こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2017年6月13日号二ュース >> VIEW

記事2017年6月13日 2411号 (1面) 
社会全体で人材 投資を抜本強化 改革の在り方早急に検討
骨太の方針2017閣議決定
財源を確保し必要な負担軽減進める
30年度予算無駄な予算排除、メリハリ付ける

政府は6月9日、総理官邸で経済財政諮問会議(議長=安倍晋三総理)と未来投資会議(同)を合同で開き、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針2017」)と「未来投資戦略2017」を決定し、その後、閣議決定した。このうち「骨太の方針2017」は、「人材への投資を通じた生産性向上」を副題に掲げ、教育に関しては、教員の長時間勤務状況の是正へ向け年末までに緊急対策を取りまとめ、教育成果に基づく私学助成の配分の見直し等による大学教育の質の向上、大学の組織再編を進めるための枠組み等整備に向けた検討、リカレント教育の充実等を進めるとしている。


 「骨太の方針2017」では、成長と分配の好循環の拡大と中長期の発展に向けた重点課題に、「働き方改革と人材投資を通じた生涯現役社会の実現」「成長戦略の加速等」「消費の活性化」「地方創生、中堅・中小企業・小規模事業者支援」「安全で安心な暮らしと経済社会の基盤確保」の5項目を提示。そのうち「働き方改革と人材投資を通じた生涯現役社会の実現」に関しては(1)働き方改革、(2)人材投資・教育、(3)少子化対策、子ども・子育て支援、(4)女性の活躍推進を進める必要性を強調。このうち人材投資に関しては、社会、経済が大きく変化した現在では、多様な教育について全ての国民に真に開かれたものとしなければならないとし、その第一歩として幼児教育・保育の早期無償化・待機児童の解消に向け、財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用を含め、安定的な財源確保の進め方を検討し、年内に結論を得て、高等教育を含め、社会全体で人材投資を抜本強化するための改革の在り方について早急に検討を進める、としている。また教育の質の向上等に関しては、教員の適正な勤務時間管理のため、業務の効率化・精選、勤務状況を踏まえた処遇の見直しの検討を通じて長時間勤務状況の早急な是正を図るとしている。  高等教育に関しては、確実に進学を後押しする観点から必要な負担軽減策を財源を確保しながら進めること、大学教育の質の向上のためには、教育課程等の見直し、教育成果に基づく私学助成配分の見直し、大学の質や「成果」の見える化・情報公開、成績評価の厳格化等を推進し、知の基盤強化を図る方針。さらに外部人材の登用の促進、ガバナンス改革など経営力強化のための取り組み、設置者の枠組みを超えた大学の連携・統合を可能とする枠組みや経営困難な大学の円滑な撤退や事業継承が可能となる枠組みの整備に向けた検討を進めるとしている。  人材投資を効率的に行うために必要な教育基盤の確立に向けては、教育再生実行会議の提言も踏まえつつ、新たな教育振興基本計画を平成29年度内に策定し、総合的な取り組みを推進するとしている。さらにリカレント教育等の充実に関しては、企業内だけで人材育成を行うことは技術的にも、資金的にも厳しい状況となっているとして、都道府県、大学、高校、公設試験研究機関、地元産業界等の参加等により地域人材育成を図る仕組みを構築する方針。また、離職した女性の復職や再就職、社会人の学び直しを支援するため、受講しやすい講座の充実・多様化や教育訓練給付の対象の拡大、専門職大学の創設、大学等における食分野、観光分野等(農業、デザイン、ファッション、ヘルスケア、IT、コンテンツ等の分野を含む)の実践的な専門教育プログラムの開発促進等を進めるとしている。  働き方改革では、同一労働同一賃金、時間外労働の上限を明確化、テレワーク、副業・兼業のルール作り、保育、介護の受け皿整備、女性、若者、高齢者、障害者の就労支援、高度外国人材の積極的受け入れを進める。  そうしたことで600兆円経済の実現と同時に、2020年度までに基礎的財政収支を黒字化し、債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す方針に変わりはなく、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という三つの改革を確実に進めていく。そのため、平成30年度の政府予算編成に関しては、人材投資や研究開発投資等を強化するとともに、無駄な予算を排除し、厳格な優先順位付けを行い、メリハリの付いた予算とする。




未来投資戦略2017では


数理・データサイエンス教育強化


一方、「未来投資戦略2017」は、Society5.0の実現に向け、健康寿命の延伸や移動革命の実現、サプライチェーンの次世代化など五つの戦略を定めている。それらを実現する横割り課題の中に教育・人材力の抜本強化が取り上げられており、目指すべき社会像としては、「生涯学び直し」を続けられる人材の厚みが生まれ、あらゆる産業でITとの組み合わせが進行、IT力を活用し、付加価値の創造を絶え間なく行う姿を描いている。そうした社会実現のためには、IT人材需要を把握する仕組みを早急に構築し、スキル標準を平成29年度中に策定するとしている。  また、産業界のニーズを継続的に把握しつつ情報共有を目的に、産業界と教育界による官民コンソーシアムを29年度中に設立し、取り組みを開始する。さらに理系・文系を問わず大学において数理・データサイエンス教育の強化を進め、工学教育についても学科ごとの縦割り構造を見直し、学士・修士の6年一貫教育といった教育年限の柔軟化等の検討を、29年度中を目途に行い、31年度から本格実施を目指す。  このほか、大学保有資産の魅力向上、一層の有効活用に向け新しい活用モデルを広めるため、制度の見直し方針を29年度中に策定。また、大学等への土地・株式の寄付を活発化するため、受け入れ実態の把握等の結果を受けて、29年度中に具体策や制度の在り方を検討することにしている。


 


 

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞