こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2018年1月23日号二ュース >> VIEW

記事2018年1月23日 2431号 (1面) 
スポーツ関係予算340億円前年度比6億円増
文科省平成30年度予算詳報
新規に運動部改革プラン 武道等指導支援も継続

政府は1月22日、平成30年度政府予算案を国会に提出した。文部科学関係予算のスポーツ関係予算は総額340億円で前年度から6億円増となっている。そのうち学校体育および運動部活動に関しては、前年度から継続の武道等指導充実・資質向上支援事業(1億9052万円)に加えて、新たに「運動部活動改革プラン」に対して8005万円の予算が付いたことが注目すべき点といえる。現在、運動部活動では、児童生徒の身体的な負担への考慮、体罰の防止、教員の業務負担の軽減が課題となっている。


運動部活動改革プランは、平成29年度中に完成予定の「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を踏まえたもの。主に公立の中学校・高校において運動部活動の実践・調査・実証研究を行い、各学校において「持続可能な運動部活動」が行われるよう、研究結果の周知・普及を図る。  ガイドラインは現在、スポーツ庁が設置した検討会議が議論を重ねている。運動部活動における(1)練習時間・休養日の設定等、(2)指導の在り方と充実、(3)外部人材「部活動指導員」の活用、(4)今後の運動部活動の運営の在り方などについて、考慮が望まれる基本的な事項や留意点などをまとめたものとなる。児童生徒にかかる身体的な負担への考慮や、体罰の防止なども扱うが、教員の業務負担を軽減することに重点が置かれる。  ただ、部活動が大きな原因となっている教員の長時間勤務は特に公立校の問題であり、対して私立校には部活動が活発であることを特長とし、生徒募集と不可分となっている学校も少なくない。この公私間の性格の違いは、検討会議においてガイドラインの実効性に関わる論点ともなった。一つは休養日の設定などの規制についてで、公立私立を問わずに求めないと浸透しないのではないか、との意見が出ている。もう一つは部活動指導員の配置についてで、私立校ではその手当などが全て学校負担となるため取り組みが難しく、予算措置が必要だとの意見が出ている。  平成30年度の運動部活動改革プランは、そうしたガイドラインを踏まえた実践・調査・実証研究を中核とする事業となる。テーマを大きく五つに整理して、教育委員会および民間団体に委託して進められる。  計11地域の教委に委託するテーマには、(1)ニーズの多様化への対応、(2)地域・家庭によるスポーツ活動への移行、(3)学校医・産婦人科医との連携、(4)競技大会の運営の在り方がある。(1)の取り組みには、適度な活動量や強度を望む生徒への対応となる「ゆるスポ」と称する運動や、少子化による部員減少への対応として地域単位での「合同部」の設置などがある。多様な運動機会の充実によって運動習慣を形成することなどを狙いとしている。(2)は教員の負担軽減が主な目的で、地域活動への一部移行を図ることで、生徒の総運動時間は確保しながら学校部活動の時間を抑制する。(3)はガイドラインが示す練習時間・休養日の設定にも関わるもので、長時間活動の是正を主な課題とする。外傷やスポーツ障害の予防を図るだけでなく、科学トレーニングの導入による効率的・効果的な活動の実現も目指す。併せて女子成長期におけるスポーツ活動に対する理解の促進を図り、女子の運動参加を促していく。(4)は競技大会の引率教員の負担軽減を主眼としている。大会数の増加によって活動量が増しているという現状があるため、競技大会の運営を見直し、開催数の適正化を図る。  民間団体4団体に委託するテーマには、(5)企業・クラブチーム等との連携がある。民間資金の活用(スポンサーの獲得)やプロチームとの業務提携などで運動部活動を運営することで質の向上を目指す。これも基本的には公立校での取り組みを想定している。  これら5テーマの実践・調査・実証研究で得られた知見は、スポーツ庁の「運動部活動の在り方に関するアドバイザリー会議」がまとめ上げる。同会議では外部有識者により研究などの実施状況を把握。そして実施結果の周知・普及に向けた検討を行う。その周知と普及で各学校において「持続可能な運動部活動」が実施される、というのが運動部活動改革プランの概要となっている。  学校体育に関しては、他に「武道等指導充実・資質向上支援事業」がある。武道などの安全かつ円滑な実施のために教員の指導力向上を図るという取り組みで、予算額は前年度並みの1億9052万円となった。中学校の新学習指導要領では武道指導の内容の充実が図られるため、それを視野に入れての取り組みが図られる。柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道の9種目について、指導ガイドラインの作成・改善を行うだけでなく、指導者データベースの整備なども行う。また、中学校の保健体育において武道などを必修化したことによる成果と課題の検証、課題解決のための指導法の検討も大学に委託して実施する。 また、部活動の適正化に関しては新たに「部活動指導員配置促進事業」に15億円の予算が付いた。部活動の適正化を進めている教育委員会を対象に、部活動指導員の配置にかかる経費の一部を補助することで、中学校における部活動指導体制の充実を推進し、担当教員の支援を行うとともに、部活動の質的向上を図る、というもの。適正化の例には「適切な練習時間や休養日の設定」を挙げるが、文化、科学に関する部活動も対象としている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞