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記事2019年8月13日 2485号 (1面) 
中央教育審議会分科会開く
教育と研究を両輪とする高等教育の在り方で  吉見東大大学院教授から聴取

中央教育審議会大学分科会(会長‖永田恭介・筑波大学長)は8月9日、文部科学省内で第149回会合を開いた。法科大学院の充実を図るための法改正や、教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について話し合われた。
 法科大学院の募集停止などの課題を解決するため法曹養成制度の改革を進めることとなり、その中で法科大学院教育の充実を図るため関連法を改正。円滑な接続を取ろうとする大学と「法曹養成連携協定」を結び認定する制度を創設することや、成績優秀者の大学院への飛び入学の対象者を優秀な成績で単位を取得した者に加え、同等以上の資質・能力を有すると認められた者にも範囲を広げることなどが盛り込まれている。
 これについて委員から「飛び入学で大学院に入ったものの途中でやめた場合、学士の資格が得られず、奨励しておきながら不利益を被らせることになるのではないか。中退した後に学士が取得できる制度を置くのが望ましい」と指摘があった。
 次に教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について、吉見俊哉・東京大学大学院情報学環教授が発表を行った。  まず「有限な時間のマネジメント」が重要として、会議などで時間を取られる教職員、履修科目が多い上、就職活動などで時間のない学生、入試制度や少子高齢化といった社会状況、これらの「大学の制度疲労」を克服するのに行うべきことは大学の魅力を再生することであり、そのために科目数を減らすことや教員の管理業務を削減することなど時間のマネジメントが必須だとした。次に「文理『融合』から文理『複眼』へ」として、役に立つこと(有用性)には目的達成のための「目的遂行的有用性」と目的や価値を創出する「価値創造的有用性」とがあり、この二つを使って人文科学とデータ科学を組み合わせる複眼的な教育研究体制が必要だと述べた。
 発表に対し委員からは「教員が忙しいということで、教育と研究に十分に取り組んでもらうために、企業の場合と同様どのような負担があるのか実態調査を行い、業務内容を把握する必要があるだろう」という意見があったほか、「現在の社会は『価値創造的』の面に十分目が向けられておらず、学生の期待も薄く『目的遂行的』の面が重視されがちだが、社会がどう変わっていけばよいと思うか」と質問があり、吉見教授は「(資料に記した)2030年から2050年といった未来のことを考えなければならない」と答えた。
 この他、「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿(審議まとめ)」を踏まえた学校教育法施行規則及び大学院設置基準の一部改正案について大臣から諮問があり、全会一致で承認された。


 

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