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記事2016年4月3日 2370号 (1面) 
平成32年度から大学入学希望者学力評価テスト実施へ
高大接続システム改革会議が最終報告

文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は、3月25日、同省内で開いた第14回会議で最終報告案の審議を行い、一部修文の後、「最終報告」としてまとめることを決めた。現在の大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」と、基礎学力の定着度合いを測る「高等学校基礎学力テスト」(いずれも仮称)について4月以降、専門家を交えた同省内のワーキンググループ(非公開)が学校関係者等と意見交換しながら、実証的・専門的検討を続け、平成29年度初頭に両テストの実施方針を策定・公表、「大学入学希望者学力評価テスト」を32年度から実施、「高等学校基礎学力テスト」については31年度から試行実施(本格実施は35年度〜)する。また個別大学における入学者選抜改革については毎年度、大学入学者選抜実施要項を検討してきた枠組みを充実して新たなルール策定や調査書様式の改善等を行い、29年度初頭を目途に各大学等に予告、32年度の入学者選抜から適用する、としている。


今後は、省内で実証的専門的検討


個別大学入学者選抜も新ルール策定


「高大接続システム改革会議」は、平成26年12月の中央教育審議会答申を踏まえ、昨年1月に文部科学大臣が決定した「高大接続改革実行プラン」に基づき設置され、同年3月以降、主に新テストの在り方や各大学の個別選抜、多様な学習活動・学習成果の評価の在り方を検討してきた。  最終報告案は、基本理念に当たる「検討の背景と狙い」、その方針に沿い具体的方策を列挙した「高校教育改革」「大学教育改革」・「大学入学者選抜改革」、「改革の実現に向けた今後の検討体制」等で構成されており、このうち「検討の背景と狙い」では、先行き不透明な時代にあっては多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力、混沌(こんとん)とした状況の中に問題を発見、答えを生み出し、新たな価値を創造していく資質・能力が重要で、そのため高校教育、大学教育と両者に大きな影響を与える大学入学者選抜の一体的改革が必要だと強調。  その上で高校教育改革に関しては、教育課程の見直しや、目標に準拠した観点別学習状況の評価の推進(指導要録の改善)、多面的評価の充実、高等学校基礎学力テストの導入等が必要と指摘。同テストについては、高校生の多様性を踏まえ、複数の難易度の問題から学校や受検者(個人での受検も可)が選んで受検(CBT方式での実施が前提)し、基礎学力の定着度合いを段階表示で結果提供する。問題については全国の教育委員会や高校等から既存の問題を収集、アイテムバンクに蓄積、良問については類似問題を作成するなどの方針。対象教科は全ての生徒が履修する範囲を上限に、国語、数学、英語(4技能を測定)とし、次期学習指導要領実施後は地理歴史、公民、理科等を追加導入する考え。  同テストについては最終報告案では、「正規の教育課程の一環として実施することも考えられる」と、また正規の教育課程の中でも受検しやすいテスト時間(おおむね50〜60分程度)としており、小・中学校の全国学力・学習状況調査(文科省実施)と近い性格のテストとなりそうだ。  大学教育改革に関しては、中央教育審議会大学分科会での審議内容を反映して三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れ方針)に基づく教学マネジメントの確立や認証評価制度の改革等を提言している。  大学入学者選抜改革に関しては、個別大学における入学者選抜を、多面的・総合的(調査書や活動報告書、面接、集団討論等)に評価する入学者選抜に改善していくこと、AO入試、推薦入試でも「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を適切に把握すること、また「大学入学希望者学力評価テスト」の導入が必要だとしている。同テストに関しては、知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価すること、試験の出題科目数についてはできるだけ簡素化すること、マークシート式問題に加え、条件付き記述式問題を導入、英語に関しては4技能を評価するが、民間の資格・検定試験の知見の積極的な活用等を検討する。また4技能のウエートのかけ方は各大学の判断となるようだ。テストの難易度は広範囲とし、36年度からCBT導入を目指す。テストの複数回実施は当面、見送る方針。両テストの実施主体は大学入試センターを抜本的に改組した新たなセンターとなる予定で、28年度中に必要な法令改正を行い、29年度を目途に設立する予定。  3月25日の高大接続システム改革会議では、「記述式問題は中途半端。想定されるメリットを実現できるのか」「大学教育で私学の割合は約8割。改革について私学も共有しているという思いを受け止められることをわずかでも記述できないか」「高校での観点別評価は難しい」などの意見が聞かれた

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