こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2018年12月23日号二ュース >> VIEW

記事2018年12月23日 2463号 (1面) 
平成31年 年頭の所感:柴山文部科学大臣

平成三十一年 年頭の所感


 


 


文部科学大臣 柴山 昌彦  


 


 


(はじめに)


 平成三十一年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。国民の皆様と日本社会が繁栄する年となるよう祈念いたします。


 昨年は私が文部科学大臣に就任し、種をまく時期でした。今年はその種が大きく芽を出し、そして伸びる一年になるよう、年頭に当たり、決意を新たにしております。


 


 まず、文部科学省の改革については、若手職員も参画する「文部科学省未来検討タスクフォース」が昨年十二月に省改革に関する提言を取りまとめたところであり、私が本部長の「文部科学省創生実行本部」における議論に反映するとともに、今後、文部科学省一丸となって文部科学省の再生に向けて一つ一つの取組を真摯に積み重ねて、皆様の信頼回復に向けて全力を挙げてまいります。


 


(教育について)


 今、教育は大きな転換点にあります。次の四点について特に力を入れて取り組んでまいります。


 一点目は、新時代の学びを支える先端技術の活用です。「ソサエティ5.0」の時代こそ、学校は人間としての強みを伸ばしながら、人生や社会を見据えて学び合う場となることが求められます。昨年十一月に「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて〜柴山・学びの革新プラン〜」をまとめたところですが、児童生徒の学びの質を高めるため、教師を支援するツールとして、遠隔教育を含めた先端技術の活用を進めてまいります。具体的には、2020年代の早期にすべての小中高校で遠隔教育を活用できるようにすること、先端技術の導入による教師の授業支援、学校のICT環境整備などに取り組んでまいります。 


二点目は、学校における働き方改革の推進です。安倍内閣が「働き方改革」を実行する中で、教職の専門職としての教師にふさわしい勤務環境を確保し、我が国の義務教育の高い成果を支える持続可能な体制を確立するため、本年を「学校における働き方改革」を加速する年と位置づけ、その実現に向けて全力で取り組んでまいります。


これを実現すべく、昨年末、中央教育審議会において答申素案が示され、意見募集においても多くのご意見をいただきました。これらを踏まえて、勤務時間管理の徹底や業務の明確化・適正化、教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革、小学校における質の高い英語教育のための専科指導等に必要な教職員定数の改善充実、部活動指導員やスクール・サポート・スタッフ等の外部人材の配置拡充などを総合的に推進します。 


三点目は、家庭の経済事情に左右されることなく、誰もが希望する質の高い教育を受けられるよう、教育の無償化・負担軽減を推進することです。一昨年十二月に閣議決定された新しい経済政策パッケージ及び昨年六月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」に基づき、関係府省と十分に連携を図りつつ、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育の無償化・負担軽減の施策の具体化に向けた検討を進めてきたところです。


幼児教育の無償化については、本年十月からの実施に向けて、地方自治体とも連携しながら、しっかりと準備を進めてまいります。


高等教育については、二〇二〇年度から、大学、短期大学、高等専門学校及び専門学校の全ての意欲ある住民税非課税世帯の学生等について、授業料減免措置を講ずるとともに、支援を受けた学生等が学業に専念できるよう、学生生活を送るのに必要な生活費を賄うため、給付型奨学金の支給額を大幅に増やします。また、住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、必要な支援を行います。


さらに、二〇二〇年度までに年収五百九十万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現します。また、高校生等の奨学給付金の充実にも取り組みます。


四点目は、大学改革の推進です。十八歳人口の減少が予想される中で、国の知的基盤である大学が我が国の成長・発展を牽引し、新たなイノベーションを創出する人材を育成できるよう、高等教育全体の構造転換が必要です。このため、変化に対応した人材育成、全ての人が活躍し続けられる社会をつくるための人材への投資、大学改革の推進と教育研究力の強化を一体的に進めてまいります。


具体的には、大学入学者選抜改革や文系・理系にとらわれない新しいリテラシーに対応した教育など、Society 5.0に対応した大学教育改革を進めます。また、教学マネジメントに係る指針の策定、学生が身に付けた能力・付加価値の見える化など、教育の質の保証に取り組んでまいります。大学の基盤強化、連携・統合については、国立大学の一法人複数大学制度の導入や大学ガバナンスコードの策定、学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化、国公私立の枠を越えた連携を可能とする「大学等連携推進法人(仮称)」の制度創設の検討などに取り組んでまいります。併せて、リカレント教育を抜本的に拡充し、生涯にわたって学び続け、チャレンジし続けられる機会の確保を目指します。これらのことをパッケージとして進めてまいります。


 


(科学技術について)


 昨年、本庶佑(ほんじょたすく)京都大学特別教授が、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。本庶先生の受賞は、我が国の高い研究水準を世界に示し、がんに苦しむ世界中の人たちに大きな希望を与えるものであり、先生の業績に心からの敬意を表したいと思います。


 一方、我が国の研究力は、諸外国に比べ相対的に低下傾向にあります。このような現状を一刻も早く打破するため、科学技術イノベ―ションについては、次の三点に特に力を入れて取り組んでまいります。


一点目は、研究「人材」「資金」「環境」の改革を、「大学改革」と一体的に進め、科学技術イノベーションシステム改革を加速することです。具体的には、研究「人材」の改革として、若手研究員のポストの確保や、キャリア形成に資する流動性確保と支援強化などに取組みます。研究「資金」の改革については、若手研究者への重点支援、科研費改革の実行・検証、新興・融合領域への取組や国際共同研究の強化などに取組みます。また、研究「環境」の改革については、研究施設・設備の共用の促進や研究者の事務負担の軽減などに取組みます。


 二点目は、オープンイノベーションの加速による官民投資の拡大です。昨年六月閣議決定された「統合イノベーション戦略」において示された、「2025年までに民間投資3倍」の実現に向けて、大学等におけるオープンイノベーションを強化する体制の構築支援など民間投資を誘発する施策を加速いたします。具体的には、大学等において優れた研究者を部局を超えて組織化し、事業家・知財等の専門人材により企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究を集中的にマネジメントする体制の構築を支援(「組織」対「組織」の産学官連携)してまいります。また、起業に挑戦しイノベーションを起こす人材の育成、創業前段階からの経営人材との連携等を通じて、大企業、大学、ベンチャーキャピタルとベンチャー企業との間での知、人材、資金の好循環を起こし、ベンチャー・エコシステムの創出に取り組んでまいります。


三点目は、大規模研究開発プロジェクトの推進です。具体的には、次世代放射光施設など物質科学等を支える最先端の研究基盤をはじめとする大型研究施設等の整備・共用を促進するとともに、二〇二〇年度に初号機打上げを目指したH3ロケットの開発や、同時期に地球への帰還が予定されている「はやぶさ2」に代表される宇宙探査の推進など、国内外で大きな期待と関心が寄せられている宇宙・航空分野の研究開発や、海洋・極域、原子力に関する研究開発など、国主導で取り組むべき基幹技術を推進します。 


 


(スポーツ・文化)


 本年は、わが国でラグビーワールドカップが開催されます。そして、来年はいよいよ二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。これらの大会に向けた取組を強力に進めるとともに、草の根レベルのスポーツもしっかりと底上げをしていく必要があり、スポーツの実施率の向上、障害者スポーツの振興、学校体育の充実等に取り組みます。


また、スポーツ団体のガバナンスの問題などについても大きな目が注がれている中、スポーツ活動が公正かつ適切に実施されるよう、昨年12月に策定した「スポーツ・インテグリティの確保に向けたアクションプラン」に基づき統括スポーツ団体等との緊密な連携の下、スポーツ・インテグリティ確保のための取組を進めてまいります。


 文化については、二〇二〇年東京大会の成功に向け、「日本博」等の「文化プログラム」を全国で展開し、日本遺産等の様々な文化資源を活用しながら、伝統文化から現代芸術まで幅広い文化による国づくりをオールジャパンで推進します。


また、文化芸術の振興に加えて、世界に誇れる我が国の文化資源を付加価値を付けてより魅力あるものに磨き上げ、文化資源を活かしたまちづくり・観光拠点形成への支援など、文化を通じた観光振興・地域活性化にしっかりと取り組んでまいります。


 


(終わりに)


 以上、年頭に当たり、特に力を入れて取り組んでまいりたい点を中心に所感を申し上げました。 


私としては、復興の加速化をはじめ、文部科学行政全般にわたり、信頼の回復に努めつつ、「人づくり」をはじめとした諸課題の解決に着実に取り組む考えです。引き続き国民の皆様の御理解、御支援をよろしくお願い申し上げます。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞