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記事2020年10月13日 2524号 (1面) 
学習者用デジタル教科書普及促進事業実施
文部科学省令和3年度概算要求
私立小・中学校も対象52億円を投じて
大規模提供での課題等調査

 学習者用デジタル教科書は有償で、品揃えも十分ではないことなどから、なかなか普及してこなかったが、GIGAスクール構想の実施で義務教育段階の児童生徒に1人1台の情報端末が配られ、菅内閣がデジタル化を政策の中心に掲げたことから、今後、急ピッチで整備が進むことになる。まだ課題は少なくないが、令和3年度から私立学校も含めて大規模な普及促進事業が開始される。


 小・中学校でのGIGAスクール構想による児童生徒1人1台の情報端末整備が進む中で、学習者用デジタル教科書の導入が必須となっているが、文部科学省は令和3年度に「学習者用デジタル教科書普及促進事業」を実施する。そのために必要な予算として現在、52億円(令和2年度予算額は2千万円)を財政当局に要求している。  


学習者用デジタル教科書については、新型コロナウイルス感染症への対応の観点からも、ICTを活用した学びの出発点として大きな「鍵」となっている。しかし有償での購入等が課題となって導入は進んでいない。その一方で紙の教科書については令和3年度も無償とする方針で、そのための予算468億円を財政当局に要求している。文科省は現在、デジタル教科書の今後の在り方等を専門家会議で検討しており、令和6年度から本格導入する方針だ。  


令和3年度に実施を要求している「学習者用デジタル教科書普及促進事業」には、三つの事業が含まれており、一つ目が「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」(新規)で予算額は50億4500万円。これが事業の中核で、1人1台端末の環境が整っている小・中学校等を対象に、デジタル教科書(付属教材を含む)を提供し、普及を図る方針で、また宿題など学校の授業以外の場でも活用できるよう、パブリッククラウドを使用した供給方式とする。  


同事業の対象となるのは国・公・私立の小学校5・6年生、中学校全学年、義務教育学校、中等教育学校(前期課程のみ)および特別支援学校(小学部・中学部)の相当する学年で、小学校5・6年生の1教科、中学校全学年の2教科分の学習者用デジタル教科書(付属教材を含む)経費全額。文科省が都道府県による希望調査を行った上で教科書発行者と委託契約を結び、教科書発行者は小・中学校設置者にデジタル教科書を提供、大規模な提供に当たって生じる課題等について文科省に報告を行う。  


二つ目の事業が「学習者用デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証」(新規)で予算要求額は1億1600万円。  


この事業は、多教科のデジタル教科書を多数の児童生徒が同時に利用する際の円滑な導入・使用を担保し、ネットワーク環境等の改善を促すため、デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証を実施する事業で、複数のモデル地域における比較検証を通してデジタル教科書のクラウド配信を進める際のコスト削減や望ましいシステムの在り方の検討を行う。具体的には民間企業に業務委託する。  


三つ目の事業が「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究」で予算要求額は6500万円(前年度予算額は2千万円)。


この事業も民間事業等に業務委託して、実証研究校での詳細な調査によるデジタル教科書の使用による効果・影響の検証を実施。また教員の授業実践に資するよう事例集や研修動画を製作。一つ目の事業と連携して全国でアンケート調査を実施、初めて使用するケースを含む多数のデータを基に、効果の検証や傾向・課題等の分析を行う予定。

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