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全私学新聞

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記事2019年7月23日 2483号 (1面) 
生徒等の安全確保で国公私間の格差解消を
全私学連合大臣に令和2年度予算等要望提出
柴山大臣「しっかり予算勘案したい」 
英語4技能検定試験でサポートを要請

大学から幼稚園までの私学5団体で構成する全私学連合(長谷山彰代表=慶應義塾長)は7月22日、文部科学省に柴山昌彦大臣等を訪ね、令和2年度私立学校関係政府予算に関する要望と令和2年度私立学校関係税制改正に関する要望書を手渡し、児童・生徒・学生の安全確保の面で国公私立間の格差の解消や、各私立学校が個性を伸ばすことのできる施策等を要請した。大臣への要望後、事務次官、文部科学審議官、大臣官房長、大臣官房総括審議官、高等教育局長等に予算等の要望書を手渡した。


7月22日、大臣等を訪ねたのは、全私学連合を構成する日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会、全日本私立幼稚園連合会の5団体。このうち私大団体連からは長谷山彰会長(日本私立大学連盟会長)と福井直敬副会長(日本私立大学協会会長、武蔵野音楽大学理事長・学長)が、中高連からは吉田晋会長(富士見丘中学高等学校理事長・校長)が、日私小連からは小泉清裕会長(昭和女子大学大学院文学研究科特任教授)が出席した。日短協会長と全日私幼連会長は日程の調整がつかず欠席となった。また日本私立学校振興・共済事業団の清家篤理事長が同席した。  この日の要望では、各私学団体の具体的要望事項については、詳細に記した要望書を提出していることや、大臣に直接要望する時間が限られていることから、出席した私学団体会長らは特に大臣に伝えたいことについて発言した。  このうち日私小連の小泉会長は、今年5月、私立小学校の通学バス停付近で通り魔事件が発生、私立小学生等が犠牲となったことに触れ、事件発生後の文科省の対応に感謝した上で、(こうした)事件については予測、対応が難しいとしながらも、今後は事件がないよう、文部科学省に対応を要請した。私立小学校については、数は少ないものの歴史のある学校が多く、また今年度開校の学校もあり、幅広い状況と説明。その上で、「さまざまな状況に対応していかなければいけない。いろんな意味でご支援をお願いしたい」と語った。  これに対して柴山大臣は、「生徒さんたちの安心・安全、私学の建物、付帯施設の老朽化に伴うさまざまな事故も想定されるので、われわれとしてはしっかり予算を勘案していきたい」と語った。  続いて吉田中高連会長は今後のグローバル社会に合わせて大学入試での英語4技能試験実施の必要性を強調、文科省に検定料等を含めてさまざまなサポートを要請した。  これに対して柴山大臣は、「これについては、われわれは基本的にその方向で一生懸命動いている。しかし受験生たちが不安に考えているところもあり、例えばSNSなどでは相当私がやり玉に挙がっている。これからのグローバル化の時代にあって当然必要な英語4技能は高大接続の部分だけでなく、そこに至る教育の段階できちんと制度設計をしていく必要がある」などと語り、予定通り試験を実施していく考えを明らかにした。  福井副会長(私大協会会長)は、私立大学は地域や専攻、規模等によって考え方もさまざま異なることなどを紹介し、多様化の時代の中で、そうしたことを文科省の政策に斟酌してほしいと要請した。  これに対して柴山大臣は、(私大の)地域のニーズに対応した多様な取り組みをしっかりと支援していく考えを強調した。  清家・私学事業団理事長は国公私立学校で学ぶ若者の命の重みに違いがないことを指摘して、学生等の安全に関わる施設整備に関しては国公私立間の格差をなくしていきたいと語り、柴山大臣に引き続いての支援を要請した。  最後に長谷山代表が発言。建学の精神に基づいて設立された私立学校の特徴は経営の自律性、教育の独自性、多様性だとし、大臣に各私立学校がそれぞれの個性を伸ばすことのできる施策を要請。また高等教育の無償化では、支援すべき対象は個人個人の若者で、設置形態別のどの大学にどうするかではないことを理解いただき、いろいろな政策を取っていただきたい、と要請した。  これに対して柴山大臣は、「私学の自主性、多様性、歴史は尊重されて当然だが、私学も含めて大学のありように非常に厳しい目が向けられていることを指摘。私立学校法が今年改正されたことを取り上げ、(私立学校に)検討いただきたい、と語った。  また教育の無償化で相当の予算が投入されるが、それはそれとしてこれからの私学助成の在り方についてはご指摘を受けしっかり検討していく考えを明らかにした。  関連して長谷山代表は、私立学校のガバナンスについては、「経営のガバナンスと教育のガバナンスをごちゃごちゃにしてはいけない」と語り、分けて考える必要性を指摘した。


柴山大臣(左から3人目)に要望書を手渡す


藤原事務次官(左から3人目)にも要望書を提出


山脇文部科学審議官(左から3人目)に要望


長谷山代表が柳大臣官房長に要望書を手渡す


串田大臣官房総括審議官(左から4人目)に要望


伯井高等教育局長(左から3人目)に要望


 


学校法人への寄附促進措置創設など要望


教育費の負担軽減措置等も


全私学連合は7月22日、令和2年度私立学校関係税制改正要望を文部科学大臣等に提出した。  要望項目は、学校法人に対する寄附促進のための措置の創設・拡充教育費に係る経済的負担軽減のための措置の創設・拡充学校法人の健全な財政基盤の確立に向けた優遇措置の創設・拡充大規模災害により被災した学校法人の復興のための特例措置の拡充が4本柱。政府・与党の税制に関する審議過程において、ここ数年にわたり実現に至っていない項目を中心に要望した。  具体的な要望項目は、学校法人に対する寄附促進のための措置の創設・拡充では、私立学校に対する法人による寄附に関して従来の損金算入に加え、大幅な税額控除を可能とする措置の創設、個人からの寄附では一定の上限まで所得税・個人住民税から寄附金全額を控除するなどの優遇措置の創設を要望。また、学生等の直系尊属からの寄附に関して、還付を伴わない税額控除限度額の撤廃など、寄附者に対する新たな特例措置を設けること、入学後の4月1日以降、新入生またはその保護者から受ける学校法人に対する任意(入学前に予約が行われていないもの)の寄附金(新入生のみを対象にしたもの)についても寄附金控除の対象とすることを要望。このほか個人からの寄附に係る税額控除の対象法人となるためのPST要件の撤廃、年末調整に寄付金控除を可能とするなどの手続きの大幅な改善、寄附金に係る所得控除限度額の上限の引き上げ(所得の50%まで)、控除限度額を超えた場合に5年間を限度に繰り越し控除の実現、控除対象寄附金の適用下限額(2千円)の撤廃を要望している。  さらに私学事業団の若手・女性研究者奨励金への法人の寄附については全額損金にできる指定寄附金化を要望している。  教育費に係る経済的負担軽減のための措置の創設・拡充では、教育資金贈与信託に関する年齢制限の撤廃、適用期限の廃止・恒久化、私学に対する教育費の所得控除制度の創設、教育費の負担軽減を目的とした特定扶養控除の拡充を要望。  学校法人の健全な財政基盤の確立に向けた優遇措置の創設・拡充では、消費税に係る私立学校の負担軽減のための特例措置、学校法人の資産運用収益に対する非課税措置の維持・拡充など現行の特例措置の維持・拡充等を要望している。大規模災害で被災した学校法人復興のための特例措置の拡充では、被災法人の復興支援を目的とした寄附の一層の促進に資する措置の創設、被災校の入学者への教育費の税額控除制度導入、被災法人の教育研究用施設等の購入に係る消費税の減免措置を講じる税制上の優遇措置の創設を要望している。


 

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