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記事2017年4月3日 2404号 (1面) 
高等教育機関全体の機能・役割等審議する将来構想部会設置
中教審・大学分科会 将来構想審議始まる
制度・教育改革WGも設置予定
内閣官房有識者会議への意見早急に議論へ

第9期中央教育審議会が発足して初の大学分科会(第134回)が3月29日、文部科学省で開かれた。この日は、永田恭介・筑波大学長を分科会長に再任後、同分科会の部会構成等を討議し、3月6日の中教審総会で諮問された「2040年頃の社会を見据えた我が国の高等教育に関する将来構想」に関して高等教育機関全体の機能・役割、振興策の基本方針を審議する「将来構想部会」を同分科会の下に設置することを決めた。また同部会の下には高等教育機関の各学校種の教育の改善方策について制度面を中心に審議する「制度・教育改革ワーキンググループ(仮称)」が設置される予定。加えて今国会中に関係法令等が成立した後、新たな「専門職大学等」の制度設計に関する作業チーム(仮称)の設置も決まった。31年度からの設置に向け設置基準等を検討予定。大学分科会の大学院部会、法科大学院等特別委員会、認証評価機関の認証に関する審査委員会は継続する。


この日は、諮問された「我が国の高等教育に関する将来構想」についての審議の前に、(1)大学設置基準等の改正、(2)認証評価機関の認証が総会を経ない形で諮問された。  このうち(1)は、大学が行う業務が複雑化・多様化する中で、事務職員・事務組織にこれまで以上の役割を期待するもので、設置基準上の事務組織の設置理由を、「事務を処理」するから「事務を遂行」するとの表現に改める。また、国際連携学科に係る卒業の要件について、「国際連携教育課程に係る授業科目の履修により修得する単位数には、入学前の既修得単位の認定により修得したものとみなす単位を含まないものとする規定について、国際連携教育課程を編成し、及び実施するために特に必要と認められる場合は、この限りではないこととする」と改めるもの。相手国大学の制度に柔軟に対応できるようにするのが目的。大学のほか、大学院、短期大学、専門職大学院、高等専門学校でも同趣旨の改正を行う。  (2)は、新たに公益財団法人大学基準協会によるデジタルコンテンツ系専門職大学院に対する認証評価の創設を問うもの。(1)と(2)は、それぞれ異論なく承認された。(1)は今年4月1日の施行。  3月6日に諮問された「我が国の高等教育に関する将来構想」に関しては、諮問で検討を要請した四つの審議事項を文科省が説明、1年半程度の審議期間で最終答申をまとめてほしいとしたが、山本幸三・まち・ひと・しごと創生担当大臣が開催している「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」が5月中旬にも中間報告案を取りまとめる見通しにあることから、4月中にも大学分科会としての意見を同有識者会議に伝える予定。また、第3期教育振興基本計画に関しては年末までに答申をまとめることから、それに合わせて大学分科会としても意見を示す必要があることも説明された。  我が国の高等教育に関する将来構想についての審議では、「東京一極集中を是正する際に産業、企業を切り離して議論はできない」、「大学の機能分化、七つのタイプを現実のものにすべきだ」、「大学を固定化させる機能分化はよくない。地方の大学はこういう大学だというのでは不幸。地方の大学もグローバル化を目指していい」、「学位プログラムをしっかり押さえないと、(日本の大学は)国際的に通用しない」といった意見が出された。  また、「都心の(大学等の)新増設抑制には副作用があるので慎重に議論してほしい。今の枠組みで国公私立大学間の統合は可能なのか」、「質・量の面で大きな手を打たないと日本の高等教育人口は萎んでしまう。各大学が性根を据えて大胆な改革をすべきだ。学生の30%くらいを留学生にするという構造にしていく必要がある」、「国公私立大学間の格差をもう少し考えてほしい。そうでないと高等教育全体の質を下げてしまうことになる」、「高等教育で学んだことない層に高等教育の提供の仕方を考えるべきだ」、「職がなければ若者は地方にとどまらない。大学をどうするかよりも産業を各地域に持っていく議論が必要だ」、「形式的規制については疑問がある。地方に合ったプログラム作りが大事」など、多くの委員が地方の大学についてきめ細かな振興を進めることに異論はなかったが、都心の大学の定員抑制については、大学の活力の低下を懸念する意見が複数の委員から出された。東京一極集中の是正と地方大学の振興をどう実現するのか、若者の就職問題も絡んでおり、大学の定員管理だけで実現するほど簡単な問題ではないが、まち・ひと・しごと創生本部の「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」では、地方創生の観点から地方大学に期待される役割(例えば保育士、看護師など地域を担う人材の育成、社会人の再教育、企業との連携によるイノベーション、地域のシンクタンク)や、東京の大学の新増設の抑制、東京の大学・学部の地方移転が議論されているが、規制をかけることには賛否両論があり、地方移転でも地方大学との競合しない分野で、地域ニーズがあるところが出ていくようにすべきといった意見が出ている。

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