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記事2016年7月13日 2380号 (1面) 
実態調査、ガイドラインの在り方検討
広域通信制高校で専門家会議
違法、不適切な実態等受け 質の確保・向上実現へ

一部の学校で不適切な教育実態等が指摘されている広域通信制高校について、質の確保・向上のための実態調査と今夏にも策定するガイドラインの在り方を検討する専門家会議が文部科学省に設置され、7月12日、藤原誠・初等中等教育局長も出席して初会合が開かれた。同会議は弁護士や広域通信制高校の実態に詳しい大学教授、広域通信制高校長ら10人の委員で構成、荒瀬克己・大谷大学文学部教授が座長となった。


実態調査では、広域通信制高校106校と所轄庁を調査することにしており、特定の通信制高校と提携して混然一体となった管理運営がしばしば問題視されるいわゆるサポート校(=全日制高校に似せた環境で通信制高校に在籍する生徒が添削課題に取り組む際のサポート等を行う施設。学校ではなく法令上の根拠もない)との関わり等についても調査する。  またガイドラインには、教職員の配置や協力校、技能連携施設、サポート施設との連携、教育課程や添削指導、面接指導、試験、所轄庁における指導監督体制等の項目を盛り込むことなどを検討する。  昨年12月、株式会社ウイッツが設置するウイッツ青山学園高校(広域通信制高校、三重県伊賀市)等が就学支援金の詐欺容疑で東京地検特捜部の強制捜査を受けたことを受け文部科学省は、昨年12月、省内に義家弘介副大臣を座長とする「広域通信制高校緊急タスクフォース」を設置、5回の審議を経て今年3月30日、「広域通信制高校に関する集中改革プログラム〜我が国の広域通信制高校の教育・運営の改善に向けて〜」を策定・公表した。  ウイッツ青山学園高校を巡っては、全国40カ所以上に設置されたLETSキャンパス(一種のフランチャイズのように全国展開されたサポート校)で違法にほぼ全ての教育活動が展開されており、教員免許の失効した者が授業を実施、教育の年間指導計画等も作成されていなかった。こうした事態発覚後、文科省は高校学習指導要領の基づいた面接指導を受けなかった者に適切な指導体制で改めて同学習指導要領に基づいた面接指導を受講させる緊急的かつ特例的な救済措置を所轄庁の伊賀市に提案。しかしこうした回復措置の最中、卒業に必要な単位を満たさないにもかかわらず、同校が卒業証明書や卒業証書を送付していることが発覚。その後、伊賀市は同校に違法状態の速やかな是正を求める変更命令(学校教育法第14条)を発出、書面での報告を求めるなどしている。  株式会社立校については、構造改革特区制度を活用して設けられた学校で、地域の活性化や雇用の拡大等を目的として、比較的に小さな自治体(市町村)に設置される傾向だった。そのため、そうした株式会社立校を指導監督する体制は脆弱で、学校教育について十分な知見を有する職員も少なく、学校からの報告を受けるだけの傾向だった。一方、株式会社立校の中には利益重視の傾向の強い学校もあった。また広域通信制高校ということで、認可自治体が全国の状況を把握すること、出先機関が置かれる自治体では認可しているわけではないので、学校の実情を知ることも困難。そうした制度上の隙間がこうした問題の遠因になっている。最近でも北海道の広域通信制高校や長野県の広域通信制高校の問題が発覚、県が改善に乗り出している。  7月12日の会議の初会合では、不登校などで子供について悩んでいる保護者の受け皿や、大きな可能性を秘めた広域通信制高校が不祥事や違法行為を繰り返していることについて、「われわれが営々と築いてきた学校文化と基本原則がずたずたにされた」(日本放送協会学園高校の賀澤恵二校長)など、本来の役割を果たしていないことを残念がる意見が数多く聞かれ、また「通うだけが教育ではない。新しい時代の広域通信制高校に転換してほしい」と期待感を明らかにする委員(向後千春・早稲田大学人間科学学術院教授)も見られた。  文科省の緊急タスクフォースでは今年度から平成30年度までの3年間を集中点検期間としており、その間に実態調査、立ち入り調査、ガイドラインの策定・改訂、通信制高校に係る制度の見直し、第三者機関による評価の仕組みの検討、所轄庁相互の緊密な情報共有等の連携協力体制の整備、情報公開の促進等を進めることにしている。しかしこうした実態は私学関係団体が10年ほど前から指摘、文科省に改善を申し入れてきた経緯もある。

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