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記事2019年6月13日 2479号 (1面) 
中高連が柴山文科大臣に要望書提出
先行き不透明な英語資格検定試験実施で
現状の打開と高校生への説明など要請

日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長らが6月4日、文部科学省を訪れ、柴山昌彦大臣に「『大学入学共通テスト』における英語4技能試験について」と題する要望を手渡し、大学入学共通テストの実施が間近に予定されている中で、各大学の英語資格検定試験に関する具体的情報や民間の試験実施団体の具体的実施案が明らかにされず受験生に戸惑いが広がり、このままでは受験準備に支障を来すことが懸念され、極めて遺憾な状況になりつつあると訴え、現状の打開と高校生への説明等を大臣に要請した(要望全文は2面に)。  この日、要望に訪れたのは中高連の吉田会長のほか、近藤彰郎副会長、平方邦行常任理事で、遠藤利明・衆議院議員が同行した。  現行の大学入試センター試験に代わり、現在の高校2年生が受ける2021年度大学入学者選抜からは思考力・判断力・表現力を重視する「大学入学共通テスト」が実施され、「英語」では4技能(読む・書く・聞く・話す)を評価する入試への改革が予定され、認定を受けた民間の資格検定試験の結果(原則、高校3年生の4月から12月までに受けた2回の結果が有効)が活用される。今年11月には共通ID登録が必要となるが、各大学がどの資格検定試験をどのように利用し、成績結果をどう評価するかなどの具体的情報は明らかにされていない。また、大学関係者の中には、各資格検定試験の成績のCEFRによる比較評価に関して公平性の維持の難しさや、試験の実施方法上の問題点、経済的事情による受験機会の格差拡大の懸念などを理由に、活用の見送りを示唆する動きも見られ、国立大学でも事実上、共通テストの枠組みにおける英語認定試験等活用に関するガイドラインが反故(ほご)にされ、大学の自由な判断に委ねられる状態となっている。  同連合会ではこうした状況が「高校生を迷子にしている」としており、高校の新学習指導要領に基づいて行われる2024年度以降の共通テストでは4技能入試に一本化することを同省及び大学入試センターが明確に示すよう求めている(2023年度までは英語2技能入試も併用する)。  こうした中高連の要望に対し、柴山大臣は、各大学に実施スケジュールや共通テストの利用方法等についてしっかり明示するよう要請していること、大学関係者等には6月開催の「大学入学者選抜・教務関係事項連絡協議会」で、高校関係者には、7月に開催する「大学入試センター試験説明協議会」で、実施大綱や英語成績提供システムの周知を図ること、さらに同省の「大学入試英語の4技能評価のワーキンググループ」で資格検定試験に懸念事項が寄せられていることについてしっかり議論して情報発信していきたい、との考えを明らかにした。  この日の要望では、通信制教育の問題も取り上げられ、通信制高校でありながら全日型・通学型の学校も出現し、本来の通学が難しく、やむを得ない生徒のための教育から全く様変わりし、学校は高校卒業資格を取るだけのものと化し、実際は塾で受験に向けた勉強をするようなケースが増えていることを中高連が指摘。また規制改革推進会議でも検討されていた義務教育への通信制導入について柴山大臣からも反対の意向が示されたことに吉田会長から謝辞が述べられた。大臣は「義務教育学校では対面形式の授業で、社会性を身に付けさせる、という役割がある」などと語った。柴山大臣は5月24日の文科省記者会見で「義務教育段階にも通学を前提としない通信制を導入することは、子供同士が向き合う機会が限定されてしまうのではないか。質を確保する観点からいかがなものかと考えている」との考えを示していた。

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