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記事2016年9月13日 2385号 (1面) 
私大の受託研究収入の非課税措置拡充を
平成29年度文科省税制改正要望
現物寄附の特例承認の手続き簡素化も要望

文部科学省は8月30日、平成29年度税制改正要望事項を公表した。要望事項は、別掲の通り、合わせて15項目。このうち私立学校に関係するものは、1「教育、科学技術イノベーション関係」の中の(1)〜(5)と、3「その他制度改正に伴うもの等」の(2)の計6項目。これら要望事項は、寄附や受託研究収入など私立学校の多元的な資金の獲得や、喫緊の課題である貧困の連鎖の解消、世代間格差の解消等を目指したもの。文科省はここ数年来、学校法人が個人から寄附金を集めやすいよう、個人が小口の寄附や所得税率が高くない場合に有利な「税額控除」を活用できるよう、学校法人が税額控除の対象となれる要件も緩和するなどしている。そのため大学法人の寄附金受け入れ総額は平成21年度の1317億円から平成26年度には1934億円に拡大、税額控除対象法人の個人現金寄附総額も平成21年度の118億円から平成26年度には275億円に増額している。


文科省の平成29年度税制改正要望事項を個別に見ると  〇私立大学が行う受託研究の受託研究収入の非課税措置の拡充(法人税等)=拡充 私立大学の受託研究は本来的には「請負」業として整理されるため、課税対象とされる。ただし一定の要件を満たす場合には非課税となる。非課税となる要件には、当該研究の成果の公表が基本的に前提とされているため、企業間で厳しい競争を展開する民間企業にとって「公表を前提」とすることには一部に抵抗感があり、大学と企業との間で交渉が難航することもある。そこでこうした要件を撤廃し、大学が民間企業から受託研究を受けやすくする環境を整備するもの。  本来的に受託研究が非課税の国立大学の受託研究の受け入れ総額は平成1526年度間で約1・7倍に増加しているのに対して、私立大学の受託研究の受け入れ総額は減少傾向にある。政府が今年6月に閣議決定した「日本再興戦略2016」では企業から大学等に対する投資額を2025年度までに現在の3倍に拡大することが目標とされており、こうした制約の撤廃が急務といえる。  〇災害からの復旧時における学校法人への個人寄附に係る税制優遇措置の拡充(所得税)=拡充 これは今年4月に発生した熊本地震を踏まえたもので、災害被害を受けた学校法人に対する災害から復旧時の個人寄附については、特段の要件なしに寄附者個人が所得控除に加え税額控除も選択できるようにするもの。公立学校に比べ公的補助の少ない私立学校にとって義援金や募金など小口寄附は極めて貴重なもの。  〇現物寄附へのみなし譲渡所得税等に係る特例措置適用の承認手続きの簡素化(所得税等、内閣府等との共同要望)=拡充  公益法人等に現物寄附(土地など)を行った場合、見直し譲渡所得税の非課税の特例措置を受けるためには国税庁長官の承認手続きが必要だが、膨大な申請書の提出および1年、2年といった期間が必要となるため、寄附された資産等が継続的に公益目的事業に用いられることが法人の会計において担保されている等の一定の要件を満たす場合には、承認手続きが大幅に簡素化されるが、そうした特例を都道府県知事所轄学校法人(私立高等学校等)にも拡大し、公益法人等への寄附の拡大を促進しようというもの。既に文部科学大臣所轄学校法人(大学等)については、そうした特例措置が認められている。  〇幼稚園・保育所等に土地を貸与した場合の非課税措置の創設(相続税等、内閣府、厚生労働省との共同要望)=新設  幼稚園・保育所等の敷地として土地を貸与した場合について、当該土地が相続・贈与された場合に、その後、引き続き一定期間貸与することを要件に、相続税・贈与税を非課税として都市部等における園地確保を図る。  〇教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の子供の貧困対策への拡充(贈与税、内閣府、金融庁、厚生労働省との共同要望)=拡充 祖父母等が孫等に対して一括贈与された教育資金に係る平成31年3月31日までの贈与税の非課税措置について、受贈者が「貧困の状況にある子供」であれば、贈与者を祖父母に限らず適用するよう拡大するもの。例えば篤志家が預け入れた資金(限度額は1500万円)で、貧困の状態にある子供の教育を支援(学校等の入学金や授業料、習い事など)することができ、政府が重要な政策と位置付けている貧困の連鎖の解消、世代間の格差の解消を図ることができる。  〇退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の撤廃(法人税等、厚生労働省、総務省、財務省等との共同要望)=新設  退職等年金給付(退職年金、職務障害年金、職務遺族年金)の健全な運営を確保し、私立学校教職員およびその遺族の生活の安定と福祉の向上を図るため、平成29年3月31日まで課税が凍結されている退職等年金給付の積立金に対する特別法人税を撤廃するもの。

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