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記事2016年9月23日 2386号 (1面) 
大学入学希望者学力評価テストのプレテスト実施
文科省平成29年度概算要求の新規事業
「記述式」の作問・採点を含めてテストの信頼性等検証
専修学校活用した地域産業人材育成事業も

文部科学省が8月末までに財政当局に提出した平成29年度概算要求については、本紙9月3日号で私学関係項目を中心に報告したが、同概算要求にはさまざまな新規事業が盛り込まれている。ここでは私立学校にも関係する新規概算要求事項のうち主なものを報告する。


高等教育関係では、「高大接続改革の推進」に64億円を要求している。そのうち「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」プレテストの実施が新規事項(要求額は11億円)。  平成32年度から実施する予定の「大学入学希望者学力評価テスト」を円滑に導入・実施するため、「記述式」の作問・採点を含むテストの信頼性・妥当性についての実証的検証、試験問題の難易度、運営上の問題の検証、トラブル発生時の検証、民間知見の活用等を行うため、試行テストを行うもの。  具体的には平成30年度に10万人規模で行う大規模プレテスト実施のための検証も含めて、5万人規模(首都圏100試験場で)の試行テストを実施するもので、実施企画、「国語」、「数学」、「地歴・公民」、「理科」、「英語」、特別な配慮等の試験問題の作成、作成問題のチェック・分析、記述式問題の採点支援システムの構築および採点マニュアル作成(「国語」、「数学」)、志願票、受験票、成績提供等のテストシステムを構築する。  特に大学入学希望者学力評価テストの特徴ともなる記述式問題の実施方法、採点方法等の検証、実施運営要領(実施要領、監督要領等)の作成を含む試験実施体制の構築を目標としている。  また大学教育再生の戦略的推進(要求額266億円)では、「卓越大学院プログラム(仮称)構想推進委託事業」(要求額0・4億円)、「高度専門職業人養成機能強化促進委託事業」(2億円)、「獣医学アドバンスト教育プログラム構築推進委託事業」(0・5億円)が新規要求項目。このうち「卓越大学院プログラム(仮称)構想推進委託事業」では平成30年度から構築する卓越大学院プログラムがより実効性の高いものとなるよう、公募・審査等の検討を大学院教育・研究について専門的知見を有する機関へ委託する。卓越大学院(仮称)とは、文理融合分野など異分野の一体的教育や、わが国の強い分野の最先端の教育を可能にし、国内外の企業や研究機関等と連携して世界最高水準の教育力、研究力を有する大学院のこと。「高度専門職業人養成機能強化促進委託事業」は、社会のニーズを踏まえつつ、一定分野でのコアカリキュラムの策定および実証・改善、成長分野における教育プログラムの開発等を行う。主な調査研究テーマは「ビジネスおよびMOT分野におけるコアカリキュラムおよび教育プログラムの実証・改善」「成長が見込まれる分野や産業界のニーズが高い分野のモデルとなる教育プログラムの開発」「専門職大学院における主要分野のコアカリキュラムの策定およびモデルとなる教育プログラムの開発」。  「獣医学アドバンスト教育プログラム構築推進委託事業」は、国際水準の動物・畜産物の安全性確保に関わる即戦力となる獣医師を養成するため、公衆・家畜衛生分野と産業動物臨床分野のアドバンスト教育プログラムを構築するもので、受託機関と協力大学等が協働して調査研究を実施する。  医学・医療分野では、「多様な新ニーズに対応するがん専門医療人材(がんプロフェッショナル)養成プラン」(要求額24億円)や「基礎研究医養成活性化プログラム」(要求額2億円、「大学病院経営支援人材養成プログラム」(要求額9億円)が新規事業。  また大学教育のグローバル展開力の強化では、「G7諸国との大学間交流形成支援」(要求額3億円)が新規要求。同事業は今年5月に開催されたG7倉敷教育大臣会合の合意を踏まえ、わが国の大学とG7諸国の大学との間の交流枠組みを強化する教育連携プログラムを支援するもの。  一方、初等中等教育関係の、教育課程の充実(要求額43億2千万円)では、「小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する研究」(要求額5300万円)、「高等学校における総合的な学習の時間の抜本的な改善・充実」(要求額1億9800万円)、「キャリア・パスポート(仮称)普及・定着事業」(要求額4100万円)が新規事業。また「特別支援教育の充実では、新たに特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築研究開発事業等」を新規に行う(要求額1億5200万円)。これは、小・中・高校等における発達障害を含む障害のある児童生徒等に対する特別支援教育の体制充実のための組織強化を図るため、学校経営の在り方や、必要なノウハウなどについて、大学教授等の専門家を活用し調査研究を行うもの。  生涯学習関係では、「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」(要求額4400万円)を新規要求している。  同事業は、学びの場として重要な大学の保育所整備が十分に進んでいないことから、保育環境整備を進めるとともに、キャリア形成支援を進めるもの。学びを通じた男女共同参画のための有識者検討委員会を設置、保育環境整備とキャリア形成支援の一体的実践事例の収集・分析、大学等における保育の仕組みづくりのモデル構築、地域と大学等による女性の学び支援研究協議会の開催などを実施する計画。  「専修学校を活用した地域産業人材育成事業」(要求額2億7200万円)も新規要求。業界の最新の人材ニーズに対応した教育を実施するため、各分野の専修学校と業界団体等による教育内容の即応的改編・充実のための仕組みづくりを支援することなどで社会人の学び直し環境整備を行うもの。具体的には14分野で専修学校と産業界・行政機関等を構成員とする協議会を創設、人材育成の在り方等を検討。また社会人等の学び直しにとって隘路(あいろ)となっている課題に対して、改善方策の検証・分析等を行う。

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