こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2016年9月3日号二ュース >> VIEW

記事2016年9月3日 2384号 (1面) 
私立中学校等児童生徒に授業料負担軽減新規要求 文部科学省
平成29年度概算要求を公表
年額14万〜10万円を支援
対象は年収590万円未満程度まで

文部科学省は8月30日、平成29年度概算要求を公表した。その中で新規事業として「私立中学校等に通う児童生徒への授業料負担の軽減」が要求された。要求・要望額は12億8300万円。家庭の経済事情にかかわらず私立中学校の多様で特色ある教育を選択できるよう、低所得世帯を中心に授業料支援を行うもの。私立小中学校に通う児童生徒のうち、約1万1千人が年収400万円未満の世帯。今回の新規事業では、高校等就学支援金の場合で支給額が割り増しされる所得層に該当する年収590万円未満程度以下の所得層を支援する。


就学指定された地元の公立中学校を辞退して特別な教育を行う国・公立の中高一貫教育校に進学した国公立生は教育基本法や学校教育法によって授業料が無償とされているが、同様に地元の公立中学校を辞退して私立中学校に進学した生徒には何ら経済的支援策はなく、公的奨学金すらないのが現状。  そのため日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学高校理事長・校長)は政府や自民党等に公的支援制度の創設を要望してきた。  新規事業は私立中学校等に通う児童生徒へのセーフティーネットの構築の観点から授業料支援を行うもので、対象学校種は、私立の小学校、中学校、中等教育学校(前期課程)、特別支援学校(小学部・中学部)。  支給額(年額)は年収250万円未満程度(市町村民税所得割、非課税)で14万円、年収250万〜350万円未満程度(同、5万1300円未満)で12万円、年収350万〜590万円未満程度(同、15万4500円未満)で10万円。  年収590万円未満程度以下の支援対象者は約1万2千人に上る見込み。29年度の対象は1年生のみ。以降、学年進行で対象学年が増えていく予定。支援のスキームは、支援金を学校法人が代理受領し、授業料と相殺するというもので、既存の高校等就学支援金と同様な仕組みとなる予定。  文部科学省の平成29年度概算要求・要望総額は、前年度比9・5%(5051億円)増の5兆8266億円に上る。学ぶ意欲と能力のある全ての子供・若者、社会人が質の高い教育を受け、一人一人がその能力を最大限伸長できる「一億総活躍社会」の実現を目指している。このうち私学助成関係予算の要求・要望総額は4761億円で前年度比458億円の増額。  その中で「私立大学等経常費補助」は、前年度比125億円増の3278億円で、内訳は一般補助が2734億円、特別補助が544億円、それぞれ前年度比32億円、93億円の増額。  同特別補助では、新たに「地域を支える私立大学等連携プラットフォーム形成支援事業」(要求額5億円)を要求している。これは地域の私立大学等が自治体や産業界、地域の教育機関と密接に連携・協力、地域全体の強み・潜在力を最大限引き出すためのプラットフォーム形成や地域発展、大学間・産学連携など大学等の特色化・機能強化を支援するもの。私立大学等改革総合支援事業(263億円)等とも連動し、経常費・設備費・施設費を一体とした重点支援等を進めていく。  また、私立高等学校等経常費助成費等補助は1059億円の要求で、前年度比35億円の増額。生徒等1人当たり単価は前年度比1・2%の増額を要求している。1059億円の内訳は、一般補助が886億円、特別補助が144億円、特定教育方法支援事業が28億円。  さらに私立学校施設・設備の整備の推進には前年度比297億円増の402億円を要求している。297億円の増額要求は耐震化等の促進に前年度比180億円増の225億円を、教育・研究装置等の整備に同116億円増の176億円を要求したため。225億円の内訳は、耐震改築(建替え)事業が135億円、耐震補強事業が78億円、その他耐震対策事業(非構造部材等、利子助成)が13億円。平成28年度までの時限措置となっている耐震改築補助制度を延長することも要望している。  私立学校施設の耐震化率は国公私立学校を下回る状況。今年4月現在、国公私立学校では耐震化率が約98%となっているのに対して、私立高校等では約86%、私立大学等では約89%にとどまっており、政府の平成28年度第2次補正予算案でも私立学校施設の耐震化等防災機能強化に301億円が計上されている。  このほか高校生等の奨学給付金では非課税世帯(全日制等)の第1子の給付額を私立の場合、7千円増額要求している。また小・中学生のいる低所得世帯の高校生等の支援を強化する。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞