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記事2016年2月3日 2364号 (1面) 
進路選択に影響大きい小・中学時の実験・実習体験
理工系人材育成産学官円卓会議開催
産学の橋渡しの重要性確認
文科省経産省行動計画を策定へ

文部科学省と経済産業省が設置する「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」(座長=内山田竹志・トヨタ自動車株式会社会長)の第6回会議が1月28日、経産省本館で開かれ、大学教授や高校長ら3人から意見を聴取し、理工系人材の裾野の拡大や初等中等教育の充実策について検討した。またそれに先立ち経産省が独自に調査した「学生の文・理、学科選択に影響を及ぼす要因の分析」結果が報告された。それによると、小・中学時の電気・機械、プログラミングやロボットの実験・実習体験がその後の進路(理系)選択にとりわけ大きな影響力があることなどが分かった。


この会議は、政府の「理工系人材育成戦略」を踏まえ、昨年5月に設置され、産業界、大学等、省庁から計12人の委員が出て、(1)産業界の将来的な人材ニーズを踏まえた大学等における教育の充実方策(2)企業における博士号取得者の活躍の促進方策(3)初等中等教育等における産業を体感する取り組みの充実方策等の行動計画を検討している。  第6回会議では、初めに経産省の「学生の文・理、学科選択に影響を及ぼす要因の分析」結果が報告された。この調査報告は、40歳未満の社会人(有効回答者1万人)を対象に、自身の中等教育段階を振り返り、文・理選択や学科選択に影響を与えた要因等を回答してもらったもの。それによると理系志向は小中学時に大きく固まっており、文・理選択にあっては、「学びたい、関心のある分野との関連性」や「関連する科目の成績が良かったこと」が重視されていた。理系でいえば算数、理科の教科の成績となる。また文系進学者の半数近くが数学や理科が不得意でなかったら理系を選択した可能性があると回答していた。進路選択にあたって、文・理を問わず、両親の影響が大きく、特に男性は父親、女性は母親の影響が大きかった。さらに小中学時に学校や塾などで体験した木工・金属作品製作や化学、生物実験・実習の比率は高く、そのうち19%〜36%の比率で文・理・学科選択に影響を与えていたが、電気・機械実験・実習やプログラミング、ロボット実験・実習に関しては体験率は10%以下と低いものの、体験者の半数近くの割合で文・理・学科選択に影響していることも分かった。  その後、東京大学大学院情報学環/生産技術研究所の大島まり・次世代育成オフィス室長(教授)が同大学での産学連携による次世代人材育成の試みを報告、継続的な経済的・人的リソースの確保や研究者・技術者の教育参画に対する評価などが課題だと指摘した。また、キャタピラージャパン株式会社の塚本恵・執行役員・渉外・広報室長が女性理工系人材の育成・活躍、理工系進学者を増やすための裾野の拡大の取り組みを、米国のキャタピラー社の取り組みと併せ報告、楽しい数学・理科教育や、企業とのタイアップによるグローバルな体験の促進、政府等による学校と企業との橋渡しの必要性などを強調した。さらに、SSH校の千葉県立佐倉高校の小玉秀史校長が「理工系人材を育成するSSHに大きな力となる大学や企業との連携協力」について発表、大学の卒業論文にあたる「課題研究」を生徒に課しているが、教員だけでは指導は困難で大学や企業等の外部の力を借りることが重要なため、全国多くの高校生に最先端の研究や実験装置、施設に触れる機会を設けてほしいと訴えた。また小学校の教員のほとんどが文系出身のため、理系の実験・実習に期待することは難しいと語った。この後の委員による討議では企業や大学等による初等中等教育への触発的な協力や仲立ちの組織的システムの重要性などが確認された。

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