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記事2019年11月3日 2492号 (1面) 
令和6年度から新方式実施
令和2年度からの大学入試英語成績提供システム導入見送り
試験会場も決まらず大臣決断 
1年間かけ抜本的見直しへ

文部科学省の萩生田光一大臣は11月1日、令和2年度の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ると発表した。英語民間試験活用については地域格差や経済格差を不安視する高校生の声が高まったことや、大臣自身の不用意な発言などが影響、大臣自身が仕切り直しを決断した。今後は、1年間をかけ、民間試験の活用も含め制度の抜本的見直しを進めることにしており、新学習指導要領が適用される令和6年度(令和7年1月)に実施する大学入学共通テストから新制度が適用される予定。そのほか同テストの記述式問題等については、なお課題はあるものの、当初の予定通り令和2年度の入試から実施の予定。


大臣は同日、コメントを発表、同システムの導入を見送ること、熱心に勉強に取り組んできた高校生には約束を果たすことができなかったことを大変申し訳なく思うと謝罪。高校生が安心して受験に臨むことのできる仕組みを構築していくことを約束。
 また、読む・聞く・話す・書くといった英語4技能をバランスよく身に付け、伸ばすことが重要なことには変わりがないとして、これからも日々の授業を大切にするとともに、それぞれの目標に向かって努力を積み重ねてほしいと述べている。
 11月1日の決断について、萩生田大臣は、各試験実施団体の試験会場の提出期限までに詳細な実施計画を出した団体がある一方、依然明確ではない団体もあり、ID登録の段階でもまだ試験会場すら決まらず、受験生の負担軽減などの予算措置を検討することが難しい状況となっていることなどから決断したと語っており、そもそも民間の試験実施団体との大学入試センターを介しての協定締結という方式では指示、命令を行うことができず、受験料の減額も要請するしかない仕組み自体が問題と指摘。
 今後、1年間をかけてなぜこうした事態に至ったかを検証するとともに、交通困難地域の高校生や経済的に困難を抱えた家庭の高校生にもチャレンジしやすい制度を作る方針。具体的な制度設計については、今後1年間をかけて検討する予定だが、まず試験会場の確保について民間任せとせず、文部科学省の責任で会場を確保する方針。また高校生が平等にチャレンジできるよう環境整備を検討していく方針。
 そのほか民間試験団体から損害賠償を求められるリスクもある。


 


新しい初中教育在り方特別部会開く 


これまでの審議踏まえた論点整理案を議論 


小学校での教科担任制やICTなど先端技術を活用した教育について審議する、中央教育審議会初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」(部会長=荒瀬克己・大谷大学文学部教授)は10月25日、文部科学省内で第4回会合を開き、これまでの審議を踏まえた「論点整理案」について検討した。ICT環境や先端技術の活用、教科担任制を巡る論点の他、幼児教育の質の向上についての論点も新しい検討事項として加えられた。  ICT環境や先端技術を活用した教育を巡る論点では、現状の情報化の致命的な遅れや地域間に格差があることは学習環境・職場環境として大きな問題と指摘。また、プログラミング教育や情報モラル教育などの情報教育の充実が求められている中、児童生徒1人1台のコンピュータ端末の整備、ネットワーク環境の整備、クラウド活用の推進など、ハードとソフトの両面から自治体や学校に対して具体的な支援策を国は早急に取り組むべきだと提言した。  義務教育9年間を見通した教科担任制を巡る論点では、学校規模の観点や各学校や地域の実情を踏まえ、柔軟に教科担任制を実施できることが必要としている。義務標準法も含め教科担任制に必要な教員定数の確保や、教科指導の専門性を高める教員養成・研修の仕組みの構築や教科指導・探究活動など専門性の高い教員の学校種を超えた配置を進め、教育職員免許法の在り方を含め義務教育9年間を見通した養成、採用、研修、免許制度、教育課程などを検討する必要性に触れている。  また、幼児教育の質向上を巡っては、小学校教育との円滑な接続や質の評価を通じたPDCAサイクルの構築が図られていることなどを、新しい時代を見据えた教育の将来像の方向性の論点として加えた。  質疑のなかで、同特別部会の東重満委員(学校法人東学園美晴幼稚園園長)は「私立幼稚園や保育所にも障害がある子供、あるいは性同一性障害の自覚をもっている子供がいる」と意見し、多様な児童をケアできる支援体制の充実を訴えた。  同特別部会の今後のスケジュールは年末までに同特別部会の「論点とりまとめ」を行い、年明け以降は各部会の具体的な検討事項を整理する予定。


 

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