上から
ICTの効果的活用等に移行

 文部科学省の「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」(荒瀬克己座長=関西国際大学学長補佐)の第5回会議が11月11日、WEB会議方式で開かれた。同会議は昨年10月1日に第1回会議を開き、議論を開始。以後、(1)通信制高校の質の確保・向上に向けた方策、(2)時代の変化、現場の実態に即した通信制高校の在り方の二つの検討事項のうち、(1)質の問題を先行して審議してきたが、この回で議題(1)の審議をほぼ終了し、検討事項(2)の審議に移った。  


審議の前半は、中央教育審議会の新しい時代の高校教育在り方ワーキンググループの審議まとめ案の中の高校通信教育の質保証関係の記述や中教審初等中等教育分科会中間まとめに関する教育関係団体ヒアリングで出された意見が報告された。  


この中では日本私立中学高等学校連合会がヒアリングに提出した意見書の中で、不適切な教育が行われたり、本来の通信制高校の目的からかけ離れた全日制の通学コースが設置されたり、塾と連携して大学受験対策に特化した教育を行うなどの事例も見受けられたとの記述について、委員から「どういったデータに基づいているのか。通信制高校は全体がダメなわけではない」「ブローアップしている印象」といった意見が聞かれた。  


このほか全国都道府県教育委員会連合会、全国高等学校PTA連合会、日本教職員組合の意見が紹介された。  


検討事項(2)に関しては、同会議が10月2日と9日に非公開で実施した、広島みらい創生高等学校(公立・狭域)やN高等学校(学校法人立・広域)など5校からのヒアリング結果や議論のための論点メモが文科省から説明された。ヒアリングは、多様な学習ニーズに応じたきめ細かな指導に係る取り組みとその成果、ICTを効果的に活用した指導に係る取り組みとその成果、その他学校独自の特色ある教育活動について聴取した。  


論点メモでは通信制高校において高校教育として共通に身に付けるべき資質・能力をどのように考えるか、具体的には、(1)添削指導、面接指導、試験、メディア学習等の在り方、(2)学校としての「福祉的な役割」の実現に向けた在り方を大きな論点としている。  


論点メモに関して、委員からは「通信制高校も高校だということを譲らないことが大事」「私が見ている限り、観点別評価を取り入れている学校はほぼない。観点別評価の実施をきっちり位置付けて探究的な学びにつなげていくべきだ」「福祉的役割という名称はともかく福祉的役割を外したら通信制高校は考えられない」「通信制高校は大学のように考えた方がいい。全日制、定時制、通信制という区分けはナンセンス」「ICTを活用して基礎的な学力定着を目指して県からクロムブックが入った。それで生徒の意見の記入や集約などができた。生徒は自分を表現することができた。この先、端末確保、無線LAN、教員の配置も必要」といった意見が聞かれた。  


このほか今後のスケジュールも説明され、年末か年始に第6回会議を、来年2月か3月に第7回会議を開く予定。検討状況に応じて会議の追加開催もある。  


審議結果を関係法令の改正、ガイドラインの改訂等の必要な制度改正につなげていく。  


また定時制・通信制課程において、多様な生徒に応じて卒業後の進路を見据えたカリキュラムの研究開発、多様な学習ニーズに応じながらICTを効果的に活用した指導・評価方法等の実証研究を令和3年度に行うことにしている。予算要求額は5千万円。国公私立の高校等に委託する予定。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞