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記事2016年8月3日 2382号 (1面) 
広域通信制高校の質確保向上協会者会議
大阪府や高萩市等から実情聴取
所轄庁の体制、連携等改めて課題浮き彫りに

株式会社立広域通信制高校・ウイッツ青山学園高等学校(三重県伊賀市)での極めて不適切な学校運営や就学支援金の不正取得(東京地検特捜部が捜査中)等の問題を受けて7月に発足した文部科学省の「広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」(荒瀬克己座長=大谷大学文学部教授)の第2回会合が7月28日、都内で開かれた。  広域通信制高校を所轄する大阪府と高萩市(茨城県)から現状や課題等を、また平成27年度に株式会社立から学校法人立に設置形態を変更した広域通信制の北海道芸術高校から学校の現状や教育成果等を聴取した。  この日は、同問題に積極的に取り組む文科省の義家弘介副大臣も出席、冒頭、伊賀市が正常な教育活動の担保のためさまざまな努力を続けている中で、ウイッツ青山学園高校が卒業要件に満たない生徒達に独断で卒業証書や成績証明書を発行していたこと、法令が定めた必要な教員がいないため、スクーリングも行えずにいること、同校以外でも一部に不適切な状況が見られることなどを指摘、調査研究協力者に改めて、広域通信制高校の質、在り方、進化の面について検討を要請した。  ヒアリングでは、大阪府教育庁私学課が、広域通信制高校へは毎年、現地での検査を実施、株式会社立学校に対しても学校法人立と同等以上の検査を実施しているなどを報告したが、その一方で広域通信制高校は3都道府県以上(学校によっては47都道府県)にまたがって活動するため、所轄庁(大阪府)のみで実態を把握、指導するのは困難で、本校・協力校以外の施設での面接指導が新たに認められたため、生徒の学習環境に著しい格差が生じていることなどを指摘した。  大阪府の広域通信制高校を巡っては委員との意見交換の中で一部の学校において教育の実態と異なる生徒募集が行われている可能性を懸念する意見等が聞かれた。  また高萩市は国の構造改革特区制度を活用して株式会社立広域通信制高校の設置を認めているが、指導監督の人的体制が極めて脆弱(担当室長は教育総務課長との兼務、その他、週1日勤務の嘱託職員が1人)のため広域通信制高校が全国に展開する学習センターの活動状況の把握と指導が困難な状況であり、地域とも十分交流ができないこと、こうした教育特区(大半が広域通信制高校)を認定した市町村は同じような課題を抱えていると訴えた。  北海道芸術高校は卒業生の活躍など教育の成果を説明したが、委員からは教員の研修体制や基礎学力の定着の取り組み等について質問があった。  3団体からのヒアリングの後、策定を進めている「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン」骨子案について討議した。骨子案は、学校の管理運営面では教員免許状を取得している教員の適正な配置、法令に基づく表簿等の適切な管理といったごく基本的なことから協力校、技能連携施設との適切な協力・連携のための措置、民間教育施設(サポート校)と連携する場合に留意すべき事項、一部の学校で不適切な事例も見られる編入学・転入学の適切な取り扱いなどを取り上げ、また、教育指導の面では、各教科の教員免許状を取得している教員による添削指導の実施、添削課題の回答形式、課題内容の工夫、添削指導の内容、教職員の監督下での試験の実施、パソコンやタブレット端末等を用いてオンラインで試験を実施する場合の留意事項等を、施設・設備の面では、授業に必要な実験・実習等のための施設の整備、体育の授業に必要な運動場の確保等が盛り込まれる見通し。荒瀬座長はガイドラインを実効性のあるものにするためには、所轄庁の体制、所轄庁間の連携が重要なことを強調した。次回会合は9月2日。

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