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全私学新聞

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記事2016年12月3日 2393号 (1面) 
私学振興協議会を開催
来年度政府予算案編成前に 私学の課題、対応等で意見交換

鎌田薫・全私学連合代表(日本私立大学団体連合会長、早稲田大学総長)と河村建夫・元文部科学大臣(衆議院議員)が共同代表を務める「私学振興協議会」が11月25日、都内のホテル開かれた。同協議会は、幼稚園から大学までの私学団体代表と与党・自由民主党の文部科学部会長、文部科学(文部)大臣経験者の国会議員、文部科学(文教)部会長経験者の国会議員が同じテーブルに着いて今後の私学振興の在り方等を協議する場。この日は、年末の平成29年度政府予算案編成に向けて私学が抱える諸課題とその対応策等について意見交換した。


冒頭、全私学連合の鎌田代表は、私学振興への日頃の支援に感謝した上で、「私学を取り巻く環境が厳しさを増している。私学の共通する課題、幼稚園から大学までの各学校種に山積する固有の課題についてお願いをしてご意見を頂戴し、今後の発展につなげたい」とあいさつした。  一方、河村共同代表は「日本の政治・経済のあらゆる面で私学出身者が頑張っていることは現実をみれば御覧のとおり。今の内閣もしかり。そういう視点で考えた時、私学の在り方がこれでよいか、絶えず問われている。税制面や私学支援などあらゆる面で現実と理想の乖離をどう埋めるかが、われわれ議員に課された責任だと思っている。私立学校振興助成法の理想は補助率5割までだが、実際の補助率は1割に足るか足らないかで、そうした現状をどう考えるかは、日本の将来にとっての課題だ。鎌田共同代表にもいの一番に(その点の)指摘を受けている。税制でも国立大学と私立大学の違い、私立中学校等に対する新たな支援の問題も提起を受けている。日本は人材養成を旨として国をつくってきた。私学が頑張ることが日本の発展につながるという確信のもとに引き続き頑張りたい」と語った。  その後、亀岡偉民・文部科学部会長があいさつし、「日本が総活躍社会の中で何よりも大事な人材を育てて頂く私学の皆様にはこれからも子供たちのより良き学習環境のため、また子供たちが日本を支え、世界で活躍できる人材となっていけるようご尽力いただくために税制や予算の面で頑張りたい」と語った。  その後、鎌田共同代表が進行役となって全私学連合を構成する各私学団体代表から当面する課題や要望等が説明された。  初めに鎌田代表が税制改正関係要望の中から、特に、私立大学の受託研究収入問題を取り上げ、「私立大学に関しては研究成果の公表等の条件の下で受託研究収入が非課税とされているが、民間企業との契約では知的財産権の保護という観点から研究成果の公表を行うことは厳しい状況で、そのため民間企業からの受託研究の受け入れは、件数、金額ともに横ばいにとどまっている。一方、国立大学は一切の条件なく非課税となっている」と説明、国立大学と同等に非課税とするよう要請した。また、「大学の授業料をこれ以上上げることは難しい。私学助成も補助率が低下を続ける中で、受託研究収入などの事業収入を重視しなければいけない」と語り、要望の実現を訴えた。全私学に共通する課題としては、そのほか私立学校施設の耐震化への特段の配慮を要請した。  また、私立大学関係予算の要望に関して、私立大学等に対する私学助成の経常経費に対する補助割合が平成27年度でとうとう9・9%となり10%を割り込み、私学振興助法成立以前の水準にまで低下したこと、28年度はさらに低下を強く懸念していることを明らかにし、これを食い止めるためにも私立大学等経常費補助の満額実現を要望した。国立と私立では理系学部の授業料格差が年額100万円を超えており、見ようによっては、国立大学生は毎年100万円を超える給付型奨学金をもらっていることと変わらない、加えて国立大学生の29・6%が授業料の減免対象で、一方、私立大学生の授業料減免対象は1・8%に過ぎず、しかも補助率は2分の1のため、半分はほかの学生の払った授業料で埋め合わせている。  こうした著しい不公平を是正しないまま、その上に国私立平等に給付型奨学金が積み上げられると、かえって国私立間格差が拡大しないかと懸念しているなどと訴えた。




中小都市の短大考慮した補助を


続いて日本私立短期大学協会の関口修会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は、私立短期大学は地方の財政的にも厳しい中小都市に多く、短期大学進学者の家計収入も厳しい状況のため、そうした短期大学を考慮した補助と、地方創生につながる短期大学の研究機能について特段の配慮を要請した。  日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高等学校理事長・校長)は、経常費補助、耐震化、ICT環境整備等に加えて、特に私立中学校生徒等への就学支援金制度の創設要望について、公立中高一貫教育校が授業料無償の中で入試を行うなど私立中高一貫校の違いがなくなる中で、また教育費への支援が専修学校やフリースクール等にも拡大する中で私立中学生への支援が欠落していることなどから要望に至ったこと、文部科学省から概算要求が(12億8300万円)出されたものの、財務省の壁が厚いと仄聞していることなどを説明して、私立中学校等就学支援金の実現を要望した。  日本私立小学校連合会の小泉清裕会長(昭和女子大学附属昭和小学校長)も経済的理由により小学校を退学せざるを得ない児童が増えていることを明らかにして、私立学校就学支援金の創設を要望。また運営の基盤になる経常費補助金の充実を訴えた。また、私立小学校が100年以上、継承してきた宗教や建学の精神による教育を「道徳」としてほしいと特段の配慮を要請した。さらに私立小学校で長い時間をかけて培ってきた外国語教育を公立学校にも広げていくチャンスをいただきたいと語った。  全日本私立幼稚園連合会の田中雅道副会長(光明幼稚園理事長・園長)は、「都市部と非都市部において人口の差もそうだが、非都市部では学校運営に関して非常に大きな困難性を感じている、そこに対する新たな仕組みの検討を始めてほしい。また体力の弱い私立幼稚園は単年度(予算内)では耐震化や建物更新は難しい。数年にわたって部分的に改築等を進めれば、仮設園舎もいらずもっと効率的に園舎のリニューアルができる。また幼児教育振興法案をこれからも温かく見守ってほしい」と語った。  最後に日本私立大学協会の赫彰郎副会長(日本医科大学理事長)が、改めて経常費補助の拡充、特に特別補助への配慮、私立大学の受託研究の非課税措置の拡充等の実現を要請した。




私立中学等支援金は党の公約


私学の窮状もっとアピールを


 


こうした私学団体代表からの要望・要請に国会議員側からは塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)(途中から遠藤利明議員が担当)を進行役に、幅広い観点からさまざまな意見が出された。  初めに、渡海紀三朗・元文部科学大臣(衆議院議員)が、「私立中学校等の就学支援金について文部科学大臣も絶対に引かない姿勢で臨むと言っている。党の公約に書き込んだのでこれからも頑張っていきたい。給付型奨学金については国立大学自宅、下宿、私立大学自宅、下宿とで差をつける。問題は財源、政府全体で財源の手当てをと要請していきたい」と語った。  馳浩・前文部科学大臣は(衆議院議員)は、地方の短期大学については応援させていただきたい。今後の経営戦略として専門学校と手を組むことも考えていいと思う。私学なればこその教育力の発揮について研究を深めて頂きたい」と語り、またオリンピック、パラリンピックでのボランティア育成や、文化プログラムを実演するため大学の体育館や講堂などの提供を要請。さらに高等教育機関がスポーツを通しての地域創生の核になることへの期待感を表明した。  中曽根弘文・元文部大臣(参議院議員)は、「短期大学の役割は大きい。短大での人材養成も保育士、幼稚園教諭、看護師など非常に重要になっている。われわれもしっかり応援していきたい。幼児教育振興法については一日も早くできるよう努力していく」と語り、また冨岡勉・元文部科学部会長(衆議院議員)は、「改めて私立学校の持つ問題点を認識した。文教関係以外の議員の先生方は現状(私立大学等経常費補助の補助割合)を知らない先生方が半分以上いると思う。決起集会に学長を全員集めて窮状をアピールするといった周知も重要だと思う」と語った。  遠藤利明・元文部科学部会長(衆議院議員)は「税制(受託研究収入の非課税)では国立大は条件なし、私立大は条件ありではイコールフッティングではない。この点は頑張っていきたい。耐震化にもしっかり取り組んでいきたい」とし、また「最近、地方の私立大学で交付金が出て授業料が安くなる公立大学化の方策を模索している学校が結構多い。しかし逆に言えば、私立が公立になれば国の負担は増える。こうした問題についても意識を改める必要がある」と語った。   亀岡・文部科学部会長は税制改正にしっかり体制を組んで取り組んでいきたいと改めて決意を表明した。  最後に、河村・共同代表はまとめとして、「私学(教育)に対する公財政支出が少ない問題は国としても考えなくてはいけない課題だとの思いを新たにした。特に、新たな問題としては、私立中学生等に対する公的支援の問題について財政当局とも真剣にやり合わなくてはいけないと考えている。幼児教育振興法案も大詰めの段階に来ている。幼児教育の無償化に向けての大きな一歩を踏み出したい。地方創生の、短大を中心とした話では、大学・短大への支援は地方創生の視点からも重要な課題だという位置付けになってきつつある。地域に根差した高等教育機関をどうするかということも一緒になって推進の旗振りをしていきたい。課題は山積しているが、私学の皆さんとわれわれが一体となって課題に取り組んでいきたい」と語り、協議会を締めくくった。  協議会にはこのほか、大島理森・元文部大臣(衆議院議長)、下村博文・元文部科学大臣(衆議院議員)、木原稔・前文部科学部会長等が出席した。

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