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記事2016年2月23日 2366号 (2面) 
文化庁文化審 常用漢字表の字体・字形指針とりまとめへ
“児童生徒の書いた漢字の評価は柔軟に”
社会の認知度はまだ低調

文化庁の文化審議会国語分科会漢字小委員会(主査=沖森卓也・立教大学教授)は2月9日、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)案」を取りまとめた。  今後、2月29日の国語分科会、3月の文化審議会総会を経て報告書としてまとめ、インターネットで公開する予定。  今回の指針案は、「漢字の字形に関して、手書き文字と印刷文字との違いが理解されなくなっていることや、文字の細部に必要以上に注意が向けられる傾向などが生じている」ことを国語施策の課題と捉え、その改善を図るもの。平成22年6月に文化審議会が答申した「改定常用漢字表」では、明朝体と筆写のかい書との関係を取り上げたが、4ページ足らずと簡単な説明だったため、今回の指針案では両者の関係について詳細に記述した。  国は、昭和24年の「当用漢字字体表」以降、漢字の手書きの伝統に配慮して、「これを筆写(かい書)の標準とする際には点画の長短・方向・曲直・つけるかはなすか・とめるかはね又ははらうか等について、必ずしも拘束しないものがある」との考えを示してきた。こうした漢字の字体の細部にこだわらない方針は60年以上にわたり引き継がれてきたものの、昨年行われた国語に関する世論調査では、手書きする際には印刷文字の形通りに書く必要はないことを知っていたのは全体の32・3%で、65・7%の人は「知らなかった」と回答するなど、こうした方針の社会的認知度はまだ低調なことが分かった。  この指針案は直接、学校教育を対象としたものではないが、その第3章の「字体・字形に関するQ&A」では、漢字の正誤の判断について紹介しており、「骨組みが過不足なく読み取れ、その文字であると判断できれば、誤りとはしない」とし、また「正しい字形をきっちりと教えるべきではないか」との設問には、「漢字には、一つだけの正しい形があるわけではない。そのことを踏まえた上で、より整った、読みやすい字を書こうとする気持ちは尊重されるべき」と回答。学校のテスト等との関係の設問では、「児童生徒が書いた漢字の評価については、指導した字形以外であっても、指導の場面や状況を踏まえつつ、柔軟に評価すること、とされている」と回答。  不特定多数を対象とする入学・採用試験等における字体・字形の扱いの設問に関しては、「独自の採点基準を公開しているのでなければ、常用漢字表の考えに基づいた評価が行われることが望まれる」と回答している。  文部科学省が平成22年11月に笠浩史・大臣政務官名で出した漢字の指導に関する通知でも柔軟な評価を求めており、今後、学校現場では漢字の書き取りなどで今回の指針に沿った指導が求められることになりそうだ。

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